「女性側の気持ちをどれだけ想像できるかが肝」ヒキタさん! ご懐妊ですよ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
女性側の気持ちをどれだけ想像できるかが肝
歳の差夫婦が数年間妊活に取り組む様子が描かれている。
松重豊も北川景子も好きだし、題材も観たかった作品。
夫ひきたさんと、妻さちが、共働きで最初は同居するパートナーのようなあっさりした暮らし方をしているが、子供の顔を見てみたいと思ったところから、チームとして動き出し、悲しい時も感情を吐露し支え合える夫婦として、かけがえのない絆を積み上げていく。親になる以前に夫婦として素晴らしい。
子供を持つ事はゴールではないし、産まれるまでも産まれてからも様々ありそうな事が予見される夫婦だが、きっと乗り越えていかれると思う。
原作も男性が描いているのだから全て男性目線で描かれているのは当然なのだが、元々口数少なく、限界まで抱え込んでから一気に感情を出すタイプのさちの気持ちを、観た人がどれだけ想像できるかが、この題材をどれだけ理解したかに繋がると思う。男性は職場で妊活について愚痴ったりできても、女性はいざ妊娠して安定期に入るまで、公にしない人が殆ど。それでも毎月毎月体調を管理し、妊娠に備えお酒も控え食事に気をつけ葉酸サプリを取り、体温を測り、月経リズム排卵リズムを把握し、生理と向き合い、モチベーションを維持しなければならない。通勤や仕事や家事もし、オンの時は平静を保ちながら。
それでも毎月毎月リセットされて、努力が実らない。
真剣に取り組むしっかり者タイプほどドツボにハマるのを周りで何件も見てきているから、さちはもろそのタイプに見受けられる。
パートナーが精神的にも含めて協力的でなきゃ、辛い事ばかり。ひきた夫婦の場合、それが数年。悲しい別れもしつつ。
世間一般の妊活と無縁の人の代表の声として、伊東四郎や濱田岳の役があり、彼らが、身近の人が取り組む姿を目前にする事により、見方が変わってくる様子も描かれていてよかった。
四季のある日本だからこそ、桜満開の時期が何度か過ぎてシーンごとの夫婦の心境の変化が際立つ。
北川景子のキレる演技が結構好き。
普段理解のある妻で、時々キレるから、ひきたさんもさちにはめっぽう弱いのだろう。
人工授精体外受精に賛否あるのはよくわかるが、少なくとも、それに踏み切ろうとする人々の心模様を理解はできる世の中になってほしいなと思う。