「互いに相手を慮っていることが伝わる佳作」ヒキタさん! ご懐妊ですよ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
互いに相手を慮っていることが伝わる佳作
50歳手前の作家ヒキタクニオ(松重豊)は、ひと回り以上も若い妻サチ(北川景子)とふたり暮らし。
子供など欲しくないと思っていたふたりだったが、ひょんなことから、やはり子供を作ろうと決断。
妻の基礎体温に基づいて、1年間タイミング法での妊活をしたがダメ。
産婦人科で診断を受けると、クニオの精子の運動率が20%という絶望的な数字がでてしまう・・・
といったところから始まる物語は、原作者の実体験に基づいている。
この手の実録映画は、まあ、いっちゃなんだが、映画としての出来栄えはそこそこのところで、可もなく不可もなしというのが通り相場。
この映画も・・・と侮っていると、意外にも面白かった!
そりゃまぁ、いくつかの難点はあるものの、基本的な部分が真面目なので、ちょっとしたくすぐりも、夫婦ふたりの生真面目さに赦しちゃう、って感じ。
ヒキタさんは自分の睾丸を「駄目金玉」と称し、担当編集者(濱田岳)が次から次へと相手を妊娠させるのを苦々しく思っているけれども、やれることはやる!とばかりに隊長の維持に努め、果ては民間療法でもなんでもやる。
とにかく、原因が男性側にある場合は(この場合は精子の運動率だが)、どうも薬事治療などはないようで、ここいらあたりは本当にもどかしい。
原因が自分にあるにもかかわらず、妻のサチがベッドに寝かされ、施術を受けるのをみて歯がゆく苦悩するあたりの描写が秀逸。
夫も妻も互いに相手のことを慮っていることが十二分に伝わる佳作といえます。
ただし、気になったのはヒキタさんのモノローグが多用されている点で、松重豊のモノローグといえば、どうしても『孤独のグルメ』を思い出していしまうので、これはあまりよくない演出だと思うのですが・・・