「大戦勃発の報に学生達が喜んでいた時代…。」トールキン 旅のはじまり わいちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
大戦勃発の報に学生達が喜んでいた時代…。
とても良い作品でした。
イギリスの田園地帯で、伸び伸びと幸せに暮らしていた少年が、父の死と、続く母の死によって辛い人生を歩むことを余儀なくされます。
過酷な彼の人生を支えたのは、母が語る物語が掻き立てて呉れた豊かな想像力と、紡がれていく数々の言葉の持つ魅力とその奥深さです。
やがて彼は生涯の恋をして、そうして生涯の友人達とも出会います。
厳しい階級社会の中で、彼の頭抜けた才能とその努力とによって、人に出会い、人に認められながら、彼の人生は少しづつ豊かになっていきます。
そうして訪れるグレート・ウォー。全てを飲み込み破壊し、虚無と死と悲惨を持たらすグレート・ウォー。
辛い経験と辛い悲しみを抱えながら、彼は又一歩を歩み始めます。
そうして愛する人と愛する家族を抱き締めながら、彼は過ぎ去った日々と空想とに思いを馳せて、ノートに万年筆を走らせます…名作「ホビット」誕生の瞬間。
主演のニコラス・ホルトは、それ程好きな俳優でもなかったのですが、彼の癖の無い素直な演技に好感が持てました。D.J.サリンジャーの伝記映画の主演も演じている様なので、其方も観てみたくなりました。
他の方のレビューにも有りますが、当時のイギリスの情景描写がとても素晴らしい!
戦場の過酷な描写も物凄かったです。フォックスの手堅い丁寧な作品作りに敬意を表します。
公開初日にも拘わらず、客席はまばら。こういう人が見落としている隠れた佳作を見つけた時に、映画好きの喜びと醍醐味をとても感じますよネ。