「ヘルヘイム! T.C.B.S の固い絆は、トールキンのファンタジー物語の礎となった」トールキン 旅のはじまり NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘルヘイム! T.C.B.S の固い絆は、トールキンのファンタジー物語の礎となった
「フェローシッブ」 トールキンの物語の基盤にある大切な言葉。
孤児になり孤独な彼を、作曲家の卵クリストファー、画家志望のロバート、詩を愛するジェフリー達との些細なケンカをきっかけに「僕らの芸術の力で世界を変える」秘密結社〈ティー・クラブ・バロヴィアン・ソサイエティ〉を結成する辺りから、青春物語は徐々に熱を帯びて行く。
リリー・コリンズ演じるエディ・ブラットとのハラハラする恋も美しく描かれる。劇場裏でのシーンは忘れられない。
又、トールキンが一度は訳あって別れたエディを忘れられず、ずっと出せずにいた手紙を震える手でポストに投函するシーンとその後の劇的な再会と抱擁のシーンは感動的である。
第一次世界大戦の悲惨な戦場の姿とトールキンの友人達との青春時代が交互に描かれるが、この場面対比の見せ方が素晴らしい。
厳格な父親にヘルヘイムの気概で、友人との約束を守らせて欲しいと毅然とした眼差しで訴えるロバートの姿や、戦死した友ジェフリーの想いを遺すためにトールキンが母親にある説得をするシーンには涙する。
トールキンが紡ぎ出した、ファンタジー物語が産まれ出た背景を丁寧に描き出した秀作。彼は独りぼっちで数々の壮大なファンタジーを創作したのではなかった。彼の周囲には、3人のかけがえのない友人(学生時代の友は一生の友になると思う)、愛しいエディ、そしてラスト近くになると彼とエディとの子供たちが元気そうに飛び回っており、彼の創作の源が何であったのかが良く分かる。
デレク・ジャコビ〈言語学者ライト教授を厳格に且つ言語愛に満ち溢れた人物として好演〉は別格として、若き英国男優達が生き生きと躍動し、リリー・コリンズの美しさ、当時の英国意匠の素晴らしさも堪能できる英国映画好きには堪らない作品でもある。