「著名作者の若き日の、表面を撫でた感じの出来」トールキン 旅のはじまり りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
著名作者の若き日の、表面を撫でた感じの出来
第一次世界大戦下のフランスのソンムの戦い。
少尉として塹壕で戦っているロナルド・トールキン(ニコラス・ホルト)は、親友ジェフリーの安否を気にしている。
ロナルドには、他にロバート・ギルソン、クリストファー・ワイズマンというかけがえのない友人がいた。
そして、もうひとり、ロナルドが引き取られた先で、一家の女夫人のコンパニオンを務めるエディス・ブラット(リリー・コリンズ)という女性もいた・・・
というところから始まる映画で、『ホビット』『指輪物語』の作者のハイドストーリーもの。
製作はFOXサーチライトで、『くまのプーさん』の作者であるA・A・ミルンとその息子クリストファーのハイドストーリーを描いた『グッバイ・クリストファー・ロビン』と同じ系列。
真摯な製作で知られるFOXサーチライトなので、映画の作りは手堅く、押しつけ感もなく、まずまずの仕上がり。
特に、時代背景を丹念に描いた美術と撮影は見事。
だが、個人的には作家トールキンに興味も薄く、ニコラス・ホルトにも関心が薄いので、映画的な面白さはよくわからない。
20世紀前半のイギリス社会とだと、もっと階層意識は強かったと思われるが、上流階級の3人がすぐにロナルドを仲間に受け容れるあたり、彼の才能が凄かったのかもしれないが、意外と葛藤がないような感じもする。
『指輪物語』の原点がワーグナーの『ニーベルンゲンの指輪』にあったり、「旅の仲間」の原点が親友たちとの関係にあったりというあたりはそこそこ面白いが、個人的には、なんとなく表面を撫でただけの、作家トールキンの若き日の物語、という感じでした。