劇場公開日 2019年10月11日

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「世代…なのかもな。」空の青さを知る人よ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5世代…なのかもな。

2019年10月13日
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(後半、少しだけネタバレ感あります。)

全体を通して、自虐や葛藤、ベタなギャグからシニカルなジョーク、閉塞感からの疾走感やカタルシスをキッチリ描き、最後はしっかりポジティブ。
良くも悪くも現代の青春アニメーションとしてはツボを押さえた優等生的な秀作だと思う。

特に「あの花」や「ここさけ」を堪能した世代の方々には、ちょうど刺さるんだろう、と。

そういう意味ではその世代を一回り以上経過してしまった私には多少感慨は薄め、というか、視点が異なるというか…。
その分、若干の★を減らした感じ。

(以下、決して作品を否定するつもりはありませんが、褒めたり皮肉ったりしてます)

作品のテーマは、どちらかというと「これから進路を決めていく」主人公の高校生あおいの世代よりは「進み始めた人生を振り返ってみたくなる」その姉あかねと高校時代の仲間慎之介たちの世代(いわゆるアラサー)に寄せてある。

人生に戸惑いを感じやさぐれた今の自分が、夢に溢れていた過去の自分に「お前、頑張ってるよ!腐るなよ!」とエールを贈られてまた新たな1歩を踏み出す。

それはそれで物語としては素晴らしい。

ただね、ただね、ただね。
これは野暮だと承知で言うが、私にとっては「夢に満ち溢れた高校時代」こそ、幻想以外のナニモノでもない。ただ何となく、周りの友人や家族や世の中の平均に合わせて惰性で過ごしていた自分が私の中の『高校生観』だ。むしろ、ひとまず社会人として自分に居場所があり、何かに向かって進んでいたあかねや慎之介の世代だった頃の方がよっぽど充実していたじゃないかとも思ってみたりもする。

さらに言うと、その社会人としての充実感もまた「40代も半ばを過ぎた今思えばあの頃は…」なのだ。
誰だってその時点では「何が自分らしいか」と悩みもがいている。

そういう意味でこの作品は、「当事者」それぞれの不安や葛藤を描いているという点でそれぞれの見どころがあるとは思うし、登場する当事者たちの世代を外れた私にはもう一つ刺さらなかったということなのかも知れない。
でもクライマックス前、シンノと慎之介が対峙した時、「おい、慎之介!言われてるだけかよ!お前、もっと言うことあるだろ!」と思ってしまったことを考えると私も作品にはのめり込んでたのかも。(どっちなんだ)

年寄りが理屈っぽくケチを付けたみたいに書いてしまったが、背景は美しいしキャラクターは魅力的で全員善人。声優陣も若手の人気俳優達がちゃんと頑張ってる。特に吉沢亮の演技は秀逸。
誰かしら自分を投影できるキャラクターが見つかるだろうし、これみよがしに涙を誘うこともなく、前向きに終わってくれるのも清々しい。

いろんなアクシデントの「取ってつけた感」も含めて青春映画としてはお手本の様な作品なので、私の様に斜に構えることなく、是非みんなで観て、それぞれの感想を言い合うのも楽しいだろうとは思う。

私個人としては、本日朝イチ上映回を鑑賞し、映画館を出て台風一過の空を見上げ、
「空、あっお!」
とつぶやいたのもまたオツな感じでした。

キレンジャー