CLIMAX クライマックスのレビュー・感想・評価
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今回のノエ作品は踊る!踊る!中毒性の高い悪夢へようこそ。
鬼才ギャスパー・ノエの映画ほど他人の「面白い」があてにならないものはない。ある者は感動して涙を流し、またある者は嫌悪のあまり嘔吐感すらあらわにする。その千差万別の反応こそノエ作品の醍醐味。もしくは私たちは彼の映画を通じて自分自身を見つめているのかも。
そんな彼の新作は今回もぶっ飛んでいた。冒頭から挑発的で、実験的で、ニヤニヤが止まらなくなる。だがそこを抜けると、雪に閉ざされたホールで夜な夜なダンス・パーティーが始まり、集いし若者たちが超長回しでとにかく素晴らしい身のこなしで延々と舞う。この時点でテンションはMAXなのだが、そこから事態はツイストし、狂喜乱舞し、地獄のような悪夢へ。ワン・アイディアを瞬発的に発展させたような作りでありながら、過去のノエ作品のタブーが散りばめられた集大成のようにも思える。強烈なのに何度も観たくなる、中毒性の高い一作かと。ただしR18+。くれぐれも油断は禁物だ。
何度観てもアクが強い
ギャスパーノエによる、ひたすらバッドトリップしていく様を映したトランスムービー。
お正月休みの夜中、酒飲んで観るにはピッタリかなって久しぶりに観てみました。
廃校に集まったダンサー達が、公演リハの打ち上げで口にしたLSD入りのサングリアで始まる狂乱の一夜。
ダンサー達のインタビューで始まるのですが、これが結構かったるいなぁって思ってたらいきなり始まるすごいダンス。
これが本当圧巻で、観ながらすげーなこれ…ってなります。
バックではダフトパンクやエイフェックスツインなどのテクノ・エレクトロが溢れる中、その踊る映像は本当にクセが強くどうしても見入ってしまうんですよ。
ここでの緩急がうまく、後で思えばこの時点でマジックにかけられていたようでした。
また、驚くべきはセルヴァ役のソフィアブテラ以外全員、演技未経験のダンサー達で構成されている事です。
しかしそれらを何の引っかかりも無く作品に引き込むのは、ギャスパーの手腕でしょう。
気味が悪いくらい舐め回すカメラと、長回しのような構成。
止まる事がなく段々と速度を増すトランス状態と、部屋毎の興奮の事象。
子供のティトの行動が最後のトリガーとなり、廃校内はサバトのような世界へ。
カメラが逆さになった辺りがパーティーのピークで、ここでの演出もうまかったですね。
翌朝、全てが終わり静まり返った廃校。そこで流れるストーンズの「アンジー」がまた切ない。
そして冒頭で出てきた「目薬」で幕を閉じます。
いや、何度観てもこれはアクが強い。特かくすごい作品ですね。
鮮烈に、堕ちる…
ギャスパー・ノエ監督作品ですから。もぅ観る前から深呼吸して気合を入れ外に音が漏れないようにしっかり窓を締め、お酒を飲みながら臨みました。お酒は飲みながらじゃないと耐えれる自信がなかったのです。
前半~中盤はまだまだまだ余裕がありました。ダンサーたちの見事なパフォーマンスと妙に耳に残るミュージックとの見事な融合、そして赤を主体とした原色で描かれる世界、お酒の酔いが回ったダンサーたちのおバカな会話とひたすら繰り返し見せられます。黒人男性のダンサー子供っぽい(下品ですが)エロトークもなかなかニヤッとさせられました。
が、束の間…。いきなり演者とスタッフなどのエンドロール!?が流れます。はい、わかりましたよ…。エンドロールでなく、ここからが狂気の沙汰の始まりなんですね。「お前らここから始まるが耐えれるのか!?自信が無ければここで終われよ!」と言われている気分でした。
そして中盤~後半に突入。もうね、全員がイカレているんですよ。ドラックが回った人間の永遠と意味不明な行動や狂気の沙汰が流され続けるのです。途中いったい何を観せられているのだろうと正直思いました。そして嘔吐感ですら感じました。まさに地獄絵図とはこのことを言うのだと理解できました。
その中でも監督の鬼才っぷりといいますか監督としての技術も見え隠れしました。全編を通し長まわし撮影(演者は大変だろうな)を多用し、人がすれ違いざまにカメラで追う人物を変えたり、しまいには映像を上下さかさま(字幕もさかさま)にするカメラワークを使います。これには嫌悪感が2倍にも3倍にも思えてしまう効果がありました。
それだけでないのですよね。嫌悪スパイスとしては十分すぎるほどの視覚と聴覚の刺激物を投入してきます。前半ではあれだけ見事な色彩感と思っていた色が原色過ぎて気持ち悪く感じられ、鳴り響くパーティーの音楽と共に遠くから聞こえ続ける悲鳴がこれでもかというくらい耳を刺激します。(思わずボリューム下げました…)
がんばって疲弊して観終わった後に何が残るのでしょう。何か心の中にモヤモヤとした感情と共に、ただただ人間が堕ちていく姿にはドラックの怖さは十分に知ることが出来ました。が、ちょっと刺激強すぎて放心状態でした。
悪感情は窓外の雪のように…
あっちでワーワーやってる間にこっちはゲロゲロやってる、みたいな同時にいくつものできごとが巻き起こるさまを、あと一歩でも踏み込んだらまったくのナンセンスに転じてしまいそうなギリギリのところで「映画」に踏みとどまって記述している。
その塩梅といったら本当に絶妙で、というかむしろ監督本人が意図的にそうしている節がある。リズムに合わせてスタッフクレジットが明滅したり、途中で意味ありげな文字列が画面を覆い尽くしたりするところなんかはまるっきり軽佻浮薄なミュージックビデオのようだ。カメラワークもムチャクチャで、終盤はもはや何を撮っているのかさえ判然としない箇所が多々ある。
しかし本作はやっぱり映画だ。なぜかって動きの面白さがあるからだ。LSD入りサングリアで徐々に狂っていくダンサーたちには、その狂乱の行く末を見届けたくなってしまうだけの動きの面白さがある。単に派手なものを寄せ集めただけのミュージックビデオとは異なり、個々の行為の確かな系列がある。そしてそれらに支えられた「物語」がある。
これだけ滅茶苦茶やってもちゃんと映画は成立する、いや、それどころか史上最高の傑作ができあがるのだ、というギャスパー・ノエの自信と才気が映像の節々にまで迸った怪作だと思う。
序盤のドキュメンタリータッチの意気込み披露シーンとか中盤のスタッフクレジットとか上下反転字幕とか、正直スタイリッシュを狙いすぎなんじゃないのと思うところはあったものの、映画としてのベースがしっかりしているので技巧が一人歩きしている感じはしなかった。
『ルクス・エテルナ』も同様だが、この監督は負の感情を少しずつ蓄積させるのがとにかくうまい。ジャンプスケアのようにワッとキレるのでもなく、ニヒリズムに酔って沈黙を貫くのでもない。それらは画面内に徐々に降り積もり、気づいた時には全身が埋もれて抜け出せなくなっている。ある意味で足し算の美学とでもいうべき妙技だ。
作品をコントロールしようとするあまり安易な引き算に走る作品というのはけっこうある。そりゃまあ作品内に系列が増えれば増えるほどコントロールが難しくなるのは当たり前のことだろう。ただ、やっぱりそういう薄口の映画ばかりでも面白くない。かといってムチャクチャすぎる物語に置いてけぼりを食らうのも不快だ。そのあたり本作はすごい。死ぬほどムチャクチャやってるのにそれを完全にコントロールできている。
あんまり他に類を見ない作風なのでかなり楽しめた。他の作品ももっと見てみたい。
サングリア…
自分は昔、サングリアに嫌な思い出があって2度と飲まないと決めてます。この映画の場にいたら確実に容疑をかけられるだろうな、と思いながら視聴しました。
ダンスと音楽はなかなかの迫力でした。
最後の方は、暗さと画面の反転で何が起こってるかよくわかりませんでした。
サングリアを飲んでも飲まなくても地獄でしたね。
玄人向けすぎるバッドトリップムービー
山荘でリハーサルを行うダンサーたち。しかし、打ち上げに用意された飲み物にLSDが混入していて…。
序盤のダンスシーンに引き込まれたが飲み物を飲んでからは狂気の映像が続くバッドトリップムービー。独特な演出によって理解を越えた映像になっている玄人向けの作品でした。
悪夢的な90分
バッドエンディングから始まるこの作品。
本当に延々と生理的な嫌悪を感じさせてくれる。
もうずっと嫌。
ホラーとかスリラーとかの嫌な感じではなく、ただただ気分が悪くなる様なバッドトリップを見せ続けられる。
得られる教訓は、
「ドラッグ、ダメ、絶対。」
実話を元にした作品というのも含めて、衝撃的であったが、無理だ、好きにはなれん。
でも、序盤のダンスシーンは圧巻だったので、±0にしておきます。
「で?」ってなる
多分、ギャスパー・ノエ作品は今回が初鑑賞。
観た感想としては、ギャスパー・ノエは映画を作るのが上手いなーと。
EDから始まるというトリッキーな出だしに面食らうけど、キャストへのインタビューや約5分のダンスシーン、そして打ち上げの前半部分で、キャストそれぞれの性格や関係性、この山荘で過ごした時間などを全部説明しているし、かつそれが後半への伏線にもなってる。
対して後半部分は、前半で丁寧に積み上げたものを、グズグズと壊していくだけの展開が続くだけなので正直飽きるし、観終わったあと「で?」ってなる。
多分ノエ監督は、人間の本性とか、獣性とかを見せたかったんだと思うし、だからキャストの殆どが役者じゃなくダンサーで、その試み自体は成功してると思うけど、物語的な“その先”がない感じ。
デビルマン冒頭の再現
個人評価:3.8
サイコーにぶっ飛んだトリップ映画。
冒頭のダンスシーンに魅せられて、この世界に迷い込み出られない。
まるでデビルマン1巻の人間が理性を無くし、踊り狂った時に悪魔が訪れる。そんな悪魔的な映画だ。
ラース・ファン・トリアーの様な、ある種の人間の闇や泥を掘り下げる様な、歪で孤高な作り手だと感じる。
アシッドトリップ警鐘ムービー?
キャストのダンサー達のポテンシャルは高い。
バッドトリップパニックの事象を外から撮っただけの低予算再現フィルム。
キメてる側に見えているものや視点はほぼ描かれていないので
どんなイレギュラーが起きているのか伝わらず残念。
ミニマルテクノなサウンドとのシンクロ感はよかった。
同じ事案をもっと巧く撮れる監督は世界中にゴロゴロいるだろう。
エネルギーに満ち満ちた怪作
と言うと聞こえはいい。
が、これを映画としてどう捉えるかで評価は分かれるだろう。見終わっての印象はミュージックビデオに近い。
あるいは、『デビルマン』のサバト。これをほぼそのまま実写化した印象か。
ストーリーは至ってシンプル。
舞踊団に応募し、廃屋に集まったダンサー達。リハーサルを終え、始まるパーティ。
興奮しトランス状態になった彼らは、知らず知らずのうちにLSD入りのサングリアを飲まされていて…というもの。
だが、これが冒頭からめちゃくちゃ面白い!
アバンの個性的な映像から全て持っていかれる。そこから始まるダンスシーンの美しさ。
超絶パフォーマンスを長回しでじっくり見せくれる。これだけでも他には変えがたい魅力があった。
ダフトパンクの音楽とハイクオリティなダンス、独創的なカメラワーク。これだけで映像体験として十二分に楽しむ事ができた。
後半のトリップシーンも非常に興味深く、挑戦的な映像の連続。映像と字幕を文字通り上下反転したりと、酔いそうな映像が続く。
しかし、見ているこっちもトリップするような映像かと言われれば、それほどのものでもなかった。R-18指定こそあるもの、バイオレンス・エロ表現も予想していたよりはマイルド。似たような描写で言えば「サスペリア」の方が衝撃的だ。
とはいえ、こういった作品に慣れていない人にとっては、人間が徐々にコワれていく様子にはトラウマ級のショックを受けるかもしれない。人間の理性が薬物によって剥ぎ取られ。本能に従って壊れ、次第に獣と化していく。
前半と後半とで評価がまるで違う結果となった。映像体験として見れば★4.5。映画として見れば★2.5と言ったところ。
刺さるか否かは見なければ分からない。見ないで後悔するくらいなら、見て後悔した方がいいだろう。
冒頭のダンスシーンは圧巻
冒頭のダンスシーンは圧巻で、そこだけでも何度か見たくなる。
途中でふと何を見させられてるんだという気にもなったが、圧倒的なエネルギーが感じられる作品。
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