ガーンジー島の読書会の秘密のレビュー・感想・評価
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ジンが飲みたくなる映画
戦時中の苦し紛れの言い訳から始まったある読書会。
戦争が終わっても色々と暗い影を残す島に取材目的でやって来た作家と読書会のメンバーとの交流で秘密=戦争の爪痕を明らかにするという、ある意味反戦映画。一冊の古本から文通が始まり、人生を大きく変えるという、現代社会では到底考えられない、素敵な物語です。
まず、登場人物の持ち味が素晴らしく、誰一人欠けても物語が成立しないほど。そしてそのキャスティングの見事さ、非の打ち所がありません。私が一番好きだったのはジンを作って売っているアイソラ。鋭い感性の持ち主で?確かドーシーとジュリエットが初めて顔を合わせたときに『前世で一緒だった?』と言っていた。こんな友達が欲しい(笑)
ジンはシュニパー・ベリーで香り付けしますが、幼いキットがジュリエットの髪に小枝を挿すシーン…多分あれはジュニパーだったと思う。その髪の小枝をドーシーはそっと外して本に挟み、押し花にしておくのですが…後にジュリエットはその小枝を見つけ、その時、自分が本当に好きなのはドーシーだと気付く。だってそうよ、マークはそんな繊細さは持ち合わせてないし、それにどんな本を読むのだろう?いや、本なんか読まないかも。スクリーンからジンの香りが漂ってきそう…いや、香りを確かめたくて無性にジンが飲みたくなりました。私の2019年ベスト10に入るであろう作品です。
あなたは最後のパンをくれる人
読書会をめぐる謎ときというよりは、
主人公ジュリエットの人生の羅針盤を
見つける物語ですね。
戦時におけるやるせない出来事や
国境を越えた人間性の理解。
人生を賭けた自分の信念を貫きかたが
胸をうちました。
幼い少女を守るために
読書会メンバーがとる行動が
人としての優しさと誇りに溢れ、
目に宿る気品が印象的で
貧しい暮らしや服装の彼らでしたが
少しも気になりませんでした。
社交界での豪華絢爛な生活や
恋人がいても、
心の拠り所を探し続けたジュリエット。
自分の信念を見つけた彼女に、
寄り添った相棒シドニーの
言葉に背中を押されたかな。
「花嫁の引渡し役は僕がやるよ。
その機会があったらね。」
美しい海岸と草原で過ごす日々や、
エリザベスとの約束を守るために
キットの父親を務めるドージーに
心を牽かれたジュリエットの決心に
心暖まりました。
最後のパンを与える彼なら
あなたをきっと幸せにしてくれる。
エリザベスもきっと応援すると
思う。
やすらぎます。
おすすめ。
力
当たり前すぎることなのですが、もしも文字が発明されなかったら私が過去や歴史を知ることはほぼ無理な事ですし、その当時を生きていた一人一人の生き方や考え方を知ることもできないと思います。物語はエリザベスの不在をミステリー仕立てにしていましたが、ナチス占領下の辛い真実をエリザベスに関わりのあった当事者だけで公にする事は難しいでしょう。それは、戦争、紛争、震災、事故などのあらゆる悲惨な事、酷い事に言えるのではないでしょうか。だからこそ、書き手の役割は辛すぎて当事者が出来ないことを、聞き、伝え、残すこと。
時空を超えて、言葉の持つ力や本の持つ力の偉大さを改めて考えさせられました。
歴史とは極めて個人的なものである
「英国総督 最後の家」にしても「スターリンの葬送狂騒曲」にしても、そして本作「ガーンジー島の読書会の秘密」にしても、ここ数年のイギリス映画は、重く暗い歴史的事象とコメディとを融合させた作品が目を見張るなと思う。もちろん歴史には様々な考えや意見があるので、必ずしもコメディにして喜ばれるわけではないであろうし、映画にして受け入れられるわけでもないかもしれないけれど、一方で、コメディにするからこそ伝わるということも往々にしてあるものだ。
この作品にしても、ロンドンの文筆家がガーンジー島を訪ね、そこからその土地の歴史を紐解き記事にする、という内容であることに違いはないが、その文筆家であるヒロインのジュリエットが最終的に書いたのは一人の女性を巡るロマンスである。歴史を総合的に捉えて語るのではなく、一人の女性の人生に引き寄せることで、イギリスの国の歴史が現代の日本に暮らす私にとって一気に身近なものに変わる。歴史と言うのは、社会や国のものとして語られることが多いが、そんなはずはない。その時代に生きた一人一人の人生についてのものであり、極めて個人的なものだと再認識する。
それにしても読書会の面々は、重々しく秘密を抱えているようでありながら、それぞれに実に口が軽いこと。ジュリエットが問い質せば誰しもが存外あっけなく口を割ってくれるので、秘密が暴かれていく高揚感のようなものは薄かったように思う。もう少しミステリー的な感じで国の歴史とエリザベスの歴史を紐解いて欲しかったというのは正直な感想。
エンディングは「なんだ結局ラブストーリーか・・・」と言われてしまいそうな気もするが、いやいやあくまで歴史というのは個人のものなんですよ、と言う意味で、私は悪くはないだろうと感じた。
彼女が本当に帰るベキ場所は…。
とても素敵な映画でした。
主演のリリー・ジェームズの美しさというのは、きっと見た目の美しさだけでは無くて、多分、彼女の内面から滲み出てくる意思の強さだとか、確固とした自分自身を持っているとか、しなやかさだとかウィットだとか、そういう目に見えない処からも来ているのかナ?とも感じました。
ガンジー島の景色が、とても美しくて素晴らしかったです。
只、あの時代に、権力とお金を持った若いアメリカ人に袖を振って、貧しい島の男を選ぶ女性が実際に居たのかどうかを考えると…まあ、良い夢を見させて貰ったのかナ?という感じがしなくも無いですネ…w
あと、ストーリー展開から言うと、エリザベスという女性は、主演のリリー・ジェームズ以上に魅力的な女性でなくてはいけなかった様な気もしたりして…ww
まあ、多少の突っ込み処は有りますが、それでも、リリー・ジェームズの魅力と島の美しい風景を堪能した素敵な時間を過ごさせて頂きました…。
特に秘密はないような
「戦時中にこんなことがありました」って語ってるだけの気がすんのね。
それだけだと、全くもたないから、主人公は大金持ちからプロポーズされて受けていて、でもガーンジー島の青年に心ひかれてってのを入れてくんの。でも、なんで島の青年にひかれたんだろうね。そこが良く解らなかった。
金持ちは教養がない感じなんだよね。たぶんパーティーシーンで『トンネルを抜けたらいきなりお祭り』って字幕があったんだけど、映画だと有名小説を引用しつつやってんだろね。それを大金持ちはサッパリ理解しないって描写があんの。まあ、だからってプロポーズを断るほどじゃないと思うんだけど。
お金持ちになった人が、慌てて教養っぽいものに手を出すことがあるけど、こういう風潮を感じてなのかなとか観てて思ったね。まあ、金持ちは才覚があるんだから、教養なんかなくても気にしなくていいじゃないかと思うんだけどね。
朗読者
ロンドン空襲は知っていたけど、イギリスでナチス・ドイツに占領されたところがあったとは知らなかった。イギリスは当時ガーンジー島のあたりの防御を放棄したらしい。
エリザベスはかなり直情的な人物で、最初のドイツ軍への抗議など短慮というほかなく、一方でその後のドイツ兵との親密さへの変転が唐突な感じがした(ロバート・キャパの写真に見られるように、フランスではドイツ人と関係があった女性たちには戦後残酷なまでの試練があったようだ)。総じて英雄的すぎて血が通っていない造形が気になった。
主人公の婚約者マークは初めから気の毒なほど後々うまくいかない感が漂っていた。なので、王道とは言え多幸感あふれるラストは気持ちよく、やはりハッピーエンドもいいもんだと…。
集客狙いだろうけど、何でもかんでもミステリーのレッテルを貼るのはやめた方がいい。
ザ・ブリッツの爪痕
この作品は、第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたイギリスの領土ガーンジー島でエリザベスという女性が活躍していた時と売り出し中の作家ジュリエットが、ある手紙が来たことによって、ガーンジー島で暮らすことになるジュリエットの時が交差する"Nonlinear narrative"形式をとっているが、一見複雑になりがちなこの形式において本作では違和感のないものとなっている。
映画の冒頭、時代は1941年、現代では当然一般の人たちが、その大切さが空気のような存在で、それがなくなれば大変なこととなってしまう表現の自由の一つである集会の自由が、当然の事としてドイツ軍によってガーンジー島の島民は、制限を加えられていた。そして豚や食料となるものは、ドイツ軍に徴集されていたが..........?
ある晩、そんな中、久しぶりのごちそうでいい気分になった村人達だったが、その帰り、ドイツ軍に見つかってしまう。しかしエリザベスの機転によってうまく切り抜けることができたのだが....! ここでおかしなことが、ひとつ、仲間の一人のイーブンが、ドイツ将校のブーツに吐いてしまうシーンがあるのだけれども普通ならそこでライフルや銃の柄の部分で殴られたりするのが習わしのように出てくるけれども、いたって平和的に解散する。いつものあの残虐なドイツ兵ではない.....何故?
"恋は、本屋さんに売っている"というキャッチコピーをご存じの方ならわかると思うが、カナダの出版社が出した"ハーレクイン・ロマンス"シリーズといういわば少女趣味的と言えばごへいがあるかもしれないが、甘い、甘い、ラブロマンスだけの小説が日本でも70年代後半から出版され、テレビでもCMなんかも流されていたと記憶しているが、それほど日本でも読者がいたという事か? 個人的には、いわば半分"ハーレクイン・ロマンス"小説になりかけていたものが、エリザベスの人間性あふれる弱いものをほおってはおけない、また愛する者に対しての決して許されることのない愛を貫く行動力などが、この映画をただのラブロマンスとしてだけ終わらせてはいない大切な要因かもしれない。それとイギリスの監督には失礼と思うが、とにかく主人公のジュリエットがガーンジー島に行くまでは面白いほどシナリオがサクッサクッと進んでいきあれよあれよと話しに入っていけたのも2人のアメリカ人脚本家によるところが大きいと思われる。
ジュリエットがガーンジー島についてからは、エリザベスの足跡をたどるようにシナリオが進行するので多少ペースダウンとなるのだけれども、その進行の遅さがかえってエリザベスの人間性に触れる機会が増え、感情移入のしやすい映画作りがされている。そして忘れてはいけないのが、ジュリエットに手紙を送り、島に来るきっかけを作った島に生きる素朴で友人思いで、しかもエリザベスと共通の友達のドイツ兵士の子供キットを何も言わずに預かる心優しいハンサムガイ、ドーシーの存在を忘れてはいけない。
ここでひとつ重要なアイテムを忘れることはできない。
TALES FROM SHAKESPEARE
BY CHARLES & MARY LAMB
Illustrated by ARTHUR RACKHAM
イギリスを代表するエッセイスト。その本が、なぜ彼が彼女に送ってもらうことを頼んだのか? それがわかると冷徹なものでも多少、胸が熱くなるものを感じずにはおれない。
When I was three, I was hardly me.
When I was four, I was not much more.
When I was five, I was just.......
Alive. Yes.........alive.
But now I am six, I'm as cl.....-Cle-ver(詰まりながら).......
clever as clever.
So, I think I'll be six now for.....
-Ever and ever.
Bravo! パチパチ
映画について特化しているサイト、RogerEbert.comによると「映画のアイデアは、もっと挑戦的にもっと挑発的に向上させることができたに違いないが、映画の主な狙いが、空想の世界に置いているところである。」130年前に創刊されたオーナーが中華系アメリカ人の新聞社、Los Angeles Timesの記事「保守的でしかもどこか懐かしいエンタティメント、しかも風光めいびな眺望が溢れるロマンチックなドラマ、そして私たちが関わっていくのに十分な謎を含んだひたむきな魅力。」約160年前に創刊された新聞紙、London Evening Standardによると「十二分にたっぷりと撮影された、エレガントで魅力的な映画の大部分は、時代の鮮やかさを描写するためにそのタイトルのやや感情的ともいえる陽気さが邪魔されることを防いでいる...」
批評家からも視聴者からも高い支持を受けている本作。ラブロマンスが好みの方は、とにかく嫌みの微塵も感じさせない映画作りがされているので一見の価値があると個人的には思っている。
この映画は不思議な映画で、いつもの簡単に人を痛めつける酷いドイツ兵士ではなく、戦争中としては、至極あたりまえな行動をとっているもので、あからさまに残虐と思える内容は、あくまでも手紙での伝文だけに留まっていて、ゴアな表現の映像はほとんど出てこないので、ある意味、安心して観ることのできる映画と言える。
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