「この原題は、多分受け入れられないし、変更されるのか?」囚われた国家 Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
この原題は、多分受け入れられないし、変更されるのか?
映画の冒頭、レジストレイターと呼ばれるエイリアンの侵略が始まった10年前、北に逃げようとする両親が運転するステーションワゴンが、警察の非常線を突破したまでは良かったが、主人公のラフェと兄のガブリエルの目の前で、砂鉄が磁石にくっ付くような、またウニのトゲトゲのようなと言えばいいのか、宇宙服?が変形するステレオタイプ的恐ろしさを見せるエイリアンによって両親は黒い煙となって一瞬にして消えてしまう。
amazon.comのレビューの中で、この映画を称して、「アルジェの戦い(1966)」や「セクター5[第5地区](2012)」からインスパイアーしていると述べている方がおられたが、その意見に対してあながち無視が出来ないと思える部分もある。
Natural resource production has increased tenfold.
Employment is at record levels.
Crime at an all-time low.
And we have the Legislators to thank
for this American renaissance !
エイリアンと対峙する独立派、フェニックス。その独立派の過激な活動を阻止しようとするエイリアンとの共存派、コマンダーとして警官を指揮するマリガンとの策略あり、陰謀あり、とどちらかというとSci-Fi映画というよりもむしろ人間臭く、人間の闇の部分をシニカルにまたアイロニックに描いているようで現政権を批判しているのではないかという印象も与えている。しかも蒸し暑い短い夏が終わり、その裏返しのような冬は凍てつくように寒く、また日中でも暗く感じ、その上、人種のルツボで犯罪都市シカゴを舞台にしているので余計に映画自体が重く感じ、偏執(へんしゅう)病的と言えば言い過ぎになるのか?
この映画自体、首を捻りたくなるような部分も散見し、例えば、人間がエイリアンを格闘の末、倒し、そこまではいいのだけれども人間がエイリアンが着ている宇宙服の顔の部分をひっぺ剥がすシーンは、どう考えてもあり得ないし、エイリアンの顔を拝ませるためだけの演出としかないと勘ぐりたくなってしまう。また、フェニックスのメンバーがセレモニー会場を襲撃し、そこからバスで逃げる場面で、走り出したバスが、急に止まってしまい、ヘッドランプも車内灯も消えてしまう。しかし........ヘッドランプ以外の車外灯が付いてるのは....?何故? 重箱の隅を突っつきすぎました。
"So you want to make godzilla our pet? No. We will be his.."で知られる映画にご出演というよりは、むしろジェームズ・ワン監督が、製作または監督をした死霊館シリーズの実在の人物で、つい先日、92歳で亡くなった心霊研究家(ニュージーランドの大学で教鞭をとられていました。)のロレイン・ウォーレンさんの役のほうが、ホラーファンなら当然知っていて当たり前で、ワーナー・ブラザース映画のドル箱シリーズとよべるもので、しかも最新作「アナベル 死霊博物館(2019)」が9月に公開予定となっている。その人、ベラ・ファーミガさん。この映画でもそのターコイス色と言っていいのか透き通った単に水色と言っていいのか、その瞳で見つめられると彼女の妖艶さに参ってしまいそうになる。Nat King Coleの"Stardust"(ある人に言わせると「うっとりした心地または"夢の中"のニュアンスもある」とされる。)のレコードをかけて登場する。しかもなんと、その名前が、"Jane Doe"。名前も不思議なら彼女の演技も不思議に思える。
地元シカゴの定期新聞、Chicago Readerによると「全体的には、あいまいなCGIといくつかの非現実的なパフォーマンスによってゴチャゴチャしている。」しかし、この映画のルパート・ワイアット自身「猿の惑星:創世記(ジェネシス)(2011)」においてパフォーマンス・キャプチャーを多用していかにも自然な動きや表情の変化をいかんなく発揮していたのだが、この前、映画公開に合わせてのインタビューで、「この映画はいわゆる"Gambit"(マーベル・コミックスに見られる、まだこの世に出ていないアメリカのスーパー・ヒーロー映画)で、本当のことを言うと製作期間も限られ、予算も低かった。」と語っていた。それに付け加えるとこの映画実は、前作の「猿の惑星」の製作費の4分の1、約27億円であるのだけれども4月において売り上げが、9億4千万円というBox-office bombの御仲間入り濃厚となっている。
パフォーマンス・キャプチャーと言えば思い出すのが、1985年の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督。7月に公開予定の彼の新作映画「マーウェン(2018)」、この映画もよい内容にもかかわらず製作費約42億円を回収することが出来るか懸念されている。
映画情報サイト、AV Clubのコメント「この映画は確かに印象に残るものであるけれども地球外生命体の侵略というジャンルの将来、実現するかもしれない題材の面白いところを最悪にもダメにしている。」
この映画のキー・アイテムとして全人類を監視するため、エイリアンによって首筋に埋め込まれた"生体型チップ"(傷跡のない、時たまモッコリと盛り上がる。)やデジタル通信が一切できずにアナログな世界観というのも見どころかもしれない。
STRIKE THE CLOSED ZONE.
LIGHT A MATCH, AND IGNITE A WAR.□