ワイルドライフのレビュー・感想・評価
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子供に罪はない
ゴルフ場での仕事を解雇され、再雇用の道もあったが、プライドが邪魔をし、職に中々就かないジェイク。終いには、命の危険があり、金にはならないのに、山火事の消防団の仕事で家族を残し、家を出てしまう身勝手さ。生活も不安だし、やがて寂しさから、夫への愛情をなくすキャリー。荒んだ母親をキャリーが上手く演じている。やがて、生活力のある年老いた男を頼りにしようとしていく。息子であれば、母親の女の部分は見たくない。子役エドが、文句を言いたいのだが、終始黙って、苦悶の表情。グレたりしない、良い子の典型。子どもおじさんのような落ち着いた演技が光っていた。ラストは母親のみ離れた場所で暮らしている設定だったが、3人での記念撮影を機に、また元に戻ってくれれば良いな。キャリーは年取ったけど、時折見せる笑顔がキュートでした。
ハリボテ夫婦と息子のイニシエーション
ポールダノの初監督作品。おめでとうの気持ちで見に行った。
そういうのを脇に置いても佳作と言えましょう。好きなやつです。
この夫婦は、おそらく30代半ば。
30代半ばは、必ずしも成熟していないのです。
夫の身勝手さに身震いし、妻の不自由さに息が詰まりました。
夫が火消しの仕事(という名の逃避行)に行ってから、妻は働き始めますが、適度な働き口はなく、プロ愛人?みたいなよくわからんことになっていました。
この妻の迷走っぷりは、なんとも愚かでリアルで、でも息子がかわいそうで、辟易しました。
離婚してスッキリした2人が観れてよかったですが、その結論までを付き合わされるこどもが本当に気の毒。でも、でも、息子にとっては大人へのイニシエーションにもなって。
時代の不自由さ、登場人物の愚かさと悲しみ。
楽しい嬉しい大好きの世界とは違う、苦界をさまよう愚かな人間を断罪し、批判的でありつつも包括的には人を肯定する世界、といったらいいのかな?そんな世界が描かれてると思います。
私にとっては、とても、本物らしい世界。視点。
なので、好きです。
ただまぁ、元気な時でないと、しんどいかな。
疲れ切ってる時は、楽しい嬉しい大好きの単純で明るい世界が癒されますから。
どうしたポール・ダノ?むちゃくちゃ良いやん!
ちょっとビックリ。だって、むちゃくちゃ良かったから!スイス・アーミーマンの印象が、強烈な残像となってしまってるポール・ダノの初メガホンだそうです。もう、あのビジュアルは忘れます。いや、やっぱり無理かw
一人息子。父の不在。女と化してしまう母親。壊れかける母子の絆。と、ここまでのプロットは今年6月に全国公開されたポーランド映画「メモリーズ・オブ・サマー」と同じ。ポーランド人は、そのまま母子の絆を壊して息子が精神的に親離れするところまでで終わりました。こちらは、その後までしっかりと見届けます。と言うか、そっからが本番。
久しぶりに見たキャリー・マリガン。少し老け目だけど、相変わらずの「男殺し感」。キュート。ギレンホールは2週間振り。この二人の役者振りに救われているってのは、あると思う。というより、二人の演技を強調する演出。カメラを向けて、そこで顔芸芝居。しかも結構の長尺あり。二人の演技は、見応えあったです。が、ポール・ダノの嫁はゾーイ・カザンでしょ?いや、実はマリガンより、この役にはまりそうに思うんだけど、ってのは言いっこなし?
いずれにしても、これが「アメリカ映画」だってのには、焦る。ポール・ダノはNY生まれの子役上がりだそうです。旧い日本映画、イタリア・フランス映画、見まくってるでしょ。タイム感がアメリカ映画には無い感じ。そもそも、米国脚本で、これほどに「派手なイベントも事故も事件も起きない物語」は嫌われる。というか、嫌われてきた。多少、風向きが変わっていることを感じさせる映画は、ボチボチあったけど、これもその中の一品。個人的には、かなり好きです。
繰り返すけど、アメリカ人にこんな映画撮られた日には、日本人はどうすれば良いのかと。ラストカットと幕切れの瞬間から、ジワジワと胸に滲みて来る温かさを噛みしめながら、「メディアが狂わせた価値の評価軸の是正」が、一向に進まない日本映画界の将来に不安も覚えるのでした。
ちなみに「野生生物」と言うタイトルが意味深。息子のジョーから見た母親の事ですよね。あの夜、野生生物に見えたのか。少年は荒野に立って前を向く。と言うか、家族は、まずは「自分の足で立ってみた。歩いてみた」。この後、家族の絆がどうなるかは、誰にも分らないけど、この写真は、僕の家族が、ちゃんと自分の足で立って生きていることを記念したもの。それが、僕の家族の門出。
写真館で「記念撮影」に立ち会い、多くの家族の、夫婦の、友人達の絆を、門出、生きている記録をフィルムに収めて来たジョーは、胸を張って誇らしくシャッターを切りました。
良かった。とっても。
と言うか、ポール・ダノ、あなたヤバいヤツだったんですね。次作も期待してますから!
2019年ベストムービー!⭐️✨
素晴らしすぎる"家族崩壊"の物語。
息子ジョーを演じる少年の、心の揺れや悲しみが繊細に描かれていて、静かなカメラワークながら感動的でした。
そして、ラストシーン…鳥肌でした!(笑)
カメラをみつめる3人の目線や、その目の表情が!
今年、1、2の映画作品…名作です。
*息子ジョーを演じたエド・オクセンボールドが、名演でした。
14歳の主人公とその両親。 仲睦まじいなぁ、と思ってたが父の失業か...
14歳の主人公とその両親。
仲睦まじいなぁ、と思ってたが父の失業から少しずつ綻びが…
大人になれない父、そんな夫が信じられず精神的に弱り、壊れていく妻。
そんな母の姿を見せられた息子も父が戻れば大丈夫、と思ってたはず…しかし、1度壊れたモノはそんな簡単には戻せない。
あのラストシーンに希望をもっていいのか?
ポール・ダノは初監督とはおもえない素晴らしい作品を作り上げました。
時代背景が重要な映画
個性派俳優ポール・ダノの初監督作品。原作は、ピュリッツァー賞作家リチャード・フォードの同名小説。ダノとともに共同脚本を務めたゾーイ・カザンは彼のパートナーで、『エデンの東』などの名匠エリア・カザンを祖父に持つという。
1960年代はじめ、14歳のジョー(エド・オクセンボールド)はカナダに近い米国中北部モンタナ州の小さな町に両親とともに越してきた。
父親ジェリー(ジェイク・ギレンホール)は近所のゴルフ場でコーチをし、母親ジャネット(キャリー・マリガン)は専業主婦。
ジョーの成績は優秀であるが、まだクラスに溶け込めず、ひとりでいることも多い。
そんなある日、ジェリーがレッスン相手たちと賭けゴルフをしていたことがバレて、コーチの職を馘になってしまう・・・
というところから始まる映画で、家庭の崩壊劇を少年ジョーの視点から飾ることなく描いていく。
この手の映画は、近頃では珍しい部類にはいるのではなかろうか。
ジェリーはプライドが邪魔して、なかなか定職に就くことができず、代わってジャネットがYMCAでのスイミングスクールのコーチの職に就き、家計を支えるようになる。
なにかしらのもどかしい気持ちを抱えたジョーは、夏になると頻発する山火事の消火隊員に志願して家を出てしまう。
残されたジャネットは、心と肉体の隙間を埋めるかのように、スイミングスクールの生徒で、町で大きな自動車販売店を営む年かさのウォーレン・ミラー(ビル・キャンプ)と不倫関係になってしまう・・・
ま、よくある話といえば、よくある話なのだけれど、60年代はじめという時代設定がかなり重要な位置を占めている。
劇中でジャネットの口から語られるように、ジャネットは現在34歳。
ジェリーとはワシントン州の大学で知り合ったというから、ジェリーも同じような年齢。
ジャネットは20歳でジョーを産んだ計算になるが、そのころがどうだったかと逆算すると、第二次世界大戦・太平洋戦争の終結直後。
そして、ジェリーは先の戦争に参加していないことになる。
この設定が重要で、男らしさ=ファイター(闘う男)という価値観のなか、ジェリーには戦争に参加することができなかったという負い目がある。
このことが、山林火災の消火隊員への志願に繋がっている。
そして、ジャネットがウォーレンに惹かれる理由もわかってくる。
父親ほど年の離れたウォーレンは、先の二度の戦争(つまり第一次大戦も)に参加し、脚を負傷している。
その上、彼の息子は第二次世界大戦で戦死している(彼の家を訪れた際に、息子の軍服姿の写真が飾られていることからわかる)。
ジャネットは、ウォーレンのなかに、戦前の男らしさ(=ファイター)をみている。
ただし、それは幻かもしれないのだが。
と、こんなことを映画は、過多な説明をすることもなく描いていく。
この演出は、凡庸ではできない。
ポール・ダノが優れた監督であることを示している。
さて、少年ジョーは、父親から期待されていたフットボールもやめて、家計を助けるために、アルバイトを行うようになる。
バイト先は、町の写真館。
当時貴重だった写真を撮るのは幸せなとき。
その幸せな思いを忘れないように、と願って写真を撮るのだ、と館主がジョーに告げる。
だから、常に、笑っているように、とも。
なかなか、いい台詞。
ジョーは撮る側(まだ撮影することは許されていないが)にいる。
このポジションも、父や母をみる側、というのに通じている。
さらにまた、演じるエド・オクセンボールドが実にいい。
困惑した表情をしながらも、決して間違った方向にはいかないぞという強い信念。
ポール・ダノ本人のようだ。
また、ジャネットを演じるキャリー・マリガンが素晴らしい。
『わたしを離さないで』の少女が、10年もしないうちに、人生に疲れた中年入口の女性になってしまった。
はじめスクリーンに登場した際には、誰だかわからなかったほど。
少し前だったらミシェル・ウィリアムズあたりがキャスティングされていたような役どころだけれど、より若いのに、より疲れた感じがとてもよく出ていました。
最後になるが、なんやかんやあったのち、少年ジョーが写真館で両親とともに写真を撮るラストも心に沁みました。
ジョーが心のなかで言っている・・・
僕は二人から、人生のすべてを学んだ(謳い文句)。
ま、なんやかんやあって、不良になる暇なんてなかったけどね。
〝毒親〟化寸前に子どもに助けられたチルドレンな大人たち
子どもの前であろうが、声を荒げて夫婦喧嘩。
子どものことよりも自分の不満、不安、怒りが先立つ言動。
どちらも〝毒親〟に見られる典型的なパターンですが、これらが幼児期から思春期まで継続してたらジョーも精神的な障害を負いかねないところでした。
14歳からの数年間のことで済んで本当に良かったです。
アダルトチルドレンな親を反面教師として、自立心の備わった〝普通〟の大人に(親になるのに決して〝立派〟な大人である必要はないと思います)育ってくれそうで何よりでした。
とはいえ、失業した直後の夫が、家族から責められたくもないし、慰められるのもなんだか惨めな気持ちになるしで、逃げ出したくなる気持ちはよく分かります。家族を支えてるというプライドだって一時的に保てなくなるのですから。
そんな時に山火事の現場、というのは、社会貢献的な大義とプライドを持ち得る、正に渡りに船のような感じだったのだと思います。
キッツイなぁ…
いやね、ジョーがね、もう高校生とかでさ
周りに割と友達もいてさ、チャラチャラ生活してくれてたら話は違いますよ、、
なんせ14歳ですよ、思春期真っ盛りの他者から影響受けまくりの時期で、しかも引越し先の慣れていない土地ですよ…
ジョーきつすぎません!?あんな真面目に生きてるだけなのに…
3者ともがウィンウィンな感じが全くしない!
みんな成長できて良かったね、では終われない!
だからこそ面白い映画なのでしょうが、、、
ポールダノは親の葛藤が子供の成長に影響〜〜と語っていたらしいが、それはまあ、その通りかもと納得。
きっかけ作ったジャンもイかれてるけど、ジャネットが悪いと私は思いますね…
というか割と俯瞰で作られてるから、悪く見える瞬間もあれば、守りたくなる瞬間もあるという…
明らかにジョーへの共感強めなのは間違いないですが、、、
ジャネットがな〜わたしは許せない、
ミラー氏との3人の食事会なんてもう不快度MAX。もういいよ、ジョー帰ろう、優しいあの子と宿題しよう、ね、、、と言いたかった…
その後の家でのやりたい放題ももう呆れてしまって。
家庭問題で余裕がなく、恋愛もまともに出来ていないジョーがこの先で幸せを見つけることを心より願います。
PS
ジェイクギレンホール怖すぎ…暗闇にいるだけなんに、なんであんな怖いの……
私の頭があんなのキャリーマリガンじゃない!!っと訴えまくっている…ハマってないよね?ね??
17歳の肖像の頃の、行っちゃダメ!ダメ!……あ〜〜行っちゃった〜〜じゃなかったよね、今回は。
え、行くの?え??うそん、え、もう決めたん?あ、そうなん…って感じでいつのまにかやりおった感が強くて。あの頃の芯の強さがないキャラだったんで、あんまりって感じでしたね…。
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