劇場公開日 2019年7月5日

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「親である前に人間だった」ワイルドライフ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0親である前に人間だった

2019年7月12日
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鑑賞方法:映画館

父親も母親も、親である前にどうしようもなく人間であった、という話。
ポール・ダノの初監督作は、最初はとても平穏な感じの家族で始まる。しかし父親が失業して、その結果様々なほころびが見え歯車が狂い始める。
プライドと承認欲求が高い父親ジェイク・ギレンホールは山火事を消しに家族を置いて去り、しっかりしてそうだった母親キャリー・マリガンがどんどん狂う...というか崩れていく。キャリー・マリガンの壊れっぷりが絶妙で生々しい。最早息子に感情を隠すことができなくなった、抑制の効かない母親。
大変なのは息子である。いつも何か言いたげな目をしながら結局何もかも飲み込む息子。結局、大人になりきれない両親に代わって彼が大人になる。
「僕ら家族はどうなるの?」「分からない」に全てが集約されている。夫婦は所詮他人の同士、結局繋ぎ目を維持し続けなければ簡単にバラバラになるものなのだ。しかし息子には父と母だ。どちらも投げ捨てることができないあの表情と台詞が悲しい。
しかし、ラストが予想外に穏やかというか、未来が仄かに明るく見えて、ああ、こういう落とし所もあるのかと思った。あのまま切断してもよかったけれど、救いはあった。
物語と登場人物の緊迫感、物語に無駄や弛緩がなく、非常に映画的な映画でした。初監督作とは思えぬ出来。
ジェイク・ギレンホールやっぱりヒゲがあるとないとじゃ全然違うな...。

andhyphen