「繊細な視点から素直に丁寧に描かれる真夏の青春映画でした。」夏、至るころ Naokisky2さんの映画レビュー(感想・評価)
繊細な視点から素直に丁寧に描かれる真夏の青春映画でした。
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うだるような暑さの中で蝉の声が鳴り響く公園。不安定なネットで作られた遊具の上で会話する主人公とその親友。夏休みを機に親友は受験に専念するために主人公と一緒だった和太鼓の稽古場には行かないことを宣言する。戸惑う主人公。
この心が不安定な心の揺らぎが表現されていた素敵な導入部だった。
彼は自分の将来の夢を「空気」と教室で答えてしまう。この「空気」という言葉が様々な語り口で観客に提示される。『幸せの青い鳥』のエピソード。じいちゃんの夢として語られる、おばあちゃんのことを大事にすること。食卓を家族で囲むこと。家族との時間を大切にすること。自分の内側と向き合うこと。(この映画は確かにボーイミーツガールの展開もあるが、そこでの女性との出会いは恋や愛だのという流れではなく、あくまで一過性の出来事に過ぎず、自分の内面について見つめ直すきっかけを与えてくれたというのが面白かった)たとえ物理的に離れることになっても、離れてしまっても遠くからでも側にいても大切な人のことを想うこと。こうした想いを持つ存在になることを「空気」の意味として形を変えて散りばめらている。この映画は池田エライザのスタンドバイミーだった。
・飼っている鳥と戯れているリリー・フランキーの縁側のシーンは美しかった。声が漏れてしまった。あのカットのラストの一言はアドリブだったのだろうか?
・シャッターの閉まった商店街を主人公と親友で自転車を転がしながら話をするシーンは一番良かった。
・デビュー作がこのクオリティというのは素晴らしいと思う。
・両津勘吉のお化け煙突を知る昭和世代に注意。ハンカチ必須。
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