「峰不二子の「嘘」とは何か?」LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘 nisiさんの映画レビュー(感想・評価)
峰不二子の「嘘」とは何か?
峰不二子の「嘘」って何だろうー?
って考えてみると
劇中のセリフとしても出てきたのは
バーでの次元とのやりとりで「つけない嘘はつきたくない」というものです。
これは子供のジーンに「待ってたら帰ってきてあげる」という嘘はつけないという意味。
普段は人を騙してばかりいる不二子らしくないセリフで
次元も「らしくねぇなぁ」と言っています。
今作の不二子はいつになく本気で、
らしくないところがたくさん出ています。
「子供って本当に大っ嫌い」とヒステリックに言い放ちますが
実はこれが今回のテーマの「嘘」
不二子には弱い者を放っておけない母性があることを
この映画は明らかにしました。
不二子が狡猾なだけの女なら
最後にビンカムと身体を張って戦う必要はないです。
金を手に入れたのだから逃げればいいだけ。
ジーンの父親は見殺しにすればいい。
なのに不二子は
たいして可愛くもない甘ったれた子供の危険をとり除き
父親に再会させる。
今作のポスターに
「ヤバいぜ、不二子。」と書いてあるのは
敵のビンカムが強くてヤバいのではなく
不二子の本気度がヤバい状態という意味です。
不二子がここまで本気を出したことがかつてあったでしょうか?
いつも余裕で、なにか達観していて、いつでも逃げ道を用意してる、
そんな不二子が見返りもなくビンカムと対決!
今回の不二子は特別なのです。
騙し騙され、という不二子の描き方はこれまで沢山ありましたが
不二子の本音が出た作品は
「殺し屋はブルースを歌う」のプーンの登場した話だけです。
それに今回の作品が加わったことは大きな意義があります。
ところで
この作品には子供が二人出てきます。
ジーンとビンカムです。
ジーンは可愛くない子供で、ビンカムは大きな子供。
ジーンは守るべき対象で
ビンカムは殺される標的
その差は色気づいているか、いないか?
つまり不二子に操れるかどうか?
操れる者は支配し、騙し、時には殺す。
ジーンは不二子を「嘘つき」と罵るが
不二子がつく嘘のボーダーラインがここに見える。
ビンカムの殺され方があっけないと思うけれども
可愛くなくなった子供の殺し方としては理にかなってる。
闘いが終わったあと
「こっちも片づいたぜ」とルパンが来て星空を眺める二人。
まるで父親と母親でジーンを守ったような演出。
ルパンに身体を預けて眠る不二子の長い本気の一夜が明け
彼女はまた、騙し合いの日々に戻って行った。
無粋な表現で締めくくると
「峰不二子の嘘」とは「嘘つき女の本気」ということでした。