「【”当選しました。そして悪人正機。”今作は自殺した少年が”管理人”により100日間の生を得、周囲の人の善と悪を許容し再生していく青春ファンタジー映画であり、青少年の自殺防止映画作品でもある。】」ホームステイ ボクと僕の100日間 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”当選しました。そして悪人正機。”今作は自殺した少年が”管理人”により100日間の生を得、周囲の人の善と悪を許容し再生していく青春ファンタジー映画であり、青少年の自殺防止映画作品でもある。】
■死んだはずの“ボク”の魂は、自殺した高校生・ミン(ティーラドン・スパパンピンヨー:今作の制作陣のヒット作「バッドジーニアス」で、カンニングビジネスを仕切る御曹子役を演じた彼ね。)の肉体に100日間だけ“ホームステイ”することになる。
ミンの自殺の原因をその間で見つけなければ魂が永遠に消えると告げられた“ボク”は、ミンとして新たな人生を始めるが、やがて生前のミンを苦しめていた残酷な現実の数々を知って行くのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、今作は森絵都の小説「カラフル」の実写化である。私は、この小説の深さが気に入っていたが故、その後、原恵一監督によりアニメーション映画化された際には、幼かった息子と、遠くの映画館迄車を飛ばして観に行ったモノである。
・”悪人正機”とは浄土真宗の開祖である親鸞が説いた、深い人間考察に基づいた考えである。誤解されやすい言葉であるが、私はこの言葉は、煩悩を抱えた人間には善なる面と悪なる面があり、それを全て許容する上で生きる事で人は救われると解釈している。
・今作では、ミンの好きな女の子パイ(チャープラン・アーリークン:タイのアイドルグループBNK48のキャプテンだそうである。恐るべし、秋元康である。)は、科学オリンピックに出るために先生とキスをしているし、それを偶々見たミンは深く傷つく。
・又、ミンの両親は不和であり、ミンが心を赦す母親はそれ故に不倫をしており、ミンはその事でも深く傷ついているのである。
更にミンは兄、メンともドイツへの留学の事で、関係が拗れている。
■故に、”当選する前の”ミンは、人生に絶望し睡眠薬自殺を図ったのだが、、”当選した後の”ミンは、そういった事柄を経験しつつ、パイや母、兄の想いを少しづつ理解していくのである。今作で重要な人物としてはリー(サルダー・ギアットワラウット)という、ミンの事が好きな女の子が登場するが、この女の子の心は善に満たされている。
彼女は、ミンが描いた暗いトーンの絵の中で、数少ないカラフルな絵を見つけて、学校祭のマスゲームで彼にその絵を見せるシーンは秀逸である。
そして、ミンは周囲の人の悪なる面ばかりを見ていた自分に気付き、”管理人”に対し、【僕を殺したのは僕だ。】と告げ、新たな命を手に入れるのである。
<今作は、自殺した少年が”管理人”により100日間の生を得、周囲の人の善と悪を許容する事で再生していく青春ファンタジー映画なのである。>
■微笑みの国、タイは意外に青少年の自殺率が高い事で有名である。「バッドジーニアス」の制作陣が、森絵都の小説「カラフル」を実写化した理由は、タイの若者への”死んではイケナイ”というメッセージだったのかもしれないな、と思った作品でもある。