「「言葉は通じるけど話が通じない人」の役が上手すぎるユペール様vs「物語の不幸を燃料に輝く女優」クロエたんの98分1本勝負!」グレタ GRETA ウシダトモユキ(無人島キネマ)さんの映画レビュー(感想・評価)
「言葉は通じるけど話が通じない人」の役が上手すぎるユペール様vs「物語の不幸を燃料に輝く女優」クロエたんの98分1本勝負!
話のスジはシンプルなストーカーものなんだけど、する側をユペール様、される側をクロエたんが演じることで、怖さが相乗効果!
なんなら未来から来る暗殺マシンやピエロ顔の悪霊よりも怖さがシャレにならない映画になってると思う。
2010年『キック・アス』でのヒットガール役から彼女を見守ってきた映画見にとっては、“心の姪っ子”と言ってもいい存在のクロエ・グレース・モレッツが、ストーカ“される側”の主人公。
あの頃のイメージからするとキレイな女優さんに成長したけれど、例えば『キャリー』や『イコライザー』や『サスペリア』のようなイイ映画では可哀想な役を演ることが多く、逆にイイ役を演るのは『フィフス・ウェイブ』のような“可哀想な映画”であることが多々あるので、どちらにしてもトータルイメージとして“不憫な女優”というのがある(個人の印象です笑)。
そんなクロエたんが今回もガッツリ追い込まれる役で、“不憫パワー”をビンビンに発揮してる。物語の不幸を燃料にして輝く女優だ。
一方、ストーカ“する側”の女優は、昨年の『ハッピーエンド』も良かったし、なんつっても2017年の『ELLE』で虜にさせられたイザベル・ユペール。『ELLE』の時は“異常なまでのマイペースさ、空気の読まなさ”が観客にとっては痛快な主人公像だったけど、本作ではその“異常なまでのマイペースさ、空気の読まなさ”がそのまんま恐怖になってる。「言葉は通じるのに話が通じない人」のコワさを確信的に演じられる人だ。味方にいても怖いけど、敵に回すととんでもなく怖い感じ。
そんな2人のストーカ“される/する”話だから、そりゃあ怖いよね。
個人的には、例えばホラー映画でモンスターがラスボス化する前の「怪奇現象」の段階がゾワゾワする怖さで好きなんだけど、
本作でもユペール様がストーカ化する前の「えっ?この人ちょっとオカシイんですけど!」っていう段階がジワジワする怖さで良かった。
クロエたんに対しては「ケータイのアドレス交換のやり方もわかりませ〜ん」ってフリしながら、ひとりになった時にはノートPCでしっかりクロエたんのSNSチェックしてたりとか、職場の窓の外にずーっと立って待ってたりとか、そういうのが幽霊や殺人鬼よりもリアルに怖かったなぁ。
必見なのは、ユペール様の家に私立探偵が訪ねてくる場面。ここでショパンの曲に合わせて踊る(?)ユペール様が見られるんだけど、『ジョーカー』ばりにヤバいダンスシーンの名場面だと思う。