アンダー・ユア・ベッド(2019)のレビュー・感想・評価
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君の声で僕の名を呼んで
幼き頃、夏の暑い車内に閉じ込められて危うく命を落とすところだった直人。父親は息子のことをすっかり忘れていたという。それからというもの彼は人生でだれからも存在を認知されず忘れ去られる存在として孤独に生きてきた。
しかし大学生活でのある日、初めて自分の名を呼ぶ声を聴く。同じ教室の佐々木千尋だった。自分の名を呼んでもらったことなどもはや記憶にさえなかった直人は千尋に淡い恋心を抱く。
だが、千尋とはそれきりで、すでに11年の月日が流れていた。思い立って直人は千尋の行方を探し当てるが、そこで再会した千尋はあのころとは別人のような荒んだ表情をしていた。
千尋の身にいったい何があったのか、直人は仕事を辞めて彼女の生活圏に店を借りて、グッピーショップをオープンさせながら彼女を見守ることにする。すると間もなく彼女が夫から酷いDVを受けていることを知る。
彼女への募る思い。妄想は膨らむ一方だ。無料でグッピーの飼育セットを提供することで彼女の家にうまく入り込んだ彼はすかさずスペアキーを作り、頻繫に彼女の家を出入りしては彼女を見守りつつ、グッピーの世話をしたり子供をあやしたりしていた。
千尋も家の中に誰かがいる気配を感じ取り、まるでそれが自分を見守ってくれているかのような安心感のようなものを感じていた。
しかし夫によるDVはますますエスカレートし、家を出た千尋だったがすぐに連れ戻されてしまう。
包丁で千尋を刺そうとする夫の背後から直人はスタンガンをあてて間一髪千尋を救う。夫を殺害した直人はそのまま交番に出頭する。これでいいのだ、自分は誰の記憶にも残らない、あの孤独なアロワナ男と同じグッピー男なのだ、もう終わりにしよう。
しかしその時、彼の名を呼ぶ声が聞こえる。千尋は思い出したのだ、11年前にたった一度きりコーヒーを飲んだ直人のことを。そしてもう彼のことをけして忘れることはないだろう。彼女の心の襞に彼という存在は縫い込まれたのだから。
直人の本当の人生はこれから始まる。
平たく言えば直人がしていたことはまんまストーカーなんだけどそれが結果的にいい方に転んだということで善因善果ではなくて悪因善果ということでおあとがよろしいようで。
サイコパス旦那に千尋が刺されそうになった時、背後から現れた直人はダークヒーローみたいでかっこよかったな。じらしにじらされていただけにカタルシスを得られた。
吉田恵輔監督の「なま夏」のような作品かと思いきや、家に上がり込んでグッピーの世話をしてたり赤ん坊をあやしてたりと、ウォン・カーウァイの「恋する惑星」を思い出した。
男が恋する女性に一方的に抱くどろどろした情念のようなものを見事にエンタメに昇華させた予想を裏切る良作だった。
ちなみに女性の皆さんはDV男とストーカー男どっちがいやですか?え、どっちもいや?そりゃそうですね。
純真すぎる愛
"三井君、三井君"
存在感が薄く親からも車にいたことすら忘れてしまったいわれるほど、幽霊のような存在だった三井君に希望の光が見えたのは佐々木さんとの授業中でのトラブルを機に助けて貰えたからだろう。
今までずっと名前すら呼んでもらえない。
卒業アルバムの全員集合の写真にいないことすら誰も気づいてもらえない。
そんな悩みを抱えた主人公だったから、名前を呼んでもらえたことで改めて自身の存在を認めてもらえたことが次第に彼女への一方的な愛へと変わる。彼女が大好きだったマンデリンのコーヒーをごちそうした、それだけが三井君が佐々木さんと過ごした唯一の思い出だったが、グッピーの水槽は受け取れないと連絡を彼女から貰ったのが最後のやり取りになってしまった。
30歳になった三井君。
ふとエレベーターの中で佐々木さんが付けていた百合の香水の香りを思い浮かべながら彼女がいまどうしているか気になり交信所に問い合わせ、すると彼女は24歳の頃に5歳年上の地方公務員と結婚していた。
書類に書いてある住所を訪ねたらなかなかの豪邸に最近生まれたばかりの赤ちゃんの世話に忙しく過ごしていたが、三井君が見た佐々木さんの最後の姿と打って変わって身形が変わりすぎていた。
まるで魂の抜け殻のような彼女に愕然とし、何があったのか近くに空きテナントを探し熱帯魚店をオープンすることにし、彼女の家を眺めることができる3階から覗き見開始。
暫く覗いているうちに彼女の旦那が暴力を振るっているのを見てしまう。彼女を助けたかったのか見て見ぬふりはできないと考え盗聴器をつけるようになる。やがて彼女は盗聴されていることに気づき呼びかける、助けてと。
三井君が背後から旦那の首にスタンガンをあて気絶させると、ラストは首を絞め殺害。彼女にはもう三井君すら記憶になく自ら交番へ出向き出頭すると、彼女が現れた。
思い出した、と。
そもそも佐々木さんの旦那さん。
地方公務員であんな豪邸建てられる?
因みに地方公務員とは以下の職業をさす
★県庁や市役所の職員、警察官、消防官
相当血税を食ってるか脱税してるかw
甚だ疑問。儲かる仕事じゃない。
韓国版のも見たが、こちらのほうが旦那の職業がこれなら豪邸に住めるよね~という病院の院長だったが、日本版はちと旦那の闇が根深い。多分儲かる副業やってるなあ。
やってまえ!!!と声に出してた
下記ネタバレ有りです。
まず、暴力表現がまあまあきついので、観てみようかなと思っているかたは、少し覚悟が必要だと思います。私は千尋が暴力を受けている間、あまりにも痛そうで心が折れかけました。千尋を演じた女優さん(西川可奈子さん)の演技力が良いのもありますが、観ていて本当に辛かったです。
内容は、30歳を迎える主人公三井(高良健吾さん)が、学生時代に初めて名前を呼んでくれた千尋に執着し、興信所に頼んで場所を特定してもらい(そんなことできるの?)、久しぶりにひと目見ようと会いに行ったら、そこにはクソ最低外道DV夫のせいで変わり果てた千尋がいて…というストーカーラブサスペンスでした。
これだけ聞くとストーカーをする三井が、気持ち悪くて最低な男のようですが、ストーカーを超えてくるクソ最低外道DV夫がいるので、まるで三井がヒーローのように見えてきます。
盗聴、盗撮、住居侵入、ストーカー行為の役満ですが、クソ最低外道DV夫のおかげで、一旦気にならなくなります。
愛のためなら何をしてもいいわけではないですし、顔がかっこいいからストーカーしても良いわけでもないですし、正当化できる行為ではないのですが、三井にはただひたすら千尋を想う気持ちがあるので、私としては応援したくなりました。
クソ最低外道DV夫が映るたびに、頼む!!そのまま!!そのまま殴れ!!!!ころせ!、!!と拳を突き出し応援していました。きっとみんな思う。
時々入る三井のモノローグや、千尋のモノローグが好きでした。千尋が三井(三井からだとは知らない)お花楽しみにしてたの嬉しかったなあ。
後、お風呂のシーンも三井の優しさといじらしさを感じられて好きです。ほんっとーーーにあんな状態の千尋をお風呂に置き去りにしたクソ最低外道DV夫には、マジで寝ている口に脱脂綿つめこんだあげく、上からスライム流し込んでやれ。
そして映画なので仕方ないのですが、なぜこの手の映画って扉を開ける前に誰なのか確認しないのでしょうね?
三井の過去や、クソ最低外道DV夫のたまにいう匂わせ台詞、千尋の最後の表情、すごく引き込まれた作品でした。
正しくはないけど、間違ってなかったと三井に言いたいです。
この後千尋と三井がどうなるか、それはわかりませんが、二人でグッピーを見に行けたらいいなと思いました。
今日からベットの下がちょっと怖い
鬼畜サイコ旦那のチ○ボーを噛みちぎれ!
鬼畜サイコ旦那のチ○ボーを噛みちぎってやればいいやん!と何度も思った。
なんでやらないのか。それがDV男(こんな言葉で軽く言いたくない。サイコ野郎だ。)を懲りずに選んでしまう女性の性なのか。理解ができない。
影薄男の大学時代の唯一の思い出の後半が妄想だったと言う夢オチのようなオチ。
そうだよね、あんな凄い経験を2人でしたらその後付き合いなく10年経っていたって顔見て、面と向かって話して気づかない訳ないものね。
最後に勇気出せて良かったね。
でも、遅いよ。
しかも何も殺すことはない。
あんなサイコ男の為にムショ暮らしなんて
する事はない。
正当防衛にまではならないにしても情状酌量で
多少の減刑はされるのだろうか。
盗聴、盗撮やら不法侵入、ストーカー行為
だけなら彼女が黙ってたらパクられもしないし、自首したところで彼女が処罰を求めなければ起訴さえされないかもしれない。
サイコ旦那をやってしまったのだけは余計だった。30なら出て来てもやり直せる。彼女が待っていてくれるのなら。と言うか彼女にそんな感情はあるのだろうか。
彼のするべき事は名を名乗り思い出してもらえなくても旦那が仕事に行っている間に彼女と赤ん坊をシェルターに避難させる事だったんだ。それで済んだ。
盗撮した写真やマネキンなんかで妄想でこいてる暇があったら。
原作より映画の方がいいのでは
原作をチラ見したら、映画より登場人物が深堀されていた。でも、DVする理由やら、ストーカー行為の理由やら、それは説明しても納得を得られるはずもないし、ダラダラ語られるより映像でぱしっと示した方が私はいいかなと思った。
特に、オチは絶対映画の方がいい。原作は夫を殺したあと千尋と三井が一緒にコーヒーを飲んだり、「僕、三井です……覚えてますか?」と言ってしまったりするので、いやそれは無いだろと思う。そんな行動力あったら初めに家特定した時に名乗ってるわい。
やってることはかなりキモイ三井くん。でも目がキラキラしすぎてて、30歳まで独りでいたやばい人だと言うのを忘れそう。それほど、千尋さんへの恋は素敵なものだったんだね……。
興信所はそんな簡単に個人情報を出してしまうのか、三井くんはそんな簡単に店を出してしかも生活成り立つのか、夫が妻の居場所特定するのが早すぎて超能力でもあんのか、と色々ハテナは浮かぶけど、とにかく、オチがいいと思った。
あと、三井が「千尋が欲しいか?……それは、答えられない。人を幸せにする方法が分からないからだ」と心でぶつくさ言うところが、この人は認識される人生であれば、きっと優しいとか言われて幸せだったのになーと思えるところだった。異常者かもしれないけど、三井は水嶋とも濱崎健太郎とも決定的に違う心を持っているのが分かる。とにかく、高良健吾さんって綺麗な顔ですね。
この映画見てからしばらくは、健全なラブソングが全て三井くんのアブナイ心境に聞こえます(笑)いや、三井くんだって、ボタンがかけ違えなければ、普通の恋する男のはず……。
これはただのホラーではない
考えて見てほしい。
もしあなたの眠るベッドの下に、何者かが息を潜めていたとしたら…。
都市伝説にもありそうなこの設定から物語は始まる。
静かに、ただ静かに、好きな人を見守りたいと思う気持ちが常軌を逸していく主人公。
相手は、たった一度コーヒーを一緒に飲んだだけの関係。
恋人でもなく友達ですらない。
でも、そのコーヒーを飲み話をすることが主人公にとってはどれだけうれしく幸せな時間だったことは想像にかたくない。
相手は結婚して子供もいるが旦那からの酷いDVでぼろぼろにされている。
助けたいのか?自分のものにしたいのか?
相手を思うということがどういうことなのか、
考えさせられる。
すきな相手のベッドの下に潜む主人公は、常軌を逸しているけれど、
誰かからもわからない花を待ち望む彼女もまた、少し道を外れている。
名を名乗るわけでもなく、ただそばにいたいと思う気持ち。
ベッドの下から届くはずのない手を伸ばす主人公が切ない。
どんなに彼女を思っても、DV旦那のように彼女に触れることはできない。
できなくても彼女を思う。それはエゴなのか。
最後に名前を呼ばれ、存在を認められた彼はこれからどう生きていくのか。
彼女との関係が、恋人でないにしろ残ってほしいと願った。
最後は『良かったね!』と思えた!
承認欲求が溢れるこの世の中で、親からも『忘れてた』存在として生きる青年のたったひとつの『しあわせ』の記憶。それだけを頼りに生きてきただけなのに…
でも最後は『良かったね(;∇;)』と思ってしまった。
高良くん、あの綺麗なお顔忘れられるなんて…
副音声
常に高良健吾のナレーションによって設定が説明されるスタイルの副音声映画。そのせいでドキドキハラハラすべき箇所がそうならず、退屈の極み。
そもそも高良健吾が誰にも記憶されないようなインキャっていう設定が無理ありすぎで、2回目グッピーをプレゼントしたときに女がなにも覚えていないってミスリードをかけるのに、違和感がありすぎる。インキャはそんなこともあるのか...と騙される必要があるのに。
このキャストじゃないと客が呼べないって話なら女優のキャスティングを頑張るべきだと思う。
後半は面白かった。過剰に臆病で助けに行ったのに何もできない高良健吾。笑った。インキャが忘れられないためには人を殺して救えばいいじゃんというオチも。まぁ原作読んでて知ってるんですけど。
もし誰かいるなら、お願い。私を助けて
映画「アンダー・ユア・ベッド」(安里麻里監督)から。
観賞後、他人のレビューを読んで驚いた作品の一つ。
多くの人が、作品を絶賛し、高評価を与えていたからだ。
私には「ストーカーVS一途な愛」がテーマではなく、
自分の感情に任せて妻に暴力を振るう男と、
その夫の暴力から、逃げようとしない女の行動の方が、
主人公のストーカーより印象に残ってしまった。
だから、この作品を思い出すフレーズとして選んだのは
夫からのDV被害に疲れた彼女が、自宅に他人の気配を感じ、
「もし誰かいるなら、お願い。私を助けて」と呟いた台詞。
いくら主人公が存在感のない役割と言っても、11年前に
一緒にお茶を飲んで、熱帯魚のグッピーまでもらう約束をし、
さらに、当時と髪型や雰囲気、声も変わっていない異性を、
忘れてしまうことなんてあるのだろうか?という疑問が、
最後まで違和感として残り、作品に没頭できなかった。
11年って、長いようで意外と短いんだよなぁ。
異常な執着か?一途な愛か?
江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』、『人間椅子』などをも彷彿とさせる、他人の生活をこっそり覗き見るという古典的なストーリー。
親からも他人からも存在を無視続けられた孤独な青年三井が、クラスメイトの千尋から、初めて自分の名前を呼ばれたことに、この上ない「幸せ」を感じます。そして、たった一度だけ、喫茶店で千尋とコーヒーを飲んだときのことが忘れられません。
11年の月日が流れ、三井は千尋に再び会うことを夢見て、興信所を使って彼女の現在を突き止めます。近所に引越をして、合い鍵を使って留守の時に彼女の家に入り込み、さらには夫婦の寝室のベッドの下に潜り込み・・・と、三井の行動は暴走していきます。
三井のやっていることは、ストーカーなのですが、決して害を与えるものではなく、「ただそばにいたい」という切実な想い。偏愛執着なのか純愛なのかと、考えさせられてしまいます。千尋が夫からひどい陵辱を受けるたびに、不思議と三井の切ない想いがじわじわと伝わってきて、千尋の救世主のようにも思えてきます。
テイストは全然違うのですが、内容的には『君が君で君だ』のシリアス文学編かもしれません。笑
R-18版とR15版があるらしく、R-18版の方を動画サイトのレンタルで見ました。どこがどう違うのか? おそらく、ボカシがあるかないかの違いかもしれません。
wowowの連続ドラマ『罪と罰』(ドフトエフスキー原作)で主人公を演じた高良健吾が、恐ろしいほど印象に残っており、内面に秘めたものが炸裂しそうな何かを抱えており、この『アンダー・ユア・ベッド』でも、好演でした。
ストーカー変態ということに着眼すれば、六角精児さんのような人がぴったりかもしれませんが(NHKのドラマ『真夜中のパン屋さん』で通行人を望遠鏡でのぞき見する役だった)、高良健吾だからこそ、純愛につながる淡いタッチになったのかもしれません。
やりすぎ感だけが残って残念
ストーカーがテーマの作品は多いが、ストーカー目線の作品は珍しいので、そこは楽しめた。
ストーカーになる人物は、総じて自己肯定感が低いのだと思うが、主人公が最後に自己肯定感を取り戻す所で、カタルシスは感じれた。主演の高良健吾も「多十郎殉愛記」の時より、百倍良かった◎
ただラストがなんでそうするかな?と疑問だった。
原作はともかく、私が監督ならDV旦那は殺さないで千尋を連れて死ぬ気で逃げ続けるか、あるいは千尋と永遠に別れて別の場所で新しい幸せを探すラストにしただろうと思う。
殺してしまうと、DV旦那と同じレベルに堕ちるし、このねちっこい性格の主人公が一生後悔して罪の意識の中で生き続けるのではないかと思ったからだ。
でも一緒に見た連れに、「原作はホラー小説みたいだよ」と言われて、納得しました。元々救いなんか無いし、観る側のシンパシーも求めていないのだと(笑)。
最後に千尋が交番で主人公の名前を呼ぶシーン、唯一あそこだけが感動しました。
欽ちゃんの全日本仮装大賞を思い出した!
忘れられた存在。高校の卒業アルバムに自分が写ってなくても誰も気づかないってところで、可哀想に思えてしょうがなかった。いや、名前だけなら仮装大賞だって・・・毎回つまらないギャグを連発する仮装が得意の三井くん。10数回も出演しているのに、欽ちゃんに名前を憶えてもらってないシーンが痛々しかったことを思い出すのです。「君、毎回出てるよね」とか言われ続け、香取慎吾が加わってからようやく名前で呼ばれることになった気がします。彼も最初は暗くて、つまらなくて、しかし常連のように出場するのでお茶の間ファンも多いし、そんな根暗な三井くんも出続けたおかげで結婚もしたのです(今年で50回出場してるらしい)。
冗談はさておき、この作品、江戸川乱歩原作だと言われても不思議じゃないくらいに、暗く寂しく変態ぶりを描いてました。屋根裏でも椅子の中でもなく、すでにベッドの下という大胆さ。その大胆さで比べると、ストーリーは全く違うがキム・ギドク監督の『うつせみ』(2004)をも彷彿させます。石の下の虫のように忘れ去られてしまう存在だったからこそ大胆な行動にも出れるし、愛することを知らずにいたからこそ変態的な行動を繰り返すのだろう。
純愛といえば純愛。名前を呼んでくれさえすればいいのだ。開店した熱帯魚店で千尋の口から「三井くん」という言葉が発せられれば、悲劇とならずに済んだのだ。愛の伝え方がわからず、毎月花束を届ける三井。サービスしたグッピーだってすぐ死んじゃうから、合鍵を作って週一で世話をする三井でもあるのだ。そして盗撮、盗聴により千尋が酷いDVを受け、体が痣だらけになっていることも知っている。どうすればいいんだ・・・
高良健吾と西川加奈子。特に女性の19歳当時と30歳で疲れ果てている違いを見事に演じていた西川加奈子は凄い。さらに店の常連客アロワナ君(三河悠冴)がワンクッションを置いてる感じで、彼もまた三井と同じように忘れられた存在だからこそ殺人を犯して名を知らしめたのだろう。この殺人現場中継も三井と千尋の犯罪とミスリードさせるギミックだと思うし、最終的にスタンガンと絞殺に至った要因とも言える。
妄想シーンも紛らわしかったのですが、愛することと性的衝動に駆られることを30歳にしてようやく理解できたととらえました。終盤になっての時間軸を交差させ、思わず真実を見極めようとさせるテクニックも上手いと感じました。もう、安里監督はキム・ギドクか!
ただ、号泣できるシーンがラストのワンショットのみ。これじゃ涙を乾かす暇もありません。もうちょっと余韻が欲しかったところ。映画館を出るとき恥ずかしくなるじゃありませんか。そして、三井役の高良健吾がイケメンすぎて、忘れ去られる男ちゃうやろ!と何度も突っ込みたくなるために最高点から0.5マイナスとなりました。
セックス !バイオレンス!童貞 ‼︎
煩悩に取り憑かれた三十男の命懸けズリネタ集め
エスカレートするDVファックと炸裂する白い情動
復讐譚であり、エレジーであり、男という生き物の生態記録でもある。
コンパクトな設定に溢れる情報量と演出のケレン味。
3+1の役者陣、モノローグ転換、終盤のヒロイックな見栄と見所満載。
楽しい。
これぞ真骨頂!
『葬式の名人』を観て、高良健吾どうしたんだろうか?と心配になったのだが、本作を観てそんな心配は吹っ飛んだ。
高良健吾、最高!
今まで観てきた中で、いちばん良かった。
こんなかっこいい人が周りから存在を認識してもらえないなんて、設定に無理があるのでは?と思ったけど、なぜかそれがしっくりくる。
そしてそして、特筆すべきは西川可奈子さん!
キラキラと笑顔弾ける学生時代から一転、DVを受ける結婚生活。
殴られ蹴られ、フォークで手の甲を刺され、歯を折られ…悲鳴のあげ方も真に迫っていて、観ていられないくらいだった。
(男性で、「そんなにひどいシーンではなかった」とSNSでコメントしている方がいたが、あれが「そんなにひどくない」と思える人は、殺されなきゃ「ひどい」と思えないんだろうか)
誰かにオススメはするけど、2度目を観るには勇気が必要。
痛痛しい
最低な夫を持つと大変ですね。
高良くんがいてくれて良かった。
原作との違いをあまり感じなくて、良かったです。原作が好きなので、これも好きな作品になりました。違いを感じたのはヒロインの大学生時代がちょっと愛想が良すぎるかなって。僕の原作のイメージではもっと嫌な女でした笑 高良くんもイケメンすぎるので、存在感あるし、いないもの扱いになるってのはちょっと信じがたいですが、演技はとても良かったです。終わらせ方はちょっと議論のしどころだと感じましたが、僕はおおむね満足でした。
江戸川乱歩を彷彿とさせる倒錯と妖艶
アンダーユアベッドというタイトルのまんま、
かつて惚れた片思いの相手のベッドの下で、
ひっそりと彼女の温もりを求める様は、
江戸川乱歩の「人間椅子」を彷彿とさせる。
他人の私生活を覗き見る快感がエスカレートしていく様は「屋根裏の散歩者」である。
さらに「d坂殺人事件」の香も仄かに薫ってきた頃、
救いようもなくもがく芋虫の如き主人公が、
残りわずかな希望に手を差し伸べられるか否か。
一見おどろおどろしくどんより展開したはずの物語が、
視聴後は仄かに苦くてどこか清々しい。
それはマンドリンのコーヒーのように、
口内で未だ淡く残っている。
甘くはないが、それでいいのだ。
それこそが、人生であり、希望であり、その瞬間が映画に収まっているのならば。
ただエドワードヤン監督の「恐怖分子」のオマージュはこれ見よがしすぎる。
いい意味で気持ちが悪い作品
DV夫とストーカー男に挟まれる状態になるヒロイン、ただただ痛かった。身体的にも精神的にも、見てるこっちが辛くなった。
そう感じるだけのリアリティがあって、演技とストーリーに引き込まれてしまった。
中でもストーカー男の妄想、これが1番衝撃的すぎた。
見終わったあとは複雑な気持ちでいっぱいだったけど、映画館で観てよかったなぁと思えた作品。
特にあの耳がキーンとなるほどの絶叫は、映画館でしか味わえないと思った。
ただ見た後に本気で気持ち悪くなってしまったくらいに女性目線から見た男性陣が気持ち悪かったです。
背徳感と出歯亀根性を丁寧に切なく愛を描いた良作です。
最近、大作系の作品の鑑賞が多かったので、久し振りに単館系の作品が観たかったのと、公開前に監督の安里麻里さんがテアトル新宿でビラを配られてので気になってたのとw、鑑賞した人の感想が高評価なので鑑賞。
前から観たかったけど、なかなか上映時間に合わなかったのですが、やっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと、割りと好き♪
こういうちょっと変態チックで尖った感じで狭く病んだ感じの作品は割りと好きなんですw
お話は端的に言うと、昔優しくしてもらった女の子の事が忘れられなくて、彼女の所在を見つけ出して、ずっと監視していく中で、我慢出来なくなって、家に忍び込み、ベッドの下に潜り込んで、優越感に浸る男の話。
と書くと身も蓋も無いけど、そこにいろんな要素が組合わさっていく。
主人公の三井のやっている事は完全に犯罪行為。
ストーカー行為の行き着く果てではあるが、いろんな過去の体験から自身の存在の薄さ、周囲が自分に気がついてくれない存在感の辛さは分かるし、心が痛い、観ていて切なくなる。
卒業アルバムに自分がいない事に誰も気がついてくれないなんて辛すぎる。
だからと言って、こんな事をやっていいかは別の話ではあるが、それを許してしまいたくなる境遇とストーカー相手の千尋の環境がなんとなくそれを許してしまい、“千尋を助けられるのは三井、お前だけだ!”と思ってしまうw
ベタと言えばベタ。でもその外堀埋めを丁寧にしている所にこの作品の上手さと良さがあります。
学生時代にふと名前を呼ばれた。
ただ名前を呼ばれて、一緒にコーヒーを飲みに行った。
その思い出だけを糧に生きていると言っても過言ではない。
“もっと確り生きろ!”とも思えるけど、周囲に居ないかの様な扱いをされるのは切ないし、そこに声をかけてもらえる嬉しさは分かる。でもかと言ってあそこまでの病的なストーカー行為には普通は走らない。でも三井の気持ちは分かるし、辛さがじわじわとくる。
グッピーは水槽の中から逃げられないが、その中で精一杯自分を輝かせそうとする三井の気持ち。だが間引きする事で自分の心の何かを間引きしている。
マンデリンは彼女との唯一の繋がり。でもそれが切なくも三井の救いとなってる。
安里麻里監督の丁寧な描き方かしみじみと訴えかけてくる。
主人公の三井の描き方も病的で壊れそうな程繊細な感じで、殆どが三井の葛藤と性癖なんですw、これ以上やるとゲスになる所をギリギリに攻めてる。
…まぁ、ゲスな所も正直ありましたがw
また、西川可奈子さん演じる千尋も切ない。
陽と陰でドストレートに学生から主婦の右肩下がりの不幸せを演じてますw
最初は気持ち悪かった三井からの花束のプレゼントを心の拠り所にしているのが切ない。
濡れ場や見せ場も多く、かなり体当たりな演技は凄いです。
正直今まで知らなかったけど、出演作を見ると結構なかなかハードな作品にも出られてますが、作品の監督が結構な方々なので、これからブレイクしそうだし、またブレイクして欲しいと思う女優さんです♪
千尋の旦那を演じる安部賢一さんも絵に描いた様なクズ旦那で対比が良いw
クズな旦那なだけに三井が純に見えるマジックw
難を言う所があるとすれば、妄想のシーンが出てくると全編が妄想かと思えるシーンのオンパレードなので、何処までが現実で何処までが妄想かが観ていても分からなくなる。
また、三井を演じる高良健吾さんがちょっと男前過ぎるw 大学生時代がちょっと大人過ぎw
観賞魚店の痛いお客役の三河悠冴さんの使い方が勿体無い。
もっと三井の内面を引っ張りだすキーマンとしても十分に果たせると思うのに、使い方が勿体無さ過ぎるかな。
エンドロールで原作が角川ホラー文庫と明記されてるのを見て、確かにホラーではあるけど、どちらかと言うと純文学な要素の方が多いので、純文学ホラーと言った所かな。
角川が配給している割には上映館が圧倒的に少な過ぎるのが勿体無い。
テアトル新宿は1日1回のみの上映も勿体無い。それでも鑑賞した回は完売の満席状態。
万人受けするとは思えないけど、もっといろんな人に観てもらっても良いぐらいのいろんな事を訴えかけてくる作品かと思います。
エグいと言えばエグいし、生々しい部分も多々ありで、人の見てはいけない部分が赤裸々に描かれています。
犯罪者が犯罪を犯すまでの過程を見たいと思う野次馬かつ出歯亀根性を巧みに誘っている嫌らしさがありますが、勿論それだけではないからこその良作。
身体を重ね合うベッドを挟んで、上と下との世界観の違いがある意味ジョーク過ぎて、ちょっと笑ってしまいます。
かと言って、自分の知らないだけでベッドの下に誰かが居たら、怖すぎる。
でもベッドの下に居る三井の切なさ。
なんとも言えない背徳感とやるせなさ。
ラストは本当ならどう考えてもアンハッピーですが、三井と千尋にとっては報われた感が個人的には良かったかな。
ベタにハッピーな展開になった感じであっても2人に幸あれと思います。
監督も出演者も今後が気になりました。
この作品がターニングポイントになってたら嬉しい。
まだ未観賞の方でも興味がありましたら、是非時間をやりくりしてでも観てほしいかなと思う作品です。
今年の静かな名作の一本
センセーショナルな前情報だけに踊らされると非常に勿体ない作品。
本編はとても真面目に丁寧に作られていて、かなり論理的なように思えた。
何故なら彼の行動の動機の全ては"もう一度名前を呼ばれたい"という唯一点であることがブレないから。
名前とは相手の存在を其処に認め、その呼び名や呼び方によって相手をどのように捉え想っているのか、一瞬で透けて見えてしまう。
少なくとも私はそう思って生きてきた。だから名前を蔑ろにする人間を許せずに生きてきたし、名前のためにここまで行動する三井の行動や心理はごく当たり前に腑に落ちてしまった。
「人間にとって一番辛いことは忘れられることだ」というような台詞が挟まれていたけれど、
その逆に三井が千尋を思い出す時のそのあまりの記憶の鮮やかさに、彼女が我々の目の前にも匂い立つように存在を感じる、その哀しさ。
大きな目とサラサラの髪、花柄の服。
マンデリンの香りや百合の花を彷彿とさせる香水。
11年経ってそれを"再現"しようとしたマネキンや、サイフォンで淹れるコーヒーの様子が、まるで違って見えてしまう淋しさ。
"忘却"の象徴として登場する父との記憶や学生時代のエピソード。そして地中の虫たち。
10日に贈る花束に添える手紙を書くときは、決まってペンを走らせる音がキーキー鳴るその不快さ。(意図的な演出だと思う)
忘れ去られた人生を映すスクリーンはあまりに生気がなく、だからこそ写真を見て自慰をした時に放たれた白濁にすら生を感じる。
こうして"或る男の半生と恋"が静かに紡がれるのだけれど、十分すぎるくらい無駄がなく淡々としながら感情をきちんと感じさせる塩梅が素晴らしかった。
兎にも角にも、高良健吾さんの芝居に尽きる。ベッドの下での恍惚とした、それでもどこか虚無感を湛えた表情。
ラストにやっと本望を遂げた瞬間の、徐々に本心の滲み出る様子。圧巻。
これだけで観て良かったと思える作品。
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