アンダー・ユア・ベッド(2019)のレビュー・感想・評価
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三井くん、どうか幸せに
ストーカーも相手の状況と演者と映し方と見方によっては純愛の男になりえる。
ベッドの下から始まり、そこに至るまでの経緯や千尋への執着のきっかけを回想して現在と行き来させる見せ方が好き。
三井の主観がゴリゴリに入っていて、あの頃の彼女のミューズ感が強く伝わってきた。
便利で怖い興信所の活躍、千尋の近くに越して本当に独立しちゃう行動力よ。
ラッキースケベのシャッターチャンスでめちゃくちゃ連写する音に笑ってしまった。
何その真顔、シュールか。
どんどんエスカレートする行動に見合わない、ひたむきで一生懸命な三井。
やっていることは完全アウトで、もし自分がこんな事されていたらと思うと背筋が凍る思いだけど、三井側の目線で見ているのでどうも彼を応援してしまう。
「千尋さん、どうか幸せに」と綴る彼に同じ言葉をかけたくなる。
シュールなストーカー劇の行方はどうなるだろうと見守っていたけど、モノローグの語り手が交代すると一気に感情が昂ぶってドキドキしてくる。
悲惨な状況で生活する千尋だから持てる感覚。
どちらも歪だけど、二人の思惑や感情が掠る程度に触れ合っているのが伝わってきて、もどかしくも嬉しく思う。
最後はあまりのことに震えて泣けて仕方なかった。
三井の役を高良健吾が演じていることに、私の中では賛否両論巻き起こっていた。
明らかに美青年すぎて、こんなかっこいい人が周囲の記憶に残らないわけないでしょ!と思わずにいられない。
地味でもクラスの女子に「実はイケメンだよね〜」と噂されるのは必至の顔の良さ。
三井にはもっと生々しさが欲しいなとは思いつつ、観ているうちに実はこの顔面とちょうど良かったのかも、と考え直してきた。
この映画はただ彼の気持ち悪いストーカー行為をそのまま写しだす作品ではなく、とある人の一つの愛の形を描いた作品であって。
それを上手く伝えてくれるモデルとして、この映画の空気を保つには彼はすごく良いバランスだったと思う。
気持ち悪いだけと言い切れず、美しいとも言い切れない絶妙さ。
千尋の身体に刻まれた無数の傷跡、夫からの暴力描写がキツくてゾッとした。
その生々しさと三井のギャップも良かった。
千尋の立場がこうでなければ成り立たなかった物語。
報われない三井、報われることを望むのすらやめてしまった三井に、何となく石神哲哉を思い出した。
愛の形は人それぞれ。正しいか正しくないかは別の話だけど、相手を傷つける暴走だけは控えめに。千尋の夫は失敗例。
同族嫌悪の対象、若い男性客の存在がいいスパイスだった。アロワナをくれ。
人間椅子
だとしてもCREEPY
卒業アルバムの集合写真に写っていなくても誰にも気付かれなかった様な30歳の主人公が19歳の頃に声をかけてくれた元同級生のストーキングをする話。
ベッドの下に潜んでいるところから始まり、知り合った当時とベッドの下に潜むに至った4ヵ月前からの話を行き来しつつ物語が展開して行く。
興信所で行方をつきとめ所在地を訪れ近くに移り住むという近付き方からエスカレートして行く様子は怖過ぎるけれど哀しさがあって、冷静になってしまうとコメディにも感じてしまうけど、そういう作品ではないし、彼女もそういう癖ではなくシリアスらしい。DQN大集合だけどね。
店を訪れた彼女に違和感を憶えつつどう落とすのかと思っていたら、1時間程して語り手が変わり期待値上昇。しかしながら真実が明かされて期待値ダウン。
結果悪くは無い終わり方で締めてくれたけど、もっとドロドロを期待してしまったが為に物足りなかった。
しかしホントいつまでスタンガンの間違った情報を前提に話をつくるんだろう。
また別の純愛のかたち
終始、独特な緊張感が漂う。
恋愛の形は様々だと思う。
そして、僕にも、たとえささやかでも希望が打ち砕かれた時のちょっとした絶望感や、それにも関わらず募る想いなどは、これほどではないにしても覚えがある。
三井の千尋を観察する目や耳は、まるで自分の目や耳になって、千尋のやつれた姿や、千尋に対して振るわれる暴力、そして、隷属的なセックスを目撃し、音を聞く。
特に、ベッドの下で聞く音は生々しい。
覗き見ることや、観察することをテーマにした映画は少なくない。屋根裏の散歩者、ヒチコックの裏窓など有名作品に加え、最近の二重生活には場所を移しながら観察するという独特な緊張感もあった。
しかし、この作品の、見守るとも、ストーキングともつかない恋愛感情には、ピンと張りつめた空気感の他に、何か決して救済されることのない悲しさがつきまとう。
代を重ねても交雑せず、美しさを維持した水槽のグッピーのように、三井の千尋に対する想いは美しいままだったのだろう。
しかし、グッピーが水槽の中だけで生きるように、三井自身の想いも外に出ることはなかった。
エンディングは悲しい。
ただ、最後に千尋が三井であると気が付いたことで、三井同様、自分も何か救われたような気が少しした。
これまでになかった純愛の物語だった。
ところで、高良さんの目立たず根暗な男性の感じとか、西川さんも同様に、どこにでもいそうだけど、何か気になるところがある女性の感じが、個人的には印象的で、今の世の中でジェンダーを引き合いに出すのは、どうかとは思うが、安里監督の女性目線の演出なのだろうかと気になった。
原作は、角川ホラー文庫から出版されているとのことだが、僕としては純文学カテゴリーだ。
大変よくできた作品
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