「最後の10分のせいで令和初かつ最悪の「釣り動画」に」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 松村上久郎さんの映画レビュー(感想・評価)
最後の10分のせいで令和初かつ最悪の「釣り動画」に
映画を観終わったその怒りのまま、映画館の券売ホールの喧騒の中でたまらず筆をとっています。このまま車に乗って家に帰ることはできません。それでは遅すぎます。怒りの涙で視界がにじむため、家にたどり着く前に事故を起こして私は死んでしまうでしょう。それだけはなんとしても避けねばなりません。慣れないiPadのキーボードで遅筆ながらしかし怒りが風化しないうちになんとか思いの丈を書き留める義務が、確かにわたしにあるのです。
はっきりいいますと、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は3DCGアニメーション映画の予算で作った令和最初にして最悪の釣り動画です。
最悪です。ドラゴンクエストのファンは王道のストーリーを楽しみにきたのです。監督がパッと思いつきでやってみた寒くて滑って、もう滑って滑って仕方ない激寒メタ演出の人柱になるために映画館に足を運んだわけではありません。普通に魔王を倒してハッピーエンドを迎えたかった、ファンが望んだのはそういうふつうの幸せです。山崎貴監督はそういう「ふつうの幸せ」さえも叶えられなかった愚か者です。奇をてらってなにか有意なものを映画界の歴史に残したかったのだろうが、愚かだったというほかありません。ドラクエに手を出すということが何を意味するのか、何を期待されているのか、彼はついに理解しないまま映画を完成させてしまったのです。というより、ファン心理を理解した上でのこの出来なのであれば監督としての能力はもとより人格を疑わざるを得ません。わたしにザラキが人生で一度だけ使えるとしたら迷わず彼に放つでしょう。彼がマホカンタを常備していないことを祈るばかりです。
というかわかりました、かいているいま理解しました。山崎は古参ファンに「いてつくはどう」をかけたのですよ。ドラクエ世界にドップリ浸かることすらさせなかった。正確には映画の途中までは浸らせておいて一番熱いところで冷や水をぶっかけた。奴はわたしたちのゲマになるつもりでこの映画を作ったんだ。いや、そうとしか思えない。原作のゲマは「いてつくはどう」を使えないのだがこの際それはいい。奴がラスボスのミルドラースを書き損なったのは自分がゲマになるのに忙しかったからだ。そうなるといよいよ山崎貴にはマホカンタがかかっている説が濃厚になるので、天空のつるぎを確実に手に入れてから撃破に向かわねばなるまい。
いやわかる、わかりますよ。主人公の父の仇であるゲマを倒すことがどうしてもドラクエ5ではクライマックスになってしまいます。ただでさえミルドラースはドラクエシリーズでも影の薄いラスボスとして有名なのだから、ミルド攻略のくだりをどう描ききるのか、ゲマ以上の憎さをどう演出するのか。頭を悩ませた結果なのだと頭では理解できます。王道ストーリーをやる以上ラスボスを描かないわけには参りません。山崎貴なりに答えを出したことそれ自体は認めます。
ただそれでもおもうのは、あんなVRオチという「かわし」をやるくらいだったらゲマがラスボスだったほうがどれだけマシだったか計測不能です。あれならミルド封印成功臭いものにフタエンドのほうがまだましです。というか、せっかくボロボロになったゲマがドラクエ6のデスタムーア最終形態みたいな見てくれ(主人公親子の攻撃を受けて、顔と両手だけ残ってあとはスカスカという状態)になったのだから、そこにミルドラースがコツコツあけた魔界の穴のスキマ(魔力をやりとりしているらしい描写はあったのだからそのくらいのチカラがあってもこの際いいだろう、マーサだって強大すぎる力とはっきりいっていたのだから)を通ってゲマに乗り移って「お前の母マーサの努力は無駄だったな、フハハハハ!」と雑でもいいから憎まれ口の一つでも叩いて主人公のヘイトを買っておいてゲマの何分の1でもいいから憎たらしさを担保しておいてからみんなで力を合わせてミナデインでよかっただろ!ドラクエ映画をやるってことはイコールミナデインだろどう考えても!!!おれはミナデインが見たかったんだぞこのやろう、なんでそんなこともわからねえんだヘボ監督!!!!!お前の映画は二度と見ねえからな!!!!!!!!!!
.......本当にねえ、グラフィックや音楽は決して悪くなかったんですよ。微妙に納得できない部分はもちろんあるんですけど、ドラクエ世界が厚みあるものとして映像で観れるというのはわたしはとても嬉しかったんです。思い出すのはドラクエ7なんですけどもね、ドラクエ初の3DCGで。今見れば拙いグラフィックかもですけどね、当時小学生だったわたしにはそれでも大興奮モノだったんですよ。立体的なんだよと。感動したよ。それまで平たかったものが少しづつでも厚みがでてくるとやっぱり感動するんです。それで今回も映像には期待していました。なにより質感がいいし、モンスターが特にいい。フローラやビアンカも可愛かった。本当にどっちをお嫁さんにするか迷っちゃいますよあれじゃあ。
だからこそ、だからこそですよ。映像をリアルにしていくということは「観客をとことん没入させるぞ」という宣言をすることです。没入が念頭にあるグラフィックをこれでもかと使っておいてメタ脚本に逃げた山崎貴を私は全く許す気になれないんです。
山崎貴ははっきりと矛盾しています。「ゲームに没頭しないで大人になれ」というのが彼のメッセージなら、なぜ彼は没入できる映像を提供したのか。どうせ没入させておいて後ろから殴りたかったのだろうが本当に中身ある説教をやるんだったら、かれは映画の全編を3Dではなくむしろドット絵でお送りするべきだったと思います。まあ、そんな映画見ないけど。というか、ドラクエ使ってやる説教じゃあねえわな。
だからこの映画は「釣り動画」なんです。魅力的なサムネイルで釣っておいて、13歳くらいの男の子が自分の言いたいことだけ言い逃げして終わり。もともと釣り動画なので視聴者の機嫌をとる必要もない。この映画を観終わった時に流れた私の涙は、ニコニコ動画のランキングに上がっていた面白そうなサムネの動画をクリックした結果釣り動画を2時間視聴させられた上に1800円取られた挙句、なけなしのドラクエ愛を踏みにじられツバを吐きかけられた行き場のない怒りと悲しみの涙だった。とりあえずは今から天空のつるぎとお嫁さん探しの旅に出ようと思います。奴は現代に現れたゲマだ。野放しにするわけにはいかない。
もう、同意ばかりです。釣り動画という言葉、なるほど!としっくりきました。的確な表現をありがとうございます。
鑑賞後、悲しみのあまり同じように思う方達のレビューを読みあさって、なんとか気持ちを落ち着けようと努力する日々です。
車の運転、お気をつけて。
せっかくドラクエにはミナディンっていうラストに相応しい呪文があるのに…((T_T))
あと、3DCGミナディン見たかったです。
個人的には、女の子が出てきてくれたら、イオナズンも見れたかな…って思ってます。子供たちも思い出がいっぱいあるので、本当に残念でした。
あれですね、お嫁さんとの間に天空の勇者が産まれて、ゲマをやっつけに行くんですね!
仲間はいっぱいいますよ!
その時はぜひお供させて下さい。
ピエールとは言えませんので…ホイミンとして!(笑)
気をつけて帰って下さいね。
釣り動画という表現が妙にしっくりきて笑ってしまいました。同じ気持ちの被害者ですが、ショックから日が経過することで、多少心の余裕も生まれて来ました。とりあえず事故らずに無事ご帰宅されることを祈ります。