「評価が難しい」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー M Kさんの映画レビュー(感想・評価)
評価が難しい
冒険中の感想は、作品のキャラクター達に何一つ感情移入はできないけど、ゲームのムービーが豪華になったと思えば贅沢な作品だなという感想でした。
良い点から書きましょうか。
キャラクターの表情(グラフィック)がとても生き生きしてますよね。特にヒロイン達。原作に忠実とは言い難いですが、照れている様子だったり、驚いている表情だったり、はたまた勇ましい表情も引き込まれます。
また、ゲマの表情の改変も非常にうまいと思いました。はっきり言ってしまうとあれほどストーリーを大幅にカットし、彼の悪役非道なシーンも当然それだけカットされているのに、そのわずかなシーンで表情、仕草、少しのセリフの追加で見事に悪役ぶりを発揮していました。
上の部分は、私の語彙ではとても伝えきれません。まさに百聞は一見にしかずです。
特に感動が大きいのは私が元のゲームの体験者ということもあるでしょう。上記の部分はドット絵やリメイク(当時)では表現できるものではなく、あくまでプレイヤーがゲームの進行の中で想像していくしかなかった、私達の思い出の一つです。(もちろん、あくまで沢山ある想像のパターンの一つです。)
ではその上で、一番プレイヤーが想像を豊かにさせたであろう戦闘シーンはどうだったかというと、確かに迫力はあったが、物足りないというのが私個人の正直な感想でした。
ゲーム風にいうと主人公達のレベルアップをまるで感じないというところでしょうか。
なんで強くなってるのか全くわからないのですよ。映画の描写だけでは。(実はストーリー上、理由があることはあるのですが)ゲーム中のダンジョンイベントにまつわるストーリーがほぼないんですよね。申し訳程度に主人公が試練に挑むようなシーンがあるにはあるのですが、ぶっちゃけストーリー上はなかったとしても全然問題ないくらい。
その上、あくまでゲームの設定ではあるのですが、主人公が魔物使いであるという特性が申し訳程度にしか活かされていないように思いました。モンスターもあくまでほとんどが敵キャラとなってしまい、仲間として出てくるモンスターは非常に限られております。人間をバトルに出すためにはある程度仕方なかったのかもしれません。
ただ、その戦闘シーンそのものはどうだったのかというと、やはり表情と同じで立ち回りや呪文をぶっ放す間合いなどはとても生き生きしてます。最強呪文をぶっぱなしまくる嫁の立ち回りもかっこいいと思いました。ゲームで見てきた呪文達がリアルな描写でぶつかっているのは心踊る場面でしょう。
最後に、映画として、退屈で単調に感じられた部分を書きましょう。それはオチにも関わってきますが、キャラクターの中身のなさです。
主人公含め、ヒロインも、パパスも、サンチョも、ヘンリーも、どの人間達もゲーム以下の内容しか掘り下げられた内面が出てこなかった、少なくとも伝わらなかったことが理由でしょうか。
パパスがどんな思いでマーサの捜索を主人公に託し死んだのか、主人公は花嫁を選ぶ時何を思い、判断したのか、自分が勇者でないとき何を思ったのか、息子が勇者のとき何を思ったのか、そしてマーサを目の前にして何を思ったのか。
これは、ドラクエ5をプレイした人間なら前述のキャラクターや戦闘シーン同様、ある程度頭の中で補完しながら作品を楽しんできたのではないでしょうか。
そしてこの映画について前知識を敢えて入れずに作品に挑んだ人間であれば、上記について何かしら触れられると期待と不安を入り混じらせながらきたのではないでしょうか。
ところが、出てくるキャラクターは悪い意味でゲームのキャラのようにあらかじめ決まっているかのような台詞回し、おきまりの展開。そしてラストシーンでの種明かし。
映画を見て、ラストを見て、そして上記が触れられなかった理由がわかっても私は失望しました。冒険者としての主人公達の心情に何一つ踏み込めなかったことに。そして現実世界の主人公にしても、せいぜい描かれているのがビアンカかフローラかでいつも片方を選ぶタイプだったというこの程度の掘り下げしかなかったことに。
今回の映画全般に対する感想としては、途中に書いたバトルシーンの感想に全てが集約された形になりました。
グラフィックがとても生き生きしてる。しかし何一つ共感ができない。だってその中身がまるでわからない。
特に最後の私にとって悪かった点はあくまで私が勝手に期待をし、失望した点なので評価すべきポイントかは微妙です。しかしこの映画が伝えたかったことは何かと聞かれたとき、何も残らなかったのも事実です。
何も残らなかった映画に対する評価というのも難しいです。
追記
また、この映画で現実の主人公が述べたメッセージについてですが、おそらく元のゲームを体験した人間であれば当時当たり前にゲームから受け取ったメッセージなのです。
それはおそらくこの作品の感動ポイントだったと思うのですが、残念ながらそれはグラフィックの未熟だった時代、少なくないプレイ時間を費やしたプレイヤーなら必ず思っていたことであり、多少の共感はあっても今更その言葉に感動ができるほど単純ではないと思います。
おそらく、ゲームの体験者として、この映画には私は期待をしすぎていたのでしょう。