「ネットの酷評レビューの通りだった」二ノ国 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
ネットの酷評レビューの通りだった
原作ゲームは未プレイ、ネタバレ無しのレビューをいくつか見て、動画サイトにあがってる公式の予告映像を見た程度ですので、事前知識はほぼ無しで視聴しました。
結論としては、アニメ映画の肝とも呼べる部分が悉くダメだったと感じました。以下に「これは酷い」と感じた部分を列挙します。
①作画
この作品の作画は本当に酷かった。TVアニメ以上に予算も潤沢でスタッフも揃っているはずの劇場アニメにも関わらず、「作画崩壊」とも呼ばれかねないレベルで酷いシーンが散見されます。アーシャ姫の顔がシーンによってころころ変わり、場面によっては両目が離れて魚面になるし、ユウの乗る車椅子は物理法則を無視したホバーボートのような動きをします。逆に物語上は全く必要の無いユウが車椅子からベッドに移るシーンはたっぷり尺を取って描かれる上にヌルヌル動きます。映画の2時間という尺の使い方・作画の力を入れる部分が明らかにおかしいです。
②声優
メインキャラクターであるハル・ユウ・コトナ(アーシャ姫)の声優はプロの声優ではなく俳優さんです。俳優としては一流の方々で出演されている映画やドラマも拝見しているのですが、声優としては正直微妙と言わざるを得ません。極端に下手というわけではないのですが、周りの声優陣を実力派声優で固めてしまったこともあり、対比でめちゃくちゃ下手に聞こえてしまいます。
同じ俳優さんでも、王様役の伊武雅刀さんやおじいさん役のムロツヨシさんは全く違和感無く、キャラに合った演技で素晴らしかったと思います。
③ストーリー
映画において一番重要であるはずのストーリー、もとい脚本ですね。この映画はここが本当に酷かったです。とにかく説明的な台詞が多い。原作のゲームからそのまま文章をコピペしてきたんだろうかと思うほどです。ゲームと違ってアニメ映画は映像を使って説明できるのですから、ゲームと同じ文章を言わせたら絶対ダメなんです。
伏線の張り方も酷かった。
姫とユウが飛行船に乗って泉に行くシーン、唐突に現れた謎の巨大鳥に関する姫の説明台詞が不自然に挿入されます。あまりにも唐突で説明的なので「これラストに絶対出てくるな」というのが見え見えです。ラスボスとの最終決戦、何故か変身して空を飛ぶラスボス。私は「これは鳥出てくるな」と思ったら案の定鳥が助けに来ます。ゲーム未プレイなんで分かりませんが、多分ゲームだと熱い展開なんだろうなーと思いつつ、映画を観る私の心は冷え切っていました。
そして私が一番頭に来たのは映画のラストの終わり方。
ハルは一ノ国(元の世界)に戻り、ユウは二ノ国に残ります。ハルはユウにもう会えない寂しさを感じつつも、姫と仲良く元気でやっているだろうと心で独白する。それまでこの映画に感じていたイライラを帳消しにするくらい、センチメンタルを感じる良い展開です。このまま終わったら素晴らしい終わり方だったのですが、ラストシーンで「一方そのころ二ノ国では」と言わんばかりにユウの映像が挟み込まれて映画は終了します。
ハッキリ言ってラストのユウのシーンは完全に蛇足です。絶対に入れないほうが良かったし入れるべきではなかった。他にも突っ込み入れたいところは数多くありますが、挙げればキリが無いのでひとまず以上。
④予告編詐欺
予告編の「命を選べ」って何ですか。予告編だけ観て「片方の世界で命を救えばもう片方の世界では死ぬ。どちらの命を選ぶか親友で争う。めっちゃ熱い展開やん!」と喜び勇んで観に行ったけど、そんな展開一切なかったじゃないですか。これは詐欺ですよ。
面白かった部分や良かった部分も無いわけではないですが、それを遥かに上回る悪い部分が目に付いてしまう作品だったと感じます。