「そこまで酷い?」二ノ国 いちごさんの映画レビュー(感想・評価)
そこまで酷い?
観ました。
あんまり評価されていないようですが、そこまでかなぁと思いました。
音楽、とてもよかったです。メイン3人は確かに本職の方に比べれば劣りますが、集中できなくなるほどではなかったかと思います。(コ○ン映画のゲスト声優枠の演技なんかに私が慣れてしまったせいかもしれませんが笑)
鑑賞後、「あれ、あのキャラの出番あれだけ?」とか「あのシーンいらなかったかもなー」とか思うこともありましたが無駄ゼロな映画の方が珍しいので個人的にはそこまでの減点ポイントにはならず。
主人公たちの心情描写の少なさが理解や評価を得られない原因かなぁと思ったのですが、最後のシーンがあれば普通の人は大体理解できると思います。
ダンパなどのサブキャラや二ノ国の世界観(酒場のシーンとか飛行船?とか衣装•キャラクターデザインとか)なんかは割と好きでした。
ここからゴリゴリネタバレします。
良いと思う事も納得がいかなかったことも言います。
まだ観てない人は見ない方がいいです。
↓
視点がごちゃついてよく分からないという感想がいくつか見受けられたのですが(二ノ国と一ノ国の命の繋がりについてです)、最後のシーンでハルとユウは同一人物(という言い方が合っているかはわかりませんが)なのがわかったことでそれなりに解決されていると思います。
ユウは元々二ノ国の住人だったわけですから、二ノ国の存在や2つの世界で繋がりを持つもの同士が命を共有しているということへの理解が異常に早い事も納得が行きます。それに対しハルは二ノ国の存在すら知らなかったのですから、アーシャを救って戻ってきたらコトナが病に侵されているのを見て2人のどちらかが元気になるとどちらかが弱くなるという悪役側からの入れ知恵を信じ込んでも無理ないと思いました。(確かにどちらかが死なないと片割れが生きられないならそもそも命の繋がりうんぬんのくだりは成り立たないのですが、ハルは設定から見ても思慮深いキャラクターではなく割と行き当たりばったりに突進していくような人に見えたのでそこまで考えが至ってなくても無理ないなと。(現実の人間にも冷静に物を考えられない人はよく居ますし。)
そう思ってみると、そこまで2人の主張の食い違いについてわけわからなくなる事はないのではないかと思いました。お互いのキャラの背景を考えれば2人の考えている事は常時大体掴めます。(まぁそのネタバレがエンドロール後なんですけど)
ただ、ここで敢えて悪い点を挙げるなら、正直アーシャ姫の湖での踊りのシーンを入れるくらいならガバラスの描写をもっとしてよかったんじゃないかと、そこだけは腑に落ちませんでした。アーシャ姫とユウの恋(?)の生まれるところを描きたかったんでしょうが、そこまで感情が動くシーンにも見えませんでした。いくら高校生とはいえ湖で踊ってるところを見て綺麗だなー自分の好きな人に似てるなーと思った程度でその人のために命賭けて戦おうとは思いませんよね。もっと説得力のある恋の理由が欲しかったところです。何せその後アーシャを守るために戦争するわけですから。
その一方、ガバラスの描写が無さすぎること。この作品最大の悪役なのに、最初からやたら闘志に燃えていて、(家族ごと国を滅ぼされたこと(?)を根に持っていたようですが)ただのイキってる人に見えかねません。それならそこをもっと掘り下げても良かったのでは。ナレーションのみで淡々と背景を説明されても、国を滅ぼされるというのはリアリティに欠ける事象なのでイマイチ感情移入ができません。どんな成り立ちで、どんな生活を送っていた家族が、どのような過程や政争を経て殺されたのか、そこをもう少し細かく描写しないとガバラスの長年の復讐への執念に観客が着いていけません。津田健次郎さんの重い演技と背景描写の軽さが不釣り合いで、そこは違和感を感じざるを得ませんでした。
ファンタジーはただでさえ現実と離れているので感情移入が出来るようなストーリーが無いと"ただの空想染みた話"で終わってしまいます。私はハルとユウには感情移入出来たので、そこまで嫌には思いませんでしたが、悪役に感情移入出来ない点などが奇妙な感覚として残った人もいるのかもしれません。
悪役の背景描写の薄さに−1。