「大人も楽しめる子供の為の物語」映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
大人も楽しめる子供の為の物語
私は絵本が好き。子供用おもちゃが好き。子供向けアニメも好き。教育TVの子供向け番組も好き。
子供に戻った気分で、というよりは、絵本を読んでもらっている子供になった気分で、ワクワクと鑑賞してきた。という事はイノッチがお父さん(笑)
「むかしむかし、あるところに…」
「むかしってどれくらいー?」
「うーん、お父さんも◯◯ちゃんもまだ産まれる前かなぁ…」
一々口を挟む子供と、説明したり一緒に感想を言ったりしながらお話を読み進めるお父さん、といった具合に、イノッチのナレーションが物語をサポートしていく。
キャラクター達は喋らない。商品時同様、つぶやきのような手書きの一言が、時々頭上に添えられたりする。
普段はすみっこでのんびりしているのが好きなすみっコ達が、映画では事件に巻き込まれ、ドタバタドキドキの大冒険!…でも相変わらずのマイペース。
あの極度に簡略化された姿で、一生懸命短い手足をバタバタ、天目線口で泣いたり喜んだり焦ったり。どんどん表情豊かに見えてくるから不思議。ていうか可愛い。ものすごく可愛い。可愛いは正義。
やさしいー。あはは、へんなのー。がんばれー!えーやだよー。よかったねぇ!…と、子供になった私は、前のめり気味感情たっぷり、全力で楽しませて貰った。大満足です。
1時間という短い尺で、解りやすく、共感を得やすく、子供の心を養えるように、丁寧に作られた子供の為の物語。
けれど、良くできた子供向けコンテンツは、かつて子供であった大人の心も掴めるのだ。
子供に戻って。あるいは、横から子供の手元を覗き込むように。優しい気持ちで素直に楽しむのがお勧め。
…と、この後は全くの蛇足。
ネタバレ全開なので要注意。
大人の私が見たもうひとつの視点。
白紙のベージに描かれたひよこは物語を持たない。居場所も、性格設定も、過去も未来もなにもない。
それを思い出してしまった時の、ブレて消えかけている映像のようなひよこの姿。怖っ!
けれど、自分と同じだよ、一緒に暮らそうと、皆が受け入れてくれた。存在意義をくれた。
でも、異なる世界の存在を、すみっコ達の世界へは連れて行けなかった。絵本の白紙に、1人取り残されたひよこ。
皆はそのページに家を作った。花を咲かせた。仲間を描いた。まるで神が世界を創造するように。
仲間のひよこ達は、すみっコ達を模した姿をしている。多分性質も受け継ぐだろう。
共に暮らす約束は果たせなかったけれど、彼らを模した存在が、絵本の中で、ひとりぼっちだったひよこと共に生きるだろう。
…と読み解くと、昨今流行りのメタ物ファンタジー的に捉えられない事もない。
まあ、小賢しさは置いておいて、素直に受け取るのが正解と思いますけどね。