「久しぶりに泣ける純愛映画」窮鼠はチーズの夢を見る ksmさんの映画レビュー(感想・評価)
久しぶりに泣ける純愛映画
3回鑑賞しました。
成田凌さんの濡れてる目、纏ってる湿度、粘着質で嫉妬深くて…恭一のことが「どうしようもなく好きで好きで仕方がない」というのが伝わってくる。特に目線、口角、指先で。
恭一は人にも自分にも興味ないような死んでる目が印象的。でも今ヶ瀬と出会い変わっていく。この映画では幸せなシーンなんて本当に少なくて、その幸せなシーンですら長くは続かない儚いものとして表現されているような。観てるこちらもずっとしんどくて辛い。
夏生とのキャットファイトが最高。恭一がカールスバーグを頼んだ時の今ヶ瀬の嘲笑う感じがたまらない。そのあとの「お前を選ぶわけにはいかない」と言われ、頬杖つきながら「はい。」って。あの表情は観てるこちらが本当に辛くなる。そのあと2人が初めて結ばれるベッドシーンはとても美しい。2人が上手くいっている時間は短く、たまきが登場。今ヶ瀬が嫉妬しているのが伝わる。きっと引き止めてほしかったのに「あなたじゃダメだ。あなたにも俺じゃダメだし。」って言ってしまう。ここから海に向かう車の中で恭一が「今度は情の深いやつにしろ。お前を愛してくれるやつ。」それに対し今ヶ瀬が「あなたらしい考えだ。」と。絶望的に2人が分かり合えないのかなと思ってしまった。考え方の根本が2人には違う。交われるようで交れない2人。予告でも流れている「心底惚れるって〜…」というセリフは、予告で観てるだけだとそこまで話題になるセリフかなぁと思ったが、映画を見て、あのシーンで今ヶ瀬が言うから本当に伝わるものがある。あのセリフは素晴らしい。
結末については賛否があるみたいだが、毎回観るたびに解釈が変わる。1回目は恭一から「一緒に暮らそう」と言われて、涙が出るほど嬉しいはずなのに、恭一のことが大好きだからこそ恭一には女の人と結婚してほしいと思い身を引いたのかなと思った。2回目は今ヶ瀬もズルくて弱いところがあるから、恭一とこれから生きていくことが幸せで幸せで、でも終わってしまうのが怖くて、自分から逃げてしまったのかなぁと。3回目は今ヶ瀬の表情を集中して観ていたけど、どういう気持ちなのか分からなかった。
ラストシーンのスツールに座る恭一がとてもいい表情をしていて、部屋も明るく、これからの希望があるように感じた。
何回でも観たくなる映画。ぜひ映画館で観て、五感で感じてほしい映画です。