「全体的にやりすぎ感が強いね」窮鼠はチーズの夢を見る りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
全体的にやりすぎ感が強いね
一流企業で働く20代後半の大伴恭一(大倉忠義)。
ある日、会社のロビーに大学の後輩の今ヶ瀬渉(成田凌)が立っていた。
「いまは興信所で調査をやっているんですけど、調査対象が先輩なので、どう報告しようかと悩んでいて・・・」と恭一に告げる今ヶ瀬。
調査依頼主は恭一の妻、恭一が浮気しているかどうかの依頼だった。
調査報告書には恭一の浮気現場がバッチリが写っていた・・・
といったところから始まる物語で、その後、恭一の優柔不断で流されやすい性格や、大学時代の今ヶ瀬が恭一に一目ぼれしてその後も延々と思い続けていたことなどが描かれていきます。
腰の据わらない浮気性の男性に、惚れる粘着質の執念深い女性と構図は、昔からよく見られる恋愛ドロドロ劇の定番で、執念深い粘着質女性を、ゲイに置き換えたところが目新しいレベルで、同性愛の純愛ものという触れ込みだったのだけれども、ロビーに立っている今ヶ瀬の姿をとらえた初めのショットから、個人的には「ちょっと違う・・・」という感じがしました。
作り込みすぎた今ヶ瀬のキャラクターにドン引きしてしまい、なんだかゲイ版『危険な情事』を見せられた感が無きにしも非ず。
恭一の、腰が据わらず優柔不断で流されやすい性格は、相手も大切にする気持ちなど微塵もないが、自分自身を大切にする気持ちもさらさらない。
そんな彼が、今ヶ瀬に抱かれ(!)、去られた後に、新宿二丁目のゲイクラブを彷徨するシーンは、彼がはじめて自分の心を探ろうとしていることの表れであり、興味深かったです。
大倉忠義と成田凌の身体を張った生々しいラブシーンは見どころだけれども、もう少し隠した方が個人的にはよかったと思います。
ちょっとやりすぎ、ポルノ的に思えました。
高いスツールに鳥のようにうずくまる今ヶ瀬の姿は、アラン・パーカー監督『バーディ』を思い出しました。
また、今ヶ瀬が愛用する黄色い陶器の灰皿はシェル様形状ですが、女性器も連想させます。
棒状のタバコと併せて、そこいらあたりをどう読み解くか・・・結構、難問です。
興味深い内容ですが、全体的にやりすぎ感が強く、同じくやりすぎ感が強かった同監督の『世界の中心で、愛をさけぶ』と同じレベルの評価としておきます。