「人を好きで好きで好きで好きで(あと何回でも好きなだけ)恋い焦がれることは実はとても苦しくて切なくて辛い。でも、一生に一度でもそんな恋をすることは、実は人生においてとても幸せなことなんだよ、今ヶ瀬君。」窮鼠はチーズの夢を見る もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
人を好きで好きで好きで好きで(あと何回でも好きなだけ)恋い焦がれることは実はとても苦しくて切なくて辛い。でも、一生に一度でもそんな恋をすることは、実は人生においてとても幸せなことなんだよ、今ヶ瀬君。
①成田凌が巧い。眼だけでどうしようもなく好きな想いを余すところなく表現している。私も同じような恋に身を焦がしたことがあるので誠に共感(今ヶ瀬のように告れなかったけど。そういう意味では性格的には大伴に近いのかも)。成田凌に戻ります。あれだけしつこく付きまとっても嫌らしさを感じさせない個性も宜しい。これは演技というより最早持ち味であろう。②人を恋することについて含蓄のある台詞が多い。今ヶ瀬の『見た目が良くて中身も立派で自分を幸せにしてくれそうだから好きに成るんじゃないんだよ!』、そう”fall in love”とは良く言ったもので、「恋は落ちる」もの。足算や引算や掛け算で人を恋したりはしない(逆に言えばそんなものは恋ではない)。知らぬ間に好きになっている。そして一度真剣に恋に落ちてしまうと、相手に冷たくされても、相手がどんな人間か分かってきても、もう恋心は止まらない。相手が異性であろうが同性であろうが。③たまきの『人をあまりにも好きになると自分の形を保てなくなる。』これもよく分かる台詞。アガサ・クリスティの「ナイルに死す」にもよく似た台詞があるが、果たして今度の映画化はそこをどう描けているか。78年度版はミア・ファローの名演も相まってちゃんと描かれていたけど。おっと閑話休題。④成田凌扮する今ヶ瀬が攻めの役であるなら、大伴演じる大倉忠義は受けの演技になるが、こちらの人物造形がもうひとつ物足りない。今ヶ瀬が言うように『緩い男。自分からは動かなくて相手の出方を見てそれに乗っかるような…(最初の妻には「そういうとこキモい」と言われてたし)』という感じは何となく出ているが、今ヶ瀬がどんなに恋い焦がれても結局それに応えられない(それはそれで仕方ない話)男であることをもっとくっきり造形出来ていたらと思う。そこが不満なので減点。まあ、ラスト、ノー天気で今ヶ瀬のこと待ってる姿は、どこまでも自己チューな男が良く出ていたかも知れないけど。⑤どこまでも平行線な二人の関係。『好きだったなあ』と海に向かって“過去”形て叫ぶ今ヶ瀬の想い、それでも止まらない恋心に泣くラストの成田凌が切ない。