劇場公開日 2021年10月15日

「密度の濃い大作だが、尺が足りん!」燃えよ剣 N Tさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5密度の濃い大作だが、尺が足りん!

2021年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 原作は未読。特に歴史・幕末好きというわけでもありませんが、邦画アクション大作として、予告編から楽しみにしていた作品です。

 剣術、すなわちアクションシーンは素晴らしいの一言。岡田准一や鈴木亮平、伊藤英明といったしっかり体が鍛えられた出演者だからこその動きは、観ていてリアリティと安心感があります。同じ時代劇で比べると、るろうに剣心よりも「現実的」でありながら、山田洋二よりも「派手」なちょうどいい具合のアクションに仕上がっていると思います(剣心も山田洋二もどちらも好きです)。
 銃社会ではなく平和ボケした日本において、邦画での銃撃戦をメインとしたアクションは、どこか間抜けに見えるというか、嘘っぽさが目立ってしまいがちですが、時代劇+剣劇であれば違和感のないアクション映画が作れるというお手本のような作品です。最後まで緊張感を持って楽しむことができました。

 ただ、ストーリーに関しては少し残念な点も。まず、展開が早くて詰め込みすぎです。新選組の結党から終焉までを、主人公(土方歳三)の視点で描いていくわけですが、2時間半に収めるにはさすがに無理があったようで、すべての出来事がダイジェストのようにドンドン進んでいきます。新選組にまつわる有名な事件は一通り描かれますが、すべてが短く、余韻がない。ゆえに心理描写も薄い。また、登場人物が多いのに複雑な歴史背景や人物相関も説明されないので、どれが誰で何をしているのか、集中していないと理解できずに置いてきぼりにされます。幕末の歴史に詳しい人であれば、自分で補完しながら楽しめるでしょうが、そうでなければ「新選組って結局何がしたかったの?」となります。無理に詰め込むくらいなら、特に有名な事件(池田屋事件とか)だけにスポットをあてるとか、要所要所にナレーションで解説を入れるとかしてもよかったのではないでしょうか。

N T