「鼻血と涙に注意」燃えよ剣 Dポッターさんの映画レビュー(感想・評価)
鼻血と涙に注意
元より新撰組の話が好きですが、司馬遼太郎のこの作品はやはり別格ですね。
観終わった直後で興奮と喪失感でバグった文書になっていると思いますがお許し下さい。
理想の士道に生き、鬼の副長を務め、仲間も隊則に従わなければ容赦なく斬り、暗殺を命じて涙も見せず。時代の変わり目に仕えた主君に裏切られ、次々に散り散りになっていく中で一時の愛を育む。
土方歳三(岡田准一)が愛刀を磨いて、その波紋を見つめる視線だけで男ですが鼻血が出そうな色気。
お雪(柴咲コウ)を抱き寄せ触れようとする呼吸も、触れようとする不器用な手も、返そうとする時計を握らせて放させない仕草も愛しさで溢れています。
夜這いしかけて遊びまくっていた男が、一人の女性にこんなにも不器用な姿に燃え(萌え)ますね。
そして沖田総司の一途な愛と、病で闘って死ねない無念さと、見舞う土方が彼の前では鎧を文字通り脱いで寝転ぶ姿。
近藤勇との信頼感と離れていく距離、沖田総司との戯れ合いの可愛さも格好良すぎて余韻だけでご飯三杯はいけそうです。
司馬遼太郎の新撰組が今日の新撰組ののイメージを作った、逆賊だった土方歳三をヒーローにしたというのもうなづけます。格好良すぎて油断していると涎が出そうです。
男の滅びの美学と言えば確かにそうなのですが、隊士たちに関わった女性たちの会話やそれを見護る眼差し。心配して黙っていられないお雪の心の動き。
お雪が愛しくて可愛くて、抱き合って呼び合うシーンの柴咲コウさんも最高で、最後に駆け寄る姿の近づきたいのに近づきたくない悲哀が傑作のフィナーレに相応しいと思います。
視聴習慣の変化もあり、隊士一人一人に十分なスポットが当てられないのも含めて、主人公土方歳三を浮き彫りにするための演出がより切なさを際立たせます。
血飛沫、激しい殺陣とカメラワークと夜襲を含めた暗いシーンが苦手な方以外は是非観て欲しいです。
日本で今、これだけの殺陣が出来る役者が何人いるかな。芸術でした。