劇場公開日 2021年10月15日

「作りこみは良いが、残念感漂う・・」燃えよ剣 根本浩一郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0作りこみは良いが、残念感漂う・・

2021年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

 京都在住にて、池田屋事件首謀として知られる土方歳三に興味を持ち、数年ぶりに映画館に足を運びました。かなり期待外れという印象です。
①新選組という組織の主張が少ない。
 いわゆるチャンバラ集団の域を出ていない。フィクションでも良いから、新しい日本を作りたいというパッションを期待していたが期待外れ。隊長である近藤勇のメッセージが伝わらない。
②近藤勇死亡のあとの土方歳三の立ち位置
 近藤勇は土方歳三に最後の言葉として「新選組は君に頼む」を告げた。であれば、土方歳三は副長でなく隊長に就任し勢いを失った新選組を立て直すべき。最後まで副長の立ち位置に甘んじたのは残念(これは史実だから仕方がないが)
③池田屋事件の場面が長すぎ
 京都市をアピールするためには良いかもしれないが、池田屋事件の場面だけが誇張されている印象あり。歴史的には、鳥羽伏見の戦いや五稜郭の戦いを含む戊辰戦争の方が重要だと思う。最後に蝦夷地函館を目指した土方歳三の心意気や、彼を慕って最後までついていったお雪の気持ちを描いてほしかった。あの当時、船に乗って東北から蝦夷に向かうことすら冒険に近かったと察する。
④土方歳三とお雪
 「肉食系」土方歳三はとお雪の関係がプラトニック過ぎる印象がある。お雪に対して、愛を語るにしても将来の日本を語るにしてももっと雄弁に語って欲しかった。
⑤ナレーションについて
 どういうわけか、軍服を着た土方歳三が解説者のようにこの映画を語っている。歴史的背景を知るにはナレーターの存在は良いと思うが、もっと別の人物に委ねるべき。
⑥武装スタイル
 池田屋事件では日本刀が武器であったが、五稜郭の戦いでは銃が主体となっていた。ここが近代日本史上興味深いところだろう。途中で新選組も西洋式の武術を習得する必要があったと思われるがその描写が不十分。また、戦う相手=新政府軍はどのようにして西洋式の武術を習得していたのか。ここを伝えれば、土方の死も残念ながら偶然でなく必然だったと観客は納得するであろう。
⑦沖田総司について
 諸説あるが、この映画では沖田は当時不治の病であった肺結核に罹患していたという設定になっている。それは良しとするが、沖田の存在が新選組や土方にとってどうだったのかが伝わらない。(戦う集団としては、足を引っ張っていただけという印象)
 最後に良い場面:
 後半、土方歳三がお雪に「あなたを危険な場面に巻き込みたくない」と言ったところ、お雪は「もう十分に巻き込まれています」と目を潤ませながら応えた。この場面は素晴らしい。この場面だけで★4つにしました。。
 私も、早くお雪のような女性と結ばれたいです。

根本浩一郎