「知れば迷い 知らねば迷わぬ 映画道。 新撰組の魅力は伝わるが、やはりダイジェスト感は否めず。」燃えよ剣 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
知れば迷い 知らねば迷わぬ 映画道。 新撰組の魅力は伝わるが、やはりダイジェスト感は否めず。
新撰組「鬼の副長」、土方歳三の生涯を描いた時代劇。
監督/脚本は『ラスト・サムライ』(出演)、『検察側の罪人』の原田眞人。
主人公、土方歳三を演じるのは『コクリコ坂から』『永遠の0』の岡田准一。なお土方関連の殺陣は、岡田自らが監修している。
土方の運命の女、お雪を演じるのは『ガリレオ』シリーズや『名探偵コナン』シリーズの柴咲コウ。
新撰組局長、近藤勇を演じるのは『ホットロード』『海街diary』の鈴木亮平。
新撰組一番隊組長、沖田総司を演じるのは『暗殺教室』シリーズや『グラスホッパー』の山田涼介。
徳川第15代目将軍、徳川慶喜を演じるのは『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『万引き家族』の山田裕貴。
「人斬り以蔵」と呼ばれる土佐藩士、岡田以蔵を演じるのは『ディストラクション・ベイビーズ』『犬ヶ島』の村上虹郎。
新撰組三番隊組長、斎藤一を演じるのはテレビドラマ『東京タラレバ娘2020』『最愛』の松下洸平。
新撰組隊士、中島登を演じるのは『さくらん』『ゴールデンスランバー』の渋川清彦。
小道具屋丸十の店主を演じるのは『シン・ゴジラ』『万引き家族』の、レジェンド俳優・柄本明。
新撰組初代局長、芹沢鴨を演じるのは『悪の教典』『22年目の告白』の伊藤英明。
原作は皆さんご存知、司馬遼太郎の同名小説。これまでに何度となく映像化されている作品である。
私の「燃えよ剣」リテラシーとしては、10年以上前に原作小説を読んだことがある、という程度。本作以外の映像化作品は未鑑賞です。
原作の「燃えよ剣」は正直うろ覚え…というか、ほぼ覚えていないんだけど、実はちょっぴり新撰組ファンだったりします😆
と、いうのも自分が中2の時に放送していた大河ドラマ『新撰組!』(2004)。これがめちゃくちゃ流行っていた!男のみならず、同級生の女生徒もこれを観てキャッキャキャッキャ言ってましたから、男女関係なく人気があった…というかむしろ女の子の方に受けていたような気もする。
中2の時に触れたカルチャーがその人の一生を形作る、という説がありますが、自分も完全に新撰組に惚れた❤️というか、山本耕史演じる土方歳三に惚れた💕
そこから幕末時代に興味を持ち「幕末最強剣士は誰だ!?」みたいな本も読んだりして、「山岡鉄舟強え!伊庭八カッケェー!」みたいなことをずっと言っていた。
大学時代には、池田屋の跡地を見に行ったり、壬生屯所旧跡八木邸を見に行ったりしましたねぇ。八木邸は、ガイドさんに案内してもらいながら建物の中を見学できるので結構楽しい。芹沢鴨の付けた刀傷が残る梁なんかもあって、「おお、ここに刀を引っ掛けてしまって、そのスキを総司に切られたんやな!ドラマで観たわ!」とか思いながら観光してました✨
さらに、函館に行った時にはちょっと足を伸ばして、「碧血碑」という旧幕府軍の戦死者を祀った石碑を見たりもしました。ここはすごく山奥で、夏場に行くと蚊に血を吸い尽くされそうになるので注意🦟
とまぁ、なんだかんだで一時はどハマりしていた新撰組。
自分より上の世代なら「風光る」や「るろ剣」、下の世代なら「銀魂」や「薄桜鬼」「ゴールデンカムイ」「新撰組異聞PEACE MAKER」など。漫画やアニメ、ゲームという媒体を使い、若い世代にも確実にファンを増やし続ける化け物コンテンツこそが新撰組である。
土方さん、世が世ならIPビジネスで大金持ちになっていたよアンタッ!
そこからこの映画の弱点がみえる。
今や新撰組には、近藤、土方、沖田以外にも、永倉新八や斉藤一、原田左之助、藤堂平助、山崎丞、源さん、サンナンさん…など、メインの隊士たちにはみなそれぞれ固有のファンが付いているのです。ちなみに自分は超甘党の島田魁推し。
原作「燃えよ剣」でも、近藤・土方・沖田以外の隊士はほとんどモブのような扱いだったような気がする。ただ、「燃えよ剣」の原作が発表されたのは1962年。「鞍馬天狗」での扱いを見ればわかるように、やはり当時の新撰組は悪役というイメージであり、主要3人以外の個々の隊士までフィーチャーされ、人気が出る時代が来るとは、司馬遼太郎も思っていなかったことだろう。
だから、やっぱり今現在新撰組をメインに据えて物語を描くのならば、原作から一歩発展させて、少なくとも組長クラスのキャラクターは存在感を出して描かないと、ファンは納得出来ないでしょう。
藤堂平助の、試衛館時代の仲間につくのか、伊藤先生の側につくのか、という葛藤は描いて欲しかった…。左之助の宝蔵院流槍術も見たかったし、新八と近藤の別れや山南さんの脱走に至るまでの心の機微、酒を呑んでいない時は穏やかだったという芹沢鴨の姿など、あぁ色々見たかった…。
とまぁ、上記したことは半ばわがまま。
土方歳三に着目して、一本の物語をキッチリ描き切る、というスタンス自体は良いと思う。
ただ、やはり一人の男の人生を、立身出世からその死に至るまでを描くというのは、TVドラマならまだしも一本の映画としては欲張りすぎ。せめて前後編の2本立てにしないと、土方歳三の一生を描くのは無理でしょう😅
150分という長尺でありながら、なんか忙しなくて物語の流れが掴みにくい作品だったなぁ、という印象。「池田屋事件」のみに着目して、そこを徹底的に掘り下げる、とかでも充分映画になったんじゃないかな?
ただでさえこなさなければならないイベントが多いのに、岡田以蔵とのチャンバラという唐突なドリームマッチが描かれる。そんなことをしている暇があるのなら七里研之助とのライバル関係を、もっと丹念に描いて欲しかった。これじゃあ七里がただのモブだよ…。
不満点ばかり書いてしまったけど、基本的には楽しめました。
とても良かった点は山田涼介の沖田総司感✨繊細さと優しさ、そしてそこから滲み出る残酷さ。これはもう文句なし!歴代最高の沖田総司だったんじゃないですか?
何より本作が素晴らしかったのは、新撰組をヒーローとして描かなかったところ!
必要な時は後ろから斬りかかる、作戦のためなら女が巻き添えになっても構わない、非道な拷問も平気で行う、丸腰だろうと容赦なく斬殺する。
芹沢鴨の暗殺も、池田屋での斬り合いも、全く爽快感はなく、ただただ血みどろの地獄絵図として描かれている。
なんたって新撰組は、嘘か誠か戦死した隊士より粛清された隊士の方が人数が多い、と言われるほどの狂人軍団。内ゲバばっかりやっている連合赤軍みたいな人たちなわけで、それをヒーローとして描いてしまうと魅力が半減。
独自の武士道を貫き通した、どこまでも真っ直ぐで時代遅れな無用の長物。その儚さこそが新撰組の魅力。
そこがキチンと描かれていたので、それだけでこの作品に満足満足😋
池田屋事件の前、まるで文化祭の準備でもしているかのような隊士たちの浮かれっぷりも何処となく可笑しく可愛らしい。全体的に、男所帯の独特の空気感みたいなものがよく描かれていたように思う。
全く新撰組のことを知らず、ただ岡田准一や山田涼介のファンだというだけで本作を鑑賞した人は、ストーリーが全く理解出来なかったのではないだろうか?と思うほどのダイジェスト感は確かにある。
「刃牙」か貴様ッッ!と突っ込みたくなる、土方歳三のインタビューという形式で展開されるストーリーはちょっと強引だとも思う。
でも、やっぱり新撰組は良い。新撰組をしっかりと描いているというだけで個人的には満足。万人にオススメは出来ないが、少なくとも新撰組ファンなら一見の価値ありじゃないっすかね?
はじめまして。たなかなかなかさん。
みかずきです。
私のレビューに多くの共感ありがとうございます。
フォローありがとうございます。
こちらのサイトのは先月登録したばかりです。
宜しくお願いします。
さて、本作、仰る様に、新選組の生々しい実像に迫った作品でした。
一般に知られている、討幕派に恐れられた強い新選組ではなく、
ドロドロした内部抗争が主に描かれていました。
新選組を美化していなかったのは時代劇ファンとしては納得できました。
土方歳三役の岡田准一は、近年、時代劇出演が多いですが、
頑固に信念を貫き通す役柄が似合います。
製作本数が少ない時代劇のスターになって欲しいです。
蛇足になりますが、私も数年前に京都旅行した際に、
池田屋と坂本龍馬の墓参りに行きました。
では、また共感作で交流しましょう。
-以上-