劇場公開日 2021年10月15日

「激動の時代に燃えて散る、滅びの美学の体現者たち」燃えよ剣 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0激動の時代に燃えて散る、滅びの美学の体現者たち

2021年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

「日本のいちばん長い日」(2015)、「関ヶ原」(2017)そして本作と、近年は壮大で重厚な歴史群像劇が続いている原田眞人監督。おそらくは時間が短くて軽いものが好まれる視聴習慣の変化もあり、映画でもテレビドラマでも時代劇が斜陽化しつつあるのは仕方ないのだろうが、先達が築き継承してきた時代劇の伝統を終わらせてなるものか、といった覚悟や使命感が原田監督作から伝わってくる。

岡田准一は「関ヶ原」の石田三成役に続き、「燃えよ剣」では幕末の新選組副長・土方歳三役と、いずれもかつては体制側に身を置きながら大きな政変の時期に新勢力に打ち負かされる、滅びの美学を体現するような武人を演じた。身体能力の高さを活かした殺陣のパフォーマンスは本格の味わいで、共演の鈴木亮平、山田涼介、松下洸平、伊藤英明らも気迫のこもった演技で応え、剣に生き激しく燃えて散っていった男たちの姿を描いている。

大長編の小説の映画化ゆえ、展開があわただしいダイジェスト的な作りになったのは仕方ない面もある。幕末維新の頃を描く過去作を通じてこの時代の予備知識があればある程度補えるが、そうでなくても、鑑賞後に興味を持って原作を読んだり、当時の歴史を調べたりするのもありだろう。

原作小説にあった「男色」の要素が排除されたのも、幅広い層の観客を動員するためには妥当な判断だった(ジャニーズ所属だと同性愛はタブーなのかと思って調べたら、東山紀之がゲイ役の舞台劇に出演していたので、そんなことはないようだ)。新選組と男色のつながりに興味があれば、同じく司馬遼太郎の小説を大島渚監督が映画化した「御法度」(1999)と見比べるのも一興だろう。

高森 郁哉
まりんさんのコメント
2021年11月4日

原作を読んだことがなく、歴史的にも断続的な部分は理解しているものの、流れとして理解できていないので、登場人物と相関図を理解するのはまあまあ大変でした(笑)パンフを買ったのでそこはおさらいするとして…。しっかりはまって最後まで惹き付けられました。それぞれの役者さんがそれぞれの人物にしか見えなくなっていました。戦はやっぱりだれも幸せにしないんだよなと思いながらも、そこにいろいろな思いや思惑を馳せながら生きていった当時の人たちの思いを感じながらラストシーンを見ていました。

まりん