劇場公開日 2021年10月15日

「碧血ってなんですか?」燃えよ剣 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0碧血ってなんですか?

2021年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロケ地がすごい。長谷寺(たぶん)や吉備津彦神社(たぶん)で存分に雰囲気をつくっている。成羽の吹屋地区(たぶん)なんて、あれは道に土を敷き詰めたのか?ってくらいに現場を作りこんである(たぶん)。セットもすごい。これ、オープンセットで全部作ったんだな、って感心しながらスクリーン眺めてた。衣装もポリが混じってないような上質感。もう、大道具小道具の美術を見てるだけで飽きなかった。

ただね、やっぱ、ええ?そこまでいじるのはどうよ?ってことが、気分を冷めさせるんだわ。
原作に倣ってお雪を登場するのはいいにしても、絵を描きたい?はぁ?その西洋チックな画法いつ習った?って白ける。
クレジットで見つけたけど、殺陣指導が今回も岡田准一。迫力重視はいいけど、天然理心流ってあんな太刀筋だった?突きはどうした?
後半、畳みかけるように駆け足の展開に、誰が誰やら幕末知らずの人たちはおいて行かれるのだろうと危惧もする。
多摩のロケ地が、武蔵野平野を再現できずに山中っていうのも、どうもなあ。
で、最後に土方最後の描き方だ。あれはないな、あれは。あんな突撃してねえし、土方の死に方は・・・ま、いいか。

キャストでいえば、ウーマン村本はよかった(個人的に山崎丞はもっと寡黙だったイメージがあるが)。あれはあれで監察方らしさがあった。フラグのように水葬にも触れてたし。
なにより、尾上右近が抜群だった。藩祖保科正之の遺訓を堅守する会津藩主容保らしさがみなぎっていた。表舞台に引っ張り出され、損な役回りを甘受し、朝敵の汚名に屈し、孝明帝の宸翰を唯一の拠り所として余生を送った不遇の人を、体現していた。

見どころと不満が相半ばする映画、評価は、中庸というよりも相殺。

栗太郎