「咲きほこる花は、 散るからこそに美しい」燃えよ剣 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
咲きほこる花は、 散るからこそに美しい
燃えよ剣
司馬遼太郎により1964年に刊行された歴史小説
幕末に存在した新撰組の副長・土方歳三を
政治背景に左右されぬ喧嘩そのものが目標
「喧嘩師」と捉えバラガキと呼ばれた年少期から
五稜郭で戦死するまでを描いた
新選組は維新以降単なる人斬り集団として
貶められることも多かったが
近代に再評価の機運が生まれ
司馬による本作や短編「新選組血風録」によって作られた
イメージの影響を現在では色濃く受けている
今作は前作「関ヶ原」でタッグを組んだ
原田眞人監督と主演岡田准一の再結成による
時代を戦国末期から幕末に映した感じの作品
感想としては
元々長編小説で大河ドラマ等でじっくり
扱われてきた題材を2時間半にまとめた
だけあって端折り感があったものの
ディティールは相変わらず高く
新撰組の置かれた理不尽な境遇を
客に伝えるには効果的に思ったし
テンポ重視で海外公開にも向いてる
気がしました
土方歳三ら新撰組の中心人物近藤勇や沖田総司は
いわば青雲の志を持った会津のヤンキーであり
長州藩が倒幕で帝を担ごうとしていた京都で
会津藩が京都守護職の関係で発足した浪士組による
討伐隊に参加し「新撰組」を名乗り
自身らの出世と士道を軸にした世の実現を
目指したのでした
土方の「天然理心流」はケンカ殺法然とした
荒々しい流派を岡田准一が自ら徹底して表現
している部分は見ごたえがありましたし
京都へ向かう際にふさわしい業物を求めて
家族に100両借りて和泉守兼定を手にするシーンは
なんかドラクエみたいで面白かったです
さてこの幕末時代政治思想が非常に入り組んでおり
尊王と攘夷を右翼と左翼のような対極にとらえる
もんじゃなく
帝に政治を委託された幕府が帝を守るのは当然
なのに倒幕をもくろむ長州藩が帝を担ぎ
加担する貴族までいるぐちゃぐちゃさ
最も名を汚す朝敵になりようがない幕府側が
なんとかしないと自分たちが朝敵にされる
可能性に行動しないといけない必然性が
あったわけです
その辺の流れ的な部分が
長編ドラマとかだとなかなか動き出しが
つかみにくいとこあると思いますが
長編ドラマ苦手な自分みたいな人間
にはしっくり来ると思います
結局ただの喧嘩屋だった土方が
一番純粋かつ柔軟性を持ち合わせた
次の時代に対応できる人だったのかも
しれないと思わせるものが
ありました
ビジュアルも姫路城や仁和寺
将軍の間なんかは関ヶ原でも使っていた
同じロケセットだったと思います
(それだけに関ヶ原の幕末バージョンに
見えちゃううとこありましたが)
全体的に特徴的なカットを意識して
外国ウケも良さそうな気がしました
たびたびリメイク受ける題材だけに
こういう部分は重要でしょう
キャストも岡田准一は言うまでも無く
鈴木亮平のお人好し感丸出しな近藤勇
沖田総司の皮肉屋で理解者な感じを山田涼介
葛藤の塊になった一橋慶喜の感じ山田裕貴が
巧みに演じており
SNSで炎上してるときしか見ない村本大輔が
どう見ても優秀だった山崎烝を演じているのも
ギャップで面白かったです
あと最近売り出し中の村上虹郎
直近でるろ剣で沖田やってましたが
今回は岡田以蔵でしたがやっぱり存在感
出してきます
詰め込み感はたしかにあり
人物間の関係性を掘り下げ切れてない
感じはありますが
エンタメ性も高く観にいっておいて損はない
作品だと思います