劇場公開日 2021年10月15日

「「人でなし」慶喜」燃えよ剣 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「人でなし」慶喜

2021年10月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

司馬の短編「王城の護衛者」を思い出させるシーンがあった。
会津は維新後にも影響するほどの、とてつもない貧乏くじを引かされた。
実際の容保も、あんな誠実過ぎる武家貴族だったのだろう。尾上右近の演技がはまっていた。
新撰組もそうだけど、外様の中途参加の方が、プロパーよりも組織に尽力するという。それを感じさせる脚本の妙は評価されていい。

「人でなし」慶喜は司馬史観に忠実。ただ、「青天を衝け」を観ていると、違和感があるかも。
前作の「関ヶ原」同様、近時の歴史認識に照らして、司馬作品の映画化には古さを感じさせるおそれがある。作品の面白さはよく分かっている一方で、やはり史実は気になってしまう。

岡田准一と柴咲コウの主演は、まさに正統派美男美女の取り合わせ。華やかな映画スターを大画面で見られて幸せだった。
戦場も様々なヴァリエーションで描かれており、黒ずくめの新制服や古寺を上手く使った背景美術など、萌えるのに必要なディテールが十分に担保されていた。

幕末史の素養があれば、上記を楽しみつつ色々想うところも出てきて、退屈はしないのだろう。他方、わかりやすい面白さがある作品ではないので、評価は別れるとも思う。
今後発表される興業収入が気になる。

おかずはるさめ