「声にして やっと弾けた 夏の恋」サイダーのように言葉が湧き上がる myuさんの映画レビュー(感想・評価)
声にして やっと弾けた 夏の恋
レコードが割れた時に思わず「はっ…」と声が出た。
何日間もかけてみんなで探した物を壊してしまった時の気持ち、とてもよくわかる。
浮ついた気持ちでついつい考え無しに行動してしまうこともよくある。
一生懸命レコードの破片を接着剤でくっつけようとしても、全然くっつかないシーンでは思わず泣けてきた。
そこからの展開はかなりギュッと濃縮されていた。
デイサービスの時計がレコードだったのはやられた。
珍しい時計だなとは思ってたけど、まさかそんな謎とき要素があったとは!
チェリーが何度か引越しの件を伝えようとしたのに遮られてしまったのも不憫で不憫で…
頭の中でなら言葉が湧き上がるのに、口に出そうとすると何も出てこないもどかしさに共感した。
最後のシーン、藤山のおじいちゃんからバトンを引き継いでチェリーが俳句を叫ぶシーンでもなぜだか涙が流れた。
その場で言葉にすることは難しくても、歌や俳句のようにすでに在るものなら勇気さえあれば言うことができる。
溜めに溜めていた想いが爆発する感じが最高だった。
この映画を見始めて最初に驚いたのは、色使いやトーン、灯りを星で表現していたりするユニークさだ。
オシャレであると同時に、蛍光色メインで目がチカチカする感じだったので最初は戸惑ったが、いつの間にか見慣れてその世界観に入り込んでいたから不思議だ。
他にない雰囲気がとても良かった。
レビューの星を少なめにした理由のひとつは、間延びしてる空白が多くてテンポが悪く感じたことだ。
特に大きな事件が起きるわけではないので、もっと音楽を印象的なものにしたり、それぞれの内面的な描写が多くてもよかったのかもしれない。
もうひとつの理由は、少し設定に無理があるところが多いこと。
スマイルは小さい頃から配信をしていて大人気ライバーなのであれば、ひとりで外から生配信は危険すぎるのでは?
きっと大忙しのはずなのにデイサービスでバイト始めるのも、レコード探しにあんなに時間を費やせるのも不自然な気がした。
あんなに人気者なのに、出っ歯が嫌になった理由もよく分からなかった。
あとはレコードを探すシーン、初めからジャケットには「藤山さくら」って名前書いてあった気がするんだけど…
名前が分かっただけで大ニュース!みたいになったのが違和感。
娘さんが、資料館に飾ってあるほどのお母さんのことを全然知らないのも違和感。
チェリーがぎっくり腰のお母さんの代わりにバイトしてたのも違和感。デイサービスのバイトってそんな簡単なんか…?
あと引っ越す理由はなんだ?
あのビーバーって男の子は何者?
色々と違和感はあったが、それらを流してさらっと観てたから入り込めたんだと思う。