「どこの世界でも、朝は訪れる」閉鎖病棟 それぞれの朝 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
どこの世界でも、朝は訪れる
こぼれた涙を蒸発させる為に 日が照る朝を
飽きもせず こりもせず 待っている 待っている
全部が報われる朝を
心を失くすのに値した その喪失は
喜びと悲しみは 引き換えじゃなかったはずだ
希望なんて いとも容易く投げ捨てる事はできる
心さえ 心さえ 心さえ なかったなら
アスファルトより“土” 鋼鉄より“人肌”
無意識に選ぶのが 冷たさより温みなら
その汚れた顔こそ 命にふさわしい
amazarashi / 命にふさわしい より並替えて抜粋
世界から拒絶された疎外感
世界から隔離された劣等感
この感傷がさらに
患者ではなく“病人”と特定されたヒトたちを
精神的に追い込む。
そしてやましさもなく迫害した群衆は安心する。
病人ではないのだから、病人とは違うのだから、と。
“アレ”な患者がいる病院なんて
はっきり言って一歩も足を踏み入れたくない。
そんな患者がいること自体、忘れてしまいたい。
わたし自身もそんな嫌悪感を抱いている
群衆のひとりでした。
その嫌悪感が大きく膨れあがり
罪悪感となってわたしに返ってきました。
初めてです。
映画を観て吐き気とめまいに襲われたは…
そんなわたしにとっては
『ジョーカー』より『岬の兄妹』より
本作『閉鎖病棟 - それぞれの朝 - 』の方が
よっぽど「本気でヤバい」レベルの作品でした…
患者の振る舞う日常の描写を観ているだけで
こころが寒々する…
加えて女性に暴行するシーン、
それも同じ女性が別の男から2回も…
「もう、退席してしまいたい」と思いながらも
罪悪感に対する自責の念と言いましょうか
せめての罪滅ぼしのつもりで
目をそむけずに、直視しなければいけない。
という使命感を強く感じ
なんとか最後まで見届けることが出来ました。
そして気づく。ああ、映画だったのだと。
フィクションで良かったと。
そう安心した一方で、もう知ってしまった。
差別意識が、こんなにも強い意識が、
ノンフィクションの部分で
わたしにもあったということに。
そんな、自分に、嫌気がした…
閉鎖され世界、隔離された施設が
なにも病院や刑務所とは限らない。
世界には目には見えない境界がある。
壁がある。内に閉じたこころがある。
でもこの世界に、各々のこころに
さらにいくつもの空があるように
それぞれの空に、日が照る朝が必ずくる。
その朝日が放つ熱が、
他者から受けた愛情の温みとおなじように
【立ち上がる勇気を与えてくれる】
そんな気持ちにさせてくれる作品。
鶴瓶師匠!さすがです!
綾野剛さんは近作『楽園』での役柄に近いところもあり
本作のさらに内面を掘り下げている作劇も相まって、
演技の良さが光ってみえました♪
今回の小松菜奈さんは辛い役どころでしたが
彼女が持つはかなさと、凛とした強さのイメージを
うまくキャスティングしたな!
よく菜奈さんも受けてくれたな!と思いました。
本作における完全な悪役・渋川清彦さん。
最低な役まわりでしたが、つまりは最高な演技でした!