「真面目に作られているが、証文の出し遅れ感もあり」閉鎖病棟 それぞれの朝 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
真面目に作られているが、証文の出し遅れ感もあり
妻と母親とを殺して死刑を宣告された梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。
が死刑執行の際に生き延びた彼はその後精神病院をたらい回しにされて生き延びていた。
現在彼が暮らすのは長野県の六王寺病院。
そこには、幻聴に悩まされて自主入院をした塚本中弥(綾野剛)もいた。
ある日、母親に連れられ18歳の少女・由紀(小松菜奈)がやって来るが、彼女は義父に性的虐待を受けて、心を病んでいたのだった・・・
といったところから始まる物語で、帚木蓬生小説『閉鎖病棟』を監督も務める平山秀幸が巧みに脚本化している。
演出も至極真っ当で、行儀がいい。
過剰な音楽などもなく、役者の演技を最大限に引き出している。
が、映画としてはそれほど面白くない。
1994年に出版された小説の内容が、現代となっては、やはり少々古臭くなっているような感じ。
いまどき、こんな「閉鎖病棟?」と思ってしまうし、患者の状態に合わせて、もっと区分けして対応しているんじゃないかしらんとも思う。
話としては悪くない。
主人公3人の心情もよくわかる。
が、最大の欠点は、死刑執行で生き延びた設定が活かされているとは言い難い点。
別に、そんな過去なくても十分じゃないかしらん、な感じがしました。
で、原作小説、読んだかしらん・・・? と気になっていたので、調べてみると、ありゃま、この小説、以前に映画化されている。
『いのちの海』というタイトルで、2001年に公開されている。
たしか、舞台挨拶付きの初日に銀座シネパトスで観たような。
そのとき、難しい原作を巧みに映画化したなぁ、とも思ったものです。
ついでながら、当時のキャストを並べると、秀丸=中村嘉葎雄、塚本中弥=頭師佳孝、由紀=上良早紀(新人)といいうもの。
集客力弱し・・・ですが、由紀の設定は原作に近い中学生ぐらいだったように思います。