マローボーン家の掟のレビュー・感想・評価
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初監督作だが、映像に風格あり
スペイン出身の映像作家によるホラー作品は、怖さの中にもどこか哀愁を感じさせるのが一つの傾向か。J・A・バヨナ監督作「永遠のこどもたち」の脚本を書いた、セルヒオ・G・サンチェスによる初メガホンだが、自然光を活用し時代を感じさせる味わい深い映像も相まって、人目を避け肩を寄せ合って生きる家族の健気さや、精神的に追い詰められていく描写に心を揺さぶられる。
幽霊屋敷モノのように語り始めながら、途中からの展開に「おや、このサブジャンルは何だろう?」と観客を翻弄する巧みなストーリーテリングに感じ入った。事前にあまり情報を入れないほうがいいタイプの作品だろう(映画.comの解説も書き過ぎだ)。
アリー役のアニヤ・テイラー=ジョイは魅力的でなかなかよかったが、「スプリット」のような怪演は見られず少々期待外れ。彼女の俳優としてのポテンシャルを引き出し切れていない気がした。
ホラー的な、呪いとか、そんな何かは・・・
この作品が面白い理由は、冒頭から家族の秘密が明かされるときまで、終始ホラーの様相にもかかわらず、結局は全然ホラー作品ではないことだと思う。まあある意味、真実の物語もホラー的ではあるけれど。
つまり、ホラーではない物語をホラーっぽく仕上げているわけで、オチがどうとか、怖くないだとか、肩透かしだとか、そんなことはどうでもよくて、巧妙に仕掛けられてたなと感心するしかないのです。
何か恐ろしいもの、ホラー的な呪いとかそんなものから逃れたかのように物語が始まり、早々に母親が亡くなる。
このときに長男ジャックと、21歳になるまで隠れるようにと約束をするが、やはりホラー的な、呪いとかそんなものに対抗するためかと思わせておいて、実はもっと現実的な、兄弟たちは未成年ですから保護者がいなくなれば施設に入ることになり、それを回避するためにジャックが保護者になれる年齢まで隠れるようにという意味だった。
ホラーの雰囲気全開なのにホラー的な何かは一向に現れず、しかし、覆われた鏡、入ってはいけない屋根裏、ジャック一人だけのオープニング、何かある度に気絶から目覚めているジャック、砦、と、今にも呪い的な何かが飛び出してきてもおかしくない雰囲気はすごかった。
何者かによる銃撃により窓が割れる。この後時間が飛び、よくある展開のような錯覚を起こすが、普通この場合「6ヶ月前」に飛ぶものであり「6ヶ月後」に飛ぶのは斬新。
この間に何かがあったことは明白で、それがなんなのか、ホラー的な、呪いとかそんな何かかな?とどうしても考えてしまうが、やはりそんな呪い的なものは飛び出してこない。
半分も観ればホラー的な何かは恐らくもう出てこないと気付くが、変に意識をホラー展開に割かれたせいで不可解な部分を上手いこと誤魔化されたよね。
頻繁に気絶から目覚めるジャックだけとっても、あんな床に倒れている状態で放置されてるとか、どう考えても不自然でしょ?だけど、ホラー的な何かかと雰囲気に飲まれて納得してしまうもの。
そんなに大したストーリーではないものを上手くホラーで味付けして巧みに仕上げたよね。
エンディング、ジャックはアリーから贈られた家族の写真をのぞきこみ顔が映る。
鏡を恐れて封印していたのはジャック自身だ。鏡に家族が映らない事実を恐れた。
この後に観た違う映画で、体の死と心の死について考えていた。ジェーン、ビリー、サムの体は死に心はジャックの中で生きた、ということだと思う。
三人の体の死も心の死も受け入れられなかったジャックが、家族の映った鏡といえるものを貰い、彼らの体の死を受け入れ乗り越えたといえる名シーンだったかと思う。もう鏡を怖がる必要はないのだ。
もう一回観たくなる
1917のマッケイが出ているということで観てみた。
内容としては、いろんな映画が混ざったものだったので、驚きというよりああ、あのパターンか、と思ってしまった。こういうときにはあまり映画を観ていない人が羨ましい。
また、ジャックが兄弟たちを屋根裏に閉じ込めなければ彼らは逃げられたんじゃないか、とか意味のないことを考えてしまう。
草ぼうぼうとはいえ、田舎の素朴な映像が美しく、またマッケイやアニャの芝居が素晴らしいのは見どころ。
ただ、暗い映像は見づらいので複雑な内容や空間を理解するのにちょっと努力が必要。
父親の脱獄や田舎での隠遁とか現代の設定ではほぼ無理筋な内容なので古い時代設定にしてあり、そこで暮らす青年役は現代っぽく無いマッケイの真骨頂だ。
明らかに6ヶ月後からなんかおかしいので、それはオカルト的なものかゾンビ的なものかと思ったら、まさかの多重人格だった。映画好きなら一発でサイコを思い出す。
まあ、父親はゾンビみたいなものではあったが。
ラストまで見ないとわからない、鏡へのこだわりのシーンがやたら多くて飽きるのと、暗い画面のわかりにくさもあり、星は3つにとどまる。
しかし、全体に流れる雰囲気やマッケイとアニャの演技は見逃せないと思う。
癒し系の方のアニャ・テイラー=ジョイでした
アニャ・テイラー=ジョイ目当てに、事前情報皆無の状態で鑑賞
冒頭の雰囲気から察して、ノスタルジックで後味爽やかな家族愛の物語か…と思いきや、全然違いました
家族愛というか兄弟愛に溢れた作品で間違いないんですが、ジャンルでいうとホラー?サイコスリラー?ミステリックファンタジー?
カテゴライズに戸惑います
でも、あれ?よく考えると結局この映画はやっぱり後味爽やかな家族愛の物語なのか???って感じの映画でした
アメリカの資本がかなり入ってて、物語の舞台もアメリカの田舎町、言葉も英語ですが、この映画実はスペイン映画なんですね、一応
アポロ月面着陸のニュースが写るので作中の時代は1969年ということですよね
素朴な疑問、どうしてこの時代にしたの???
さてメインキャストの5人は非常に魅力的でしたよ
長男ジャック:ジョージ・マッケイ(1992年生、公開時25歳)
長女ジェーン:ミア・ゴス(1993年生、公開時24歳)
次男ビリー:チャーリー・ヒートン(1994年生、公開時23歳)
末っ子サム:マシュー・スタッグ(2009年生、公開時8歳)
4人兄弟の友人アリー:アニャ・テイラー=ジョイ(1996年生、公開時21歳)
お目当てアニャの役どころは最終的に超癒し系
同時期に公開された『スプリット』(2017)と『ミスター・ガラス』(2019)では多重人格者の魂のパートナー役を演じていました
アニャは意外に、「心に傷を持つ相手に寄り添う人」の役が多いです。
そしてミア・ゴス
ほんの一瞬わずか0.5秒(多分)のあの表情がこの映画最大のインパクト!
さすがミア・ゴス
それ以外の兄弟たちもすごくいい
なかなか深みのあるホラー(?)ですよ
邦題がちょっとなんか違うな…とも思いましたが
この手の作品はあまり得意ではないが・・・
衝撃の作品である。サスペンスのようでいてホラーっぽくもあり結末は・・間違いなく多くの人にとって衝撃のエンディングであろう。この手の映画ファンなら満点をつけるほどの傑作。
切ない
解説を読んで鑑賞してしまったためどこにホラー要素があるのか分からないまま終わってしまいました。
妹弟を守ることができなかったと悔やむ長男がただただ切なくて最後のシーンは涙が溢れました。家族を亡くし精神を病んでしまったけれど寄り添ってくれる人がいてくれて良かった。
暗くて美しい好きな雰囲気の映画でした。
これはいいサスペンスホラーだ
恐怖感は楽しめました
最初から何が怖いのかがわからないのにドキドキする。そしてただ怖いだ...
期待してたホラーとは違うけど
感想が何故かシャラマン論になる
あっと驚く仕掛けが前に出過ぎない物語のお手本とは、この映画のことだろう。
物語の中心となる筋は、父親が引き起こした凄惨な過去からの逃走譚なのだが、
アメリカの美しい田舎の風景と、心に傷を負った兄妹たちの静かな日々が心に強く残る。
ことの真相はかなり悲しく、そうであって欲しくない方向へと流れるのだが、
大きな救いだったのは、アニヤ・テイラー・ジョイが演じるアリーの、ジャックに対する選択のありようだろう。
自分にとっても大切なジェーン、ビリー、サムを失うことなくジャックを生かしていこうとしたのではないだろうか。
アニヤ・テイラー・ジョイとあっと驚く仕掛けというと、どうしても思い出すのはシャラマンの「スプリット」とである。
「シックス・センス」以降シャラマンが背負った十字架とも言える大どんでん返しの効果は、
本作品においてもある程度取り入れられているあとが伺える。
それなのに、何故か「やっぱりな」とか、「ああ、あの映画の焼き直しね」と冷めた感想にならなかったのは、冒頭にも述べたとおりの映像美と物語の前面に溢れた兄妹愛ゆえではなかったか。
シャラマンが十字架を背負うきっかけとなった「シックス・センス」や「ハプニング」なども、
本来は大どんでん返しにとらわれることなく人物造形や人物同士の関係を味わいながら鑑賞できる作品だった。
シャラマンがこけた時は、あっと驚く仕掛けが空振りに終わったのだと、今までは思っていた。
しかし、違ったのだ。
シャラマンがこけたと感じた要因は、仕掛けに意識が集中してしまい、過剰な期待を掛けてしまうほどに、人物造形が説得力や共感性に欠けたり、人物同士の関係に惹き込まれる要素が足りなかったりしたからだったのだ。
と、なぜかシャラマン論で終わってしまいそうになるくらい、アニヤ・テイラージョイの存在感が素晴らしいからだろう。
サスペンスの新女王と言いたくなるくらいに、恐怖の中で怯えながらも勇気を奮い立たせる代表的な女優としての地位を確立しつつある。
あの目力は只者ではない。
そもそもは、ここ数年来注目していたジョージ・マッケイの演技がお目当てだったのだ。
マッケイ兄は、どことなく新しい時代のジョン・ハード(RIP)のポジションを感じていた。
予感は的中しそうな気がする。
名端役だったハード氏同様に、本作でもすっかりジョイ嬢に持って行かれてたもの。
ホラーの棚に置くな。
意外性はいまいちだが、心に迫るものはある
夫から逃げてきたであろう家族が心機一転、新たな生活を始めるところから物語は始まる。
そのあと突然6ヶ月の空白があり、ジャックの額の怪我、鏡を隠す家族、外に出ることを禁じられた兄弟と、疑問点が多い。
ホラーテイストながら、幸せな生活の描写とのバランスが絶妙で、かつ考えながら観れる。
ただ、家から出ているのがジャックだけだと気付いたら、謎は解けてしまった。それなら、鏡に映る恐ろしいものとは幽霊ではなく自分たちの姿なのだと。
「アザーズ」や「ドリームハウス」を観たことがあれば、わかってしまうかな。なので、新規性はなかった。けど、真実が語られたとき、並のヒューマンドラマより何倍も心に迫るものがあった。
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