「いまだ戦いは続いている」グレース・オブ・ゴッド 告発の時 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
いまだ戦いは続いている
予告で興味を持って観賞
カトリック神父の性的虐待を告発した人々の実話の映画化
なんかワールドニュースで見た覚えがある話でもありました
この映画の主人公は3人います
まず銀行マンの敬虔なクリスチャンのアレクサンドル
5人の子供も成長し長男が洗礼を受けようかという時期に
ふと幼少期自分が受けたプレナ神父からの性的虐待を思い返し
いまだ少年達と関わりを持つ神父から子供達を守るために
教会を通じてそれを認めるかどうかのために行動します
妻は積極的に協力してくれますが
両親はそんな時間の経ったことを今更と言う反応
教会もプレナ神父と会わせれば済むだろうという程度にしか
取り合わず神父も自身のペドフィリアは認めるも病気だから
仕方がないという他人事な対応でアレクサンドルは
怒りを通り越し落胆します
アレクサンドルはそこで他の性的虐待事件において
断固追及すると宣言した教皇の文言を引用し
バルバラン枢機卿にかけ合いますが神父の行為は
許せないが聖職を解くことはないと信じられない
返答をされついにアレクサンドルは教会を告発する
決断をします
…そして次の主人公フランソワ
性的虐待で告発されたプレナ神父の話を母から聞き
自身の虐待の経験から無神論者になっていたフランソワは
思い出したくないかのように関与を最初は拒否しますが
娘の寝顔を見るにいまだに少年達と関わりを持つプレナの現状に
怒りが爆発し神父と教会関係者もろとも罪を認めるよう
被害者の会を立ち上げ同じく虐待を受けた外科医のジルなど
協力者を募るとどんどん集まってきます
そしてそして最後の主人公エマニュエル
虐待による強いPTSDで身体や性格に支障をきたし
前述の2名に対し仕事も生活もうまくいっていなかったが
被害者の会設立を知り自身の体験を打ち明けます
この3人の主人公の違いはもちろんそれぞれの暮らし
体験や家庭環境がありますが何より大きいのは
告発自体の捉え方です
アレクサンドルは敬虔な信徒ですし家族が教会関係の
教師をしているのもあり教会主導による穏便な解決を
望んでいますが結局それがかなわず告発したのです
フランソワは無神論者になったし子供への危険をなくす事が
目的ですからなるべく世間にセンセーショナルに
伝わることが必要だと思って過激なアピールを画策し
あまりメンバーの賛同を得られていません
エマニュエルは前述の通り生活が上手くいって
おらず精神的にこの件に関与するとけいれん発作を起こして
しまう恐怖と向き合えずにいるところもありました
こんな調子ですから被害者の会のメンバーも数は
揃いつつも意見の相違がありなかなか方針が
決まらなかったり日常生活への回帰を望み協力を打ち切る
メンバーが出るなどしそんなんで強大なカトリック教会の
大組織とやり合えるかは不安しか残らないのでした
ただ被害者達に共通していたのは
苦しみを打ち明けるまでに何十年もの時間を要したことでした
その会合が終わりアレクサンドルは帰宅した長男に
「父さんはこれでも神を信じるのか」と
聞かれすぐ返答できず言葉に詰まったまま
終わっていくラストは印象的でした
そして衝撃的なのはその後のテロップ
この告発事件の裁判は未だに続いており
虐待行為を続けたプレナ神父を役職に起き続けた
枢機卿は無罪となるなど必ずしも被害者の会の意向に
沿った展開となっていないのです
決してハッピーエンドではないのです
こういった立場ある人間の性的虐待のニュースは
あちこち今でも見かけますが
反対運動が政治利用に使われたり
プライバシーを侵害したりうまくいっていない
現実がありますからこうした作品を観て
それぞれ考えてみるのも必要に思いました
おすすめしたいです