「多様性というよりマイノリティ」イン・ザ・ハイツ ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
多様性というよりマイノリティ
どこかのビーチで主人公ウスナビが4人の子供たちにせがまれて昔話をするシーンで始まる。小型スーパーを経営しつつ故郷のプエルトリコに帰ることを夢見る主人公と憧れの彼女バネッサ、妹で西海岸の一流大学に進学し皆の期待を一身に背負っているニーナ、親友で黒人のペニー。夏休みでニーナが街に戻ってきたが、実は大学を中退しようとしていた。その理由は経済的なことと入学直後に盗難を疑われたこと。一方ウスナビの憧れのバネッサは美容院で働きながらデザイナーを夢見て、引っ越しをしたいのだが、部屋が見つかっても保証人がいなくて断られる。毎日が仕事でいっぱいいっぱいの彼らの楽しみは、ウスナビの店で売っている宝くじ。ある時、ウスナビが販売したくじが当選したという噂が流れ、一同湧き上がり、もし9万6千ドル当たったらどうするか?で盛り上がるが、結局誰のくじも当たっていなかった。
途中で挟まるビーチのシーンで子供の一人がウスナビを「パパ」と呼ぶので、ウスナビは愛する人と結婚したのだとわかるが、プエルトリコにデザイナー志望のバネッサを連れて行ったと考えると、彼女の夢はどうなった?!と思っていたが、実は。
もしくじが当たったら?というシーンでそれぞれが夢を歌うが、最も若いウスナビの店のバイト、ソニーが最もまともで立派なことを言う。しかし彼は父には隠されていたが不法移民だった。
どこかのアパートの中庭でそれぞれの国の旗を飾ってみんなで歌い踊りまくるというシーンは、ある意味では今いる国とは別の世界を好んでいるようにも見えた。
ウスナビが故郷に立つために荷物を片付けたがらんとしたアパートで、アブエラのくじを見つけるのはどうやったんだ?などということを追及するのは野暮か。ウスナビ役のアンソニー・ラモスの奥二重瞼が日本人にも親しみやすい。