「良質なエンタメ」ドクター・スリープ f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)
良質なエンタメ
『シャイニング』(1980,スタンリー・キューブリック監督)
山荘での惨劇を生き延びた、ジャックの息子、通称「ドック」。
特殊能力「シャイニング」を持ちながらも、過去の記憶と亡霊に怯えながら大人になります。アルコール依存症に陥り、職を転々としながら放浪生活を送ります。
アメリカには、彼と同じように特殊能力を持つ子供たちが何人もいます。
そんな特別な子供たちを狩り、魂(正気)を吸い取って延命しているヴァンパイアのようなカルト集団の存在が、今作で新たに明かされます。
『ドクター・スリープ』は、そんなカルト集団に狙われることとなった強力な力を持つ少女と、彼女の危険を察知して救出へ向かうドック、そしてカルト集団との戦いが描かれます。
密室ホラー映画であった前作に対し、今作はアドベンチャー・サスペンス・ホラーアクションとでも言ったところでしょうか。不穏さと、派手なアクションが共存しています。
「前作の雰囲気を継承した、正当な続編」ではありませんが、設定を引き継ぎながら1つの映画として完成されています。
映像のクオリティが高い(撮影・美術)ので、画面を見続けることができますね。
ドクター&少女とカルト集団との戦いを描くと同時に、ドクターの人生・精神の再生をサイドテーマとしており、「アルコール依存気味であった父親に自分を重ね合わせ、不安に陥るドクター」が救済されていく過程でもあります。
終盤には、前作の「オーバールック・ホテル」が登場し、ファンも喜ぶオマージュが成されていますね。
バーのシーンなど、やや陳腐で無意味な場面も散見される気がしますが...(これが理由で星0.5マイナスにしました)
後半がややダラダラしているかな。
Point
▶︎カルト集団との戦い
▶︎人生の再生
▶︎アクション+ヒューマンドラマ →前作とは作風が異なる
▶︎良質なエンタメ
▶︎前作へのオマージュあり◎
さて、スティーブン・キングは、『スタンド・バイ・ミー』や『IT』に代表されるように、「少年性」「少年時代の思い出」というものを大事にしているように思えます。
今作の主人公は、「かつて少年だった大人」であり、少年の頃のトラウマから抜け出せないまま大人になっています。俳優ユアン・マクレガーの容姿はどう見ても立派な大人なのですが、どこか子供時代から抜け出せない演出がなされ、新天地で見つけたアパートの一室も、何処か子供部屋のように見えます。(子供部屋おじさん)
そんなメソメソ・ジメジメした彼が、アルコールに勝ち、少女を救うことで「父親とは違うんだ!」と決別する姿を描いているのでしょうか。
悪役のレベッカ・ファーガソンという配役に意外性があり、魅力的な演技を披露しています。
彼女の被っている帽子が、なぜか『時計仕掛けのオレンジ』を思い出させますね。
母親役を演じている俳優が前作とは異なっているのですが、演技がとても似ていて、こだわりを感じさせます。
個人的には、ドクターには生きていて欲しかったなあ...