劇場公開日 2020年2月28日

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「原題 JUST MERCYには深い意味がある」黒い司法 0%からの奇跡 悶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原題 JUST MERCYには深い意味がある

2023年1月28日
PCから投稿

【鑑賞のきっかけ】
本作品は、劇場公開時、注目していたのですが、鑑賞を逃してしまいました。
今回、動画配信で鑑賞することに。

【率直な感想】
<「アラバマ物語」との接点>
本作品は、実話に基づいた作品であり、主人公の黒人弁護士、ブライアン・スティーヴンソンが2014年に発表したノンフィクション「黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪」を原作としています。
主人公は、黒人死刑囚の支援のために、アメリカ北部からアラバマ州にやって来た弁護士。
ここで、1987年に起きた少女殺害事件で死刑判決の下った黒人死刑囚と出会い、冤罪と確信。再審査請求により、無罪を勝ち取ろうと奮闘します。

映画の好きな方であれば、「アラバマ物語」という1962年のグレゴリー・ペック主演の映画作品を思い浮かべることと思います。
本作品でも、物語の初めの方で、主人公の弁護士が、後に法廷で対決することとなる地方検事を訪ねた際、「『アラバマ物語』の博物館があるので、立ち寄ってみるといい」と薦められるのですが、これはとても皮肉な展開です。

「アラバマ物語」は、本作品同様、黒人差別を扱った映画です。こちらも動画配信で、数年前に鑑賞したのですが、鑑賞直後の私自身のレビューの一部を抜粋します。

「アメリカは憲法修正第13条が成立し、奴隷制が廃止されたのが、1865年であるにも関わらず、本作品の舞台である、1930年代どころか、制作当時の1962年でさえ、差別意識は強く残っていたようです。ただ、この60年代は、公民権運動が盛んとなり、差別意識解消が強く進んだ時期とされていますので、本作品はそうした状況下で発表された作品として、大衆に広く受け入れられたのではないでしょうか。」

本作品は、この「アラバマ物語」制作から20年経ってからも、黒人差別は続いていたというものであり、しかも、黒人死刑囚の有罪を信じて疑わない地方検事が、「アラバマ物語」の博物館を薦めるという展開に驚かされました。

<原題 JUST MERCYとは>
邦題の「黒い司法」は、原作本の邦題と同じですが、原題は、映画も原作本も、「JUST MERCY」です。
「MERCY」は、「慈悲」という意味で理解しやすいのですが、日本人にとってやっかいなのが、「JUST」です。
直訳すると、「ただ慈悲あるのみ」なのですが、これだと無味乾燥です。
そこでもう少し調べてみると、「公正な」という意味があるらしい。
つまり、「公正な慈悲」なのですが、これでも何となく意味不明な感じ。

そこで、どの箇所かは記せないのですが、主人公が自分の考えを吐露するシーンがあります。
「If we can look us for closely, and honestly, I believe we will see the all need justice. We all need mercy.」
(私たちが自分自身を注意深く、正直に見ることができれば、すべての人が正義を必要としていることがわかると私は信じています。 私たちは皆、慈悲を必要としています。)

上記は、mercyは出てくるけれど、justは出てきません。
でも、justから派生した単語が出てきます。
それは、「justice(正義=司法)」。
justiceとは、「judge(裁判官)がjustな刑期を決める過程から来ている」という説があるそうです。

本作品の原題が、「正義」や「司法」に繋がっており、そこに重要な要素として、「慈悲」の心が必要と訴えていると考えることもできるのではないでしょうか。

【全体評価】
正義=司法とはかくあるべきということを勇敢な弁護士が身を以て示したという実話ベースの作品として、大きく胸に響く良作であると感じています。

悶