「「上級国民裁判」により、日本の司法が試されている今こそ観るべき一本!」黒い司法 0%からの奇跡 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
「上級国民裁判」により、日本の司法が試されている今こそ観るべき一本!
黒人差別が根強く残るアメリカ南部を舞台に、死刑囚の弁護を専門に行うため北部より移住してきた若き弁護士ブライアンが、冤罪により収監された黒人男性ウォルターを救うため奮闘する、実話を基にしたリーガル・ドラマ。
主人公ブライアンを演じるのは『クリード』シリーズや『ブラックパンサー』のマイケル・B・ジョーダン。製作総指揮も担当している。
冤罪により死刑囚となってしまった男ウォルターを演じるのは『アニー』『ベイビー・ドライバー』の、オスカー俳優ジェイミー・フォックス。
ブライアンを助ける人権活動家エバを演じるのは『ルーム』『キャプテン・マーベル』の、オスカー女優ブリー・ラーソン。
特に意識してないのに、なんか最近ブラック・ムービーばかり観ている気がする…😅それだけたくさん作られているってことかな?
原題は『Just Mercy』。直訳すると『公正な慈悲』とかになるのか?
身分や人種によって量刑が変わることがないよう、公正な裁きを求めて活動する弁護士ブライアンにぴったりの言葉ですね。
『黒い司法 0%の奇跡』…。こんなダサい邦題じゃ、視聴意欲がなくなるよ〜。わかり易けりゃ良いってもんじゃないでしょ💢
まぁ、それは置いといて。
映画の内容は素晴らしかった!
死刑というセンシティブな問題を扱い、そこに存在している人種差別を鋭く抉った社会派映画。
個人的に死刑反対!…というスタンスではないですが、死刑とは確固たる司法制度の下に行われるべきであり、そこに人種差別や身分差別が介在してしまうようでは、大いに問題があるでしょう。
我が国日本も現在「東池袋自動車暴走死傷事故」の刑事裁判が行われており、司法制度の根本を大きく揺るがしています。
日本でも身分による量刑の増減があるのか。そういったことが明らかになるこの機会に、本作のような映画を鑑賞し、司法について考えるのは大事なことではないでしょうか?
話が脇に逸れたので本筋に戻します💦
まず本作の役者陣の演技、良かったです!
今現在、体制との戦いが最も似合う漢、マイケル・B・ジョーダン!
闘う男を演じさせたらこの人の右に出る役者はいない!いつもギリギリの戦いを強いられているような気がする笑。
個人的にMJ好きなんだよな〜。野性と知性を兼ね備えた男って感じがする。
MJ演じるブライアンが、幾度も人種差別を受けながら、それでも立ち上がり続ける姿には感動した。これでこれを観て心が震えなければ男じゃねぇ😤😤
地方検事や保安官の役者も上手かった。あんなに映画の登場人物にむかついたのは久々だったなぁー。
全体的に少し説教くさいところはある。
人種差別について思うところがあるのはわかるが、ちょっと映画の表面に出過ぎていたかも。
黒人の過去や死刑について、説明的なセリフが多すぎて座りが悪く感じるところはあった。
南部の白人の観客は凄く気まずかっただろうな〜、とか思っちゃった。
とはいえ、差別に真っ向からぶつかるブライアンの姿は熱い!
誰がどう考えても狂った判決なのに、それが当たり前のようにまかり通っていることへの恐怖をすごく感じたし、こんな戦いにどうやって勝つんだよぅ…と、クライマックスギリギリまで思わせてくれる構成は見事👏
最後の最後、ブライアンとウォルターが勝利を掴んだ瞬間、熱い涙がこぼれました…😭
また、熱い人間ドラマだけでなくミステリー的な要素も楽しむことが出来る。
真犯人が結局分からず仕舞いというのはモヤモヤするけど、まぁ実話ベースだから仕方ない。
いや〜、しかし黒人差別についての映画となるとほぼ全てアメリカ南部が舞台になりますね。
アメリカ南部へ行ったことがないのでよく分からないのだが、今でもそんなに酷いところなんだろうか。
公民権運動のシンボルである「アラバマ物語」の記念館があるのに、全く差別がなくなっていないという皮肉めいた描写がトゲのように心にささりました。
差別を差別だと思っていない、それが普通のことだと思っちゃてるんですねぇ…。差別がなくならないわけだわ。
一点気になったのは、本作でブライアンが出会う死刑囚はみんな冤罪だったり不当に重い量刑を受けた人たちだったこと。
でも中には正真正銘の悪人も居るはずで、そういう人と相対したとき、ブライアンはどういう態度を示すのでしょうか?
この世の中には立派な人が沢山いるんだなぁ、と感心させられる一作。本物のブライアンはまだ現役バリバリで活動しているんだと思うと不思議な気持ちになる。また一つ学ばせて頂きました。
差別や死刑を描いた映画だが、そんなに暗くはない。ただドスンと重いパンチを喰らわせてくる一本。
ブライアンの戦いぶりはまるで『クリード』のアドニスのようなので、『ロッキー』シリーズのファンにもオススメ!
心に闘志が宿ること間違いなし!🔥
※アメリカは州によって死刑があったりなかったり。
どの州で死刑が存在しているのか調べてみてビックリ!殆どが南部じゃないですか。
人種差別の根強い南部で死刑が採用されていることに強い違和感を覚えました。
大体、アメリカにおける黒人の人口割合は大体12%くらい。
それなのに、アメリカの全死刑囚の中で黒人が占める割合は42%にも上ります。
これは単に黒人に凶悪犯罪者が多いからなのでしょうか…。それとも…?
作中、差別的な保安官と地方検事が登場します。
映画によく出てくる保安官って一体何者なんだろう。なんとなく分かった気がしているけどよくわからないぞ?
と思っていたところ、たまたま読んでいたレイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の後書きで村上春樹がわかりやすく解説してくれていました。
簡単に言うと郡の警察のトップのことなんですね。
ちなみに保安官も地方検事も住民による一般選挙によって決定されるらしい。
作中のエンドロールでも説明されていたが、強引な捜査でウォルターを有罪にしたネイト保安官は6回再選され32年間も保安官を務めた。
つまり、あんな人種差別的な冤罪事件を起こしておきながらモンゴメリー郡の人々は彼を選挙で選び続けたわけです…。
2019年までネイト保安官は在職し続けたんですから、アラバマって凄いところなんですねぇ…😞😞😞
黒人に偏見を持つ人々が警察のトップである保安官を選挙で選ぶのだから、その保安官も黒人に対し偏見を持っている可能性は高くなる。
さらに地方検事も選挙で選ぶのだから、もしその地方検事も黒人に対して偏見を持っていたら…。
黒人に対する不当な逮捕、冤罪がまかり通るのも当たり前な気がしてきた。システムがそうなってるんだもん。
馬鹿じゃねぇの…☠️
実に知的なレビューですね。
そうか、justは公正なという意味もありますが、私は「単なる、ただ〜だけ」という意味だと思ってました。
ダブルミーニングもありますかね。
いいね、ありがとうございました。
talisman さんが言う通り、熱いレビューでした。
> 最近ブラック・ムービーばかり観ている気がする…
実際、数多いですよね。現在も続く差別への抗議の意味も、最悪の時からここまで改善してきた自負も、いろいろな意味合いで描かれるからでしょうか。