「法は厳正なものであるべき」黒い司法 0%からの奇跡 ROKUxさんの映画レビュー(感想・評価)
法は厳正なものであるべき
法は神聖だとは言わない。だが、権力者の都合で解釈を勝手に変えて良いものでもない。そんなことをしてたら、いずれ誰も法に従わなくなる。法で治められていない国家は、諸外国からも相手にされなくなる。
さて、この映画は法が歪められた社会に敢然と立ち向かった若き黒人弁護士の実話を元にした作品である。
前半で彼(ブライアン)は、一人の死刑囚(ハーブ)の命を救うことに失敗する。そして、その死刑が執行される様子を、映画は執拗なまでにじっくりと描く。そのことで、死刑制度の持つ残虐さを、観客は理解する。
ところで、『死刑台のメロディ』という1920年代を舞台にした映画にも電気椅子が出てくるのだけれど、1980年代になってもほぼ同じデザインだったのにはちょっとびっくり。
ジェイミー・フォックス演じる被告人ウォルターの再審請求も、何度も壁にぶつかる。完璧なまでの証拠と弁論さえ、因習に執われた裁判所によって拒絶される。
訴えは上級審に上り、ブライアンは、問題の根本は警察や社会に深く根をおろした黒人差別にあること、法が富める者に奉仕する存在になっていること、そんな社会を変えなければならないことを熱く述べる。
この場面もまた『死刑台のメロディ』で、バンゼッティ被告が「移民であることが裁かれる。思想を持ったことが罪だと裁かれる」と訴えたことに通じるように感じた。
結末は、実に爽快感に満ちている。何度も挫折しながら最後に栄光を勝ち取るストーリーは、エンターテインメントとしても上出来だと思う。
あと、刑務所の若い看守がレイシストから脱却する様子もなかなかいい。
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