ジョーカーのレビュー・感想・評価
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哀れな男のひとり芝居
こんな映画上演していいのか?
紛うことなき第一印象である。これが映画、すなわち、"つくり物"であることすら認識できずにいた。それくらい、嘘っぽさのない映画であった。
故に、時々感じる嘘っぽさが目立つ。それこそが彼の狂気、もしくは正気からうまれたジョークなのだ。
「誰にも気付いて貰えない」と嘆いた彼は、偶然エレベーターで乗り合わせ、話し掛けてきた女性に夢を見る。悲しく、気味の悪い夢だ。願望の世界の彼女はまさに"嘘っぽい"。
アメコミ映画にしては、あまりにバイオレンスで、不憫で、重いストーリー。それもそのはず、監督は"ジョーカー"というキャラクターを利用したに過ぎない。彼が描きたかったのは、現代には流行らない人物中心の物語。アメコミというネームバリューを活用し、自身の映画を作り上げた。それに欠かせなかったのが、ホアキン・フェニックスというジョーカー。
正直、今まで生きてきた中で、"演技が上手い"と思ったことはあっても、"演技に見えない"と思った演技はホアキン・フェニックスのジョーカーがはじめてだ。"俳優"という職業の、"俳優"という人種の危うさをはじめて体感した。彼の演技があまりにも"ホンモノ"であるが故、また良からぬことが起こるのではないかと不安になってしまった。が、それは本人がインタビューされた際に怒りを含んで否定しているので、観客もその信頼に応えるべきだ。リスペクトを持って、この作品を一フィクションとして賞賛したい。
たとえ観客のチャンネルに相応しくないブラックなジョークであっても、それがこの映画なのだ。
伏線
怪演極まりない、ホアキンの演技に加え素晴らしい編集と音楽によってゴッサムシティはリアリティを帯び、観るものの心に迫ってくる。
変質な役は演じるのが簡単に思われがちだが今回のホアキンはそんな軽率な考えは払拭される。
目の奥の内面的な演技は鳥肌もの。
音楽もクロノスカルテットぽい音作りで退廃感を見事に表現。
衣装も惹き付けるものだった。
あの笑い声、しばらく耳について離れない。
これからの世界を予言しているかのような。香港にも通じる政治的な背景も感じ取れる畳み掛けだった。
娯楽、作品、どちらのスタンスで観るか。
映画という娯楽として評価するか、
映画という作品として評価するか。
観る人のスタンスによって、全く逆の評価になってしまう。
娯楽とすると、全く楽しめない。楽しくない。ただただ悲しく救えないアーサーの物語を、淡々と2時間ぶっ続けで観させられる。【ダークナイト】の吹っ切れたジョーカーとは、全くの別物。
作品とすると、演出、演技、全てが素晴らしく、アーサーとして観ている様な感覚にさせられる。現実なのか妄想なのか、何が本当なのかわからない。2時間、世界に引き込まれっぱなし。
同意も感情移入も出来ない複雑な気持ちの自分。ホアキンの圧倒的な演技力に魅せられている自分。状況次第で自分すらジョーカーになりえる恐怖心。観終わった後、なかなか自分の言葉が出てこない。
賛否両論あるが、人を殺める時だけは、紛れもなく今まで観てきたジョーカーだった。
個人的にはこれを超える『作品』に出会うのは、かなり先になると感じるくらいの衝撃。良い意味でも悪い意味でも、この映画を受け入れるスタンスで観に行くと、ずっと記憶に残る名作になると思う。
アーサーの一人称世界
ってどなたかレビューに書いてたけど、本当に彼の主観の世界に巻き込まれてしまった。
彼が踏ん張って善人であるうちは胃が重くなるようなしんどさがあり、逆に殺人を犯した後の高揚感には見ていて少し楽になってしまった。共感してしまえるのが恐ろしい。
アーサーの不器用な字のノートが出てくるシーンに何故か悲しくなったんだけど、劇的な怒りのシーンや彼の活躍シーン(本人の妄想??)みたいな彼の一人称視点から、急に客観視点に引き戻されたからかも。コメディアン志望の彼のネタ帳のはずが、覗いてみると精神不安や妄想の連なったノートになっている…
アメコミ映画だし、途中から反則みたいに強いジョーカーが誕生したり嘘見たいに極悪なヤツだったら気楽なのに、アーサーはひたすら現実的に弱くて優しさもある人。
この映画の状況が、めちゃくちゃ現実的に思えてしまうのがしんどいなぁと思う。
バットマン80周年にあわせたエピソードゼロ的な
見に行く前にストレスが溜まる映画だと友人に言わましたが、そんなことはなかった。
ジョーカーは私の思い描いていた、人の闇を自然に引き出してしまうような魅力的な部分はなく。
どうしてしまったんだろうと思ったが、あくまでこの作品はジョーカーの誕生秘話であったのだと振り返った。
バットマンの映画ではお馴染みの両親が不良に射殺されるシーンで幼きブルースが出てくるが、ブルースが大人になりバットマンになった頃、ジョーカーはどこまで悪として完成されていくのか、想像したくなる映画であった。
一つの答えとしてみる
ジョーカーの過去を知ることは、彼も人間だったと気づくことなのかもしれない。
悪の天才もかつては、アーサーという名の男として貧しいながら慎ましく暮らしていたのだ。
そんな男が悪に目覚める。そのはじまりを今作は恐ろしいほど美しく描いている。
この先、どのようにジョーカーとして成長していくのか、妄想は広がる。
ダークナイトとのイメージが違いすぎるという意見を見た。
確かにその通りだ。ダークナイトのジョーカーはもっと狡猾で悪の天才だ。それに口も裂けている。
ここから個人の妄想だけど、もしかしたらダークナイトジョーカーは2代目なのかもよ。年齢的にも。
今作のは初代、何年か後にアーサーに感化された2人目のジョーカーが現れる。
みたいなこと考えてたら楽しいよね。
ついでに言うと、スーツの色をオレンジにしたのがいい。オレンジの明るいイメージをまとうことでアーサーの悲しさがより引き立つ。そしてオレンジの補色といえば紫だ。ダークナイトの紫スーツと完全に逆の色にしたのだろう。つまりダークナイトは引きずらないでねってことだ。
一度も笑えないハッピーの話
バットマンは観ていないのでジョーカーが何者なのか知りません
この映画には理不尽な世界でなんとか生きようと頑張っていた人が壊れていく過程が丁寧に描かれていました
いま、平和で満ち足りた生活している人と、現状、些細なことにイラッとしてしまう生活をしている人とでは
映画観た感想が変わるんだろうなと感じた
ストーリーがリアルすぎて怖かった
ジョーカーの話しとは思わず、いま、世界の中にこういう人はたくさんいるんだろうなぁと、思いながら
時事ネタを見聞きした気分
いま世界で起こっていることも、事件も、色々な人が感じてる苛立ちもそれら全ての元凶の〝核〟を見た気分です
バットマンには興味ないけど、バットマンのジョーカーをちゃんと観たいと思いました
あー、しかし、怖かった…
香港の民主化デモを彷彿とさせる映像
親に裏切られた親孝行な青年が、悪に堕ちていく姿は、
観ていて身につまされる。
暴力の連鎖に町を荒廃させていく姿は、未来の私たちの姿だろうか?
覆面禁止法が施行されて、青年が逮捕、投獄されている、隣国のニュースを見ながら
、ふと考えた。
ホアキン版『タクシー・ドライバー』
まさにホアキン・フェニックス一人舞台です。貧困、孤独、格差、母子家庭、要介護、低所得労働者、精神疾患、etc…社会の負のスパイラルてんこ盛りの主人公が狂気に染まっていくのは、まさに『タクシー・ドライバー』、だからデニーロが出ているのかな?
映画の完成度は非常に高く、アメコミの領域を超えていると言うより、むしろジョーカーである必要すらなくて、一編の独立した重厚な心理ドラマでした。
ミスチョイスしないように
バットマンの関連作品と思って爽快感を求めないように。ひたすらメンヘラの気味の悪いオジさんの映画です。彼女とのペアできている人も多かったのですが、性癖を疑われるかも。終了するとそそくさと出て行く人たちも多かったです。主役ばかりが目立つ映画で、あのデニーロが馬鹿げた端役を承知したのにはビックリです。でもなかなか良く出来た作品です、アメリカの惨めな下層社会を良く表しています。ちょっと住環境は良すぎますが。あんなものかも。
圧倒的な完成度
素晴らしい!
今年度No.1かと思いきや、ここ数年で1番の作品だった。
映画が好きな人は是非観るべき作品。
R15+指定なので、どれくらいエグい描写があるのかと思ったが、ほとんど無かった。
それ以上に、演出、脚本、撮影、編集、音楽、演技どれをとっても素晴らしく、細部に至るまでこだわりと計算がされていた!
悪のカリスマが誕生する瞬間を是非見届けて欲しい。
マーベルとは違うよなー、やっぱり。
あまりにも評価か高すぎてそこまでの絶賛ではないけれど重厚感ある作品でした。バットマンではひたすらな悪だけど、この作品で生い立ち見せられると同情感がわいてくるからさすが。ホアキン・フェニックスのすさまじいほどの入り込み演技に驚愕。
絶望の先の狂気
期待して待っていたジョーカーをTOHOシネマズの朝の回で鑑賞。
ストーリーは至ってシンプル。
コメディアンを夢見て下積みをしているアーサー(後のジョーカー)。彼は精神疾患を持ちながらも、母親を献身的に介護する心優しき男だった。そんな彼が度重なる不幸で心を狂わせていき、あの狂人・ジョーカーになるまでが描かれる。
アーサーはどこにでもいそうな男だ。夢を目指しながらも成功できず、チャンスを掴み損ね。貧困の中、親の面倒を見るうちに社会から阻害されてしまった。
そんなドロップアウトしてしまった彼に対する世間の目の冷たさ。残酷さを、視聴者は嫌と言うほど突きつけられる。
真面目に生きようとしても報われないこの世界で、心を病んでしまった人間は誰でもジョーカーになりうる。
だからこそ、この映画はヒトを惹きつける。
それを一見すると人好きそうなおじさんにしか見えないホアキン・フェニックスが演じる。だからこそ、狂人に転落していく彼の人生が他人事とは思えないのだ。
騒動を起こし、世間から注目され快感を覚え、更にエスカレートしていくジョーカー。
彼の歪んだ自己顕示欲と承認欲求は、今のSNSの一部ユーザーにも垣間見ることができる。
この映画はフィクションでも、根底に流れる問題は現実と何1つ変わらない。
いやそれどころか、格差が進み未婚率が高まり犯罪率が上がっている今の社会こそゴッサムになりつつある。
だからこそ見る価値がある映画と言えよう。
映画とは本来、受動的なコンテンツだ。
見て、聴いて、感じる。
だが本作は違う。
見た者が実人生をアーサーに重ね、己の精神と向き合うことになるいわば写し鏡。
だから、フィクションとして割り切れない怖さがそこにある。
この映画を見て何を感じるかは人それぞれだろう。
だが己の中に息づく"ジョーカー"に気づいてしまった人間も少なからずいるはずだ。
それこそが、この映画の危険性であり、同時に最大の魅力と言える。
悲劇とは、他人から見れば喜劇に他ならない。
それこそがコメディの本質だ。
世界は想像以上に残酷で、出口はまだ見えそうにない。
演技力についていけてない
ジョーカーというキャラクターは演じる俳優によって作られるものであって、今までのジョーカーと違ったりする点があって良いと思う。
セルフがあまりなく、笑い声が響き渡るのが印象的で音楽も効果的に使われていたと思う。
けれどホアキンフェニックスの演技力が凄すぎて、圧倒的で、それに演出がついていけてない感じがした。演出はなんというか、やっぱりありがちなヒーロー映画だなというシーンもちらほら見られて、少し勿体無い。
これは何の涙だろう。
泣き所ではないシーンの連続で、なぜか涙が出た。
社会道徳から正反対の身勝手さに、人間味ある美学を感じた。
布石はやや多いが、「彼」が完成していく演出が緻密で美しい。
負のテーマや感情さえも昇華させる芸術は、国境を越える。
それを改めて感じさせてくれる作品でした。
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