ジョーカーのレビュー・感想・評価
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悲しき宿命
1989年のジャック・ニコルソン、2008年の「ダークナイト」でのヒース・レジャー。個性派俳優がキャスティングされてきた、バットマンの最強の敵となるジョーカーがフューチャーされた話題作だ。トランプのジョーカーのピエロビジュアルを参考にして創造され、コミックのスタートともに登場した狂気の犯罪大魔王だ。
たかだか200年ほどの歴史しかないアメリカという若い国では、風土的・歴史的な「恐怖」の対象は、平安時代の「妖」のように1200年かけて遺伝子に刻み込まれてきたような原初的・幽玄的な存在を持たない。そういう点で、しょせんDCコミックの敵役にすぎないサイコパスキャラクターを恐怖の対象とするしかないのだろう。アメリカ映画における様々な恐怖対象は、科学的・合理的な説明を背景に語られる(説明される)サイコキラーが多く、サイコパスであるが故に理不尽な理由で電動のこぎりを振り回したり、ロッジの客を殺戮したりしていくのだ。せいぜい人形や動物やタイヤが人を襲うというデーモン系な説明をバックグラウンドに呪いや復讐を(キリスト教的な意味を内包しつつ)投影していくか、あとはエイリアンだけだ。アメリカでは「鬼太郎」のようなキャラクターの発想は生まれようがないと言えるだろう。
ともあれ「ジョーカー」である。企画の発想としては「ジョーカー・ビギニング」であるし、この希代のトリックスターであるジョーカーが、どう誕生してきたのかを描くのが主眼である。そこへホアキン・フェニックスという一種の狂気を秘めた性格俳優をキャスティングしたことが本作のすべてだろう。鬼気迫るホアキンの演技に息苦しささえ覚えるドラマは、まさにジョーカーが世の中から排除され、疎まれ、ネグレクトされることで至高の犯罪者へとエヴォリューションしていく姿を描いていく。世界を憎悪しなければならないように追い詰められていくホアキン=ジョーカーが苦悩する舞台はバットマンのゴッサム・シティ。後にバットマンとなるブルース・ウェインはまだ幼い少年にすぎない時代だ。ジョーカーの誕生そのものが、実はバットマンの誕生の理由でもあるという暗喩も含め、裏側から見た(合わせ鏡的)な帰納法で語られたバットマン映画なのだ。
ホアキンによるとラストシーンは7パターン撮影したという。本作のラストシーンにどんな解釈ができるか、おそらく映画評の世界では議論が高まりそうだ。僕は、これはこれでいいと思う。そこには見えないスーパーで「continue」と書かれているに違いないから。映画的にではなく、主人公ジョーカーの悲しき宿命において。
切ない映画
アメコミ的にはコレジャナイ!でも映画としてはすごくいい!
多くのアメコミファンの方が、ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー等の歴代ジョーカーを思い浮かべながら、この映画のチケットを買ったことでしょう。
自分もその一人です。
むしろ自分は、近年、傑作と言われたコミック「キリングジョーク」に近いのかな?と楽しみにしていました。
ネタバレにならないように、気をつけますが、コミック的なジョーカーの傑作はすでに、あるわけです。それを追い求める必要はないとあらためて認識しました。
この作品は、一つの社会派クライムストリーのよくまとまっていると感じました。
コレジャナイ、けど、観て良かったです!
ぐちゃぐちゃ考えるのでいい
コミックファン、映画ファンは「楽しめる」
そうでなくてもとにかく「考えさせられる」映画なのではないでしょうか。
映画、映像作品としての様々な采配がものすごいです。演技、映像、編集、音楽、ファッションなど、詳しくなくてもわかる程度にはクオリティの高い映画です。
ドルビーアトモスで観たりするとすごくいいんじゃないでしょうか……!観たい!
ストーリーはかなり主観的ですが、個人的には感情移入が出来なくても楽しめるように作られていると感じました。
こんなに主観的なストーリーの作品で、主人公に共感できなくてもいい、と感じられることはとても珍しいことのような気がします。
観終わったあと、様々な感想が自分の中に渦巻きますが、パンフレットなどを読む限りそれを狙って作られている映画だと思います。
「政治的であることは意図していないが、挑発的であることは意図した」と監督が言っている通り、社会に対して考えるべき課題を多く投げかけていると思います。
考えるべき多くの課題で頭の中がぐちゃぐちゃになりますが、ぐちゃぐちゃになりながら考えていくことでしか世の中良くならないよ、というメッセージに私は受け取りました。
分断したアメリカからのSOS
かなり期待して観に行ったのだが、個人的にはあまり刺さらず・・・
その理由ははっきりしており、「この映画のメッセージがあまりに直接的すぎる」からだ。
言っている内容はごもっともだと思うのだが、延々とお説教をされている気分に・・・
もう少し巧みに織り込んでもらったほうが個人的には心が動く。
特に最後の方のシーンでは、「ダークナイト」が巧みに伝えていたメッセージをこの映画ではジョーカーが全部そっくりそのまま喋ってしまう。
ただ、おそらく、今のアメリカはこれぐらい直接的なメッセージを発しないといけない段階まで来てしまっているのではないかと思う。
「わかる人がわかってくれればいい」なんていう段階はとうに過ぎ、「観に来た人が誰でもわかるレベルの警告を発しないといけない」という段階に入ってしまったのではないか。
そう考えるとこの映画はアメリカの悲痛なSOSともとれる。
この映画で良かったと思ったのはやはりホアキン・フェニックスの素晴らしい演技だ。
また、妄想が現実を侵食していく部分の演出も気が利いていたのも良かった。
この映画は結局のところ、あくまで「ヴィラン誕生を描いたアメコミ映画」として観るのが一番良いと思う。ひとときの娯楽としてみれば充分楽しい。
ジョーカーと自身に恐怖
初投稿。男子高校生です。
友人と見てきました。
結論からして一言。「うん、凄い」、これに尽きます。
主演のホアキン・フェニックスが序盤に上司から怒られていた時の顔は笑っているけど目だけ怒りが見えている、この演技からこの映画に取り込まれていきました。予告編では、アーサー・フレックのことを優しい男性としていたけれど、個人的にはジョーカーとなる以前の彼は自分が社会から抑圧されてきた中で求められた「優しい」という側面しか表に表現出来ない狂気を帯びた男、ジョーカーとなってからはそれを全て暴力的なまでに解放する男という印象を見終えてから覚えました。中盤までの徹底した理不尽、運命の生々しいまでの残酷さがアーサーを歪めて観客も鬱になってきて、終盤の暴力と狂気にまみれた、普通なら地獄絵図でしかないゴッサムシティで大量の群衆に称えられるジョーカーにカタルシスを覚える自分に鳥肌が立ちました。
これはもう映画を超えたものとしか思えない、人生観を変えるほどの1本になりました。
金獅子賞も納得の大傑作ではあるが…ジョーカーとしてはどうか?
アメコミ映画というより、社会派映画の側面が非常に強い作品です。
昨今の社会問題を絡めた重厚なテーマ、ホアキン・フェニックスの圧巻の演技…
褒めるところは幾らでもありますので、詳しくは他の人のレビューをご覧ください。
問題は、『この人がジョーカーでいいの?』…という所です。
私もそんなにアメコミに詳しいほうでは無く、正直あまり思い入れも無いんですが…
そんな私でも、ジョーカーといえばヴィランの中のヴィラン。バットマンの最大のライバルで、究極の悪である!…ということは、知っています。
その視点から見たとき、本作のジョーカーは『小物』臭がキツイといいますか…
演技が凄いので、圧倒されてしまいますが、よくよく考えてみると
「えっ、そんなありがちな理由でジョーカーになったの?」…とか、
要領が悪く、愚かな社会的弱者の側面が強調されすぎているので、
「この人では、バットマンと渡り合えないだろ…」と思ってしまったのが、正直な所です。
まあ色々調べると、この監督は元々『ジョーカー』の映画を撮るつもりだった訳では無く、
社会派の映画を撮ろうとしていたら、『ジョーカー』の企画が来たのでそれに乗っかったらしいですが…幸か不幸か、大傑作になってしまっただけに、今後の展開が心配です。
『ジョーカー』のキャラクターが歪められることにならなければ良いのですが…。
まあラストシーンを見ると、「本当にこの人はジョーカーだったのか?」「この話は、全て精神病棟に入院している男の妄想だったのではないか?」…とも取れる描写がしてあるので
一応配慮はしてありますが。
そのあたりの懸念があるので、少し減点しときました。
知られざるジョーカーの過去が明らかに
やはりジョーカーも最初から悪者ではなかった。
周囲の環境や人々により誕生した。これにともなう背景などがしっかりと描かれているので映画の雰囲気にあっという間に吸い込まれる。
ジョーカーはそこにいる
ピカレスクというものが苦手だ。
ぬくぬくとした人生を送っているので、理不尽な悪意というものが苦手だし、善人が止むに止まれず堕ちていくのをみるのは、胸が詰まってしまう。
でも『ジョーカー』は違った。
抑圧され鬱屈したアーサーがジョーカーとして花開くとき、アーサーの魂の解放を感じ、むしろほっとしたような気持ちになった。背徳的な快感があった。異様な高揚感があった。ジョーカーという好きなヴィランの物語であるのも大きいと思う。
暴力に賛成するわけではない。
でも、満員電車に乗って潰されそうなとき、つまらない仕事を淡々とこなすとき、大きな声に自分の意見をかき消されると思うとき、自分の中にジョーカーが燻っているのを感じる。
善悪とは何かを問う、危険な問題作
観賞後、言葉に詰まる傑作
貧しい家庭環境の中で必死に生きるも、病気のせいでまともに扱われず、街でいじめられ、同僚に陥れられ、上司には信用されず、散々な目に合う描写が続くため心苦しくなる事も多かった。
恋人の不在、母の裏切り、ショー最中の発病、暴行、どこまで苦しみは続くのか・・・
だが、そのすべてにケリをつけ、覚醒し、本性を曝け出すためにTVの撮影に向かうジョーカーの目には光が入り、何か信念を持った戦場に向かう兵士のような力強い歩みに感じられた。
そして最後のパトカーの上に立つジョーカーは殺人者であり、決して許される存在ではないのだが美しく、感動さえ覚えてしまった。
観賞後、自分の中にあるこの感情を言葉にできず、言葉に詰まる。もう一度観るかと言われたら躊躇する、それほどに重い映画だが、これほど心動かされるのであれば、きっと傑作と呼ばれるものだろう。
悪のカリスマという孤独者
終始JOKERの世界観に魅了された。ストーリー性、音楽この二つの要素もさることながら何よりも評価するべきは主演のホアキン・フェニックスの演技力。脳神経の病気による突発的に笑ったり(後半には病気ではない?ような事を話していた気がするが曖昧なところは許してほしい。)、アーサーを取り巻く歪な環境が彼の人格を歪ませたことにより奇怪なダンスを踊ったりと純粋だった心が荒んでいく様子がひしひしと伝わってきた。ここまでストレートに自分の心に染み込む演技は見たことが無い。ただただjokerという異常者になったのではなく、映画の終わりに憧れの人を殺す際も自分を理解してもらえない苦しみの表情を浮かべていた姿を見てこれほど人間味を持つキャラクターはいるのかと思うほどだった。もはやjokerという一種のブランドのような尊い存在だと感じた。とにかく素晴らしい作品だった。
「ジョーカー誕生までの物語」なんて一言も語ってなかった
1回目はぼんやり見てしまったので、もう一回見てきました。
これ、「ジョーカー誕生までの物語」なんて一言も語ってなかったんですね。
冒頭と末尾に登場する「白い部屋」が種明かしだったのです。クリームの「White room」もかかってますし。うかつでした。
「ダークナイト」でも、ジョーカーは自分の口が切り裂かれている理由を、その場その場で「思いついた」ジョークにして語っていましたね。
つまり、それを二時間超の話にしてしまったのがこの映画だったんですね。
というわけで、ジョーカー像は、「ダークナイト」の時から一歩も動いてなかったのでした。
だだ、妄想内妄想が描かれたりするので、「信用できない語り手」の要素を見落としてしまう人は私の他にもいるのかも。
そうすると、この映画か浮かび上がらせているのは、ジョーカーすら「理解できないさ」と言ってるその話を理解できてしまう(それどころか、共感してしまう)私たち観客の姿なんでしょうね。
しかし本当に大好きな映画です。もう一回見ます。
演技力が半端ない!役作りが凄い
とりあえず1番凄いのは役者!
あの笑い方に踊りに台詞、、、もう150点くらいあげたいです!演技力はピカイチでした!
なんか凄いとしか言えなかったです。
そして内容ですが、バットマンダークナイトを見ていたというのもありますが、もっと頭の回転が早く計算高いシーンももっと取り入れて欲しかったです。
ただ恵まれない家庭で育ち不運な人生を歩んできた背景しか伝わって来ず、あのいかれ狂ったJOKERさんは何処へ?
優しい一面もあったけど少し中途半端な感じがありました。この際あんだけ街を燃やしたり暴れるシーン出すなら最後の方でバットマンを少しでも出せばまた盛り上がりはあったのになぁと感じましたー。
でも、なんか実際にJOKERさんみたいな人生を歩んでいる人がこの世の中に何人もいると考えると辛く苦しいんだろうなぁと伝わってきました。
もっとみんな世の中に優しくね!笑
最高の材料✖️最高の味付け
ジョーカーというキャラ自体が魅力的であるために描き方によっては違う味が出てくる。
幾度となく登場してきたジョーカーもはどれもよかったが、今回は一味違う。
まず、バットマンのいないゴッサム。この世界観でどうDCの王道ストーリに辻褄合わせするつもりなのか、予告の段階で気になってましたが、最後の最後に、なるほど、と納得できるエンディングを用意してくれる。
次に、ジョーカーの成り立ちの描き方がすごく丁寧。ここが新鮮味があってよい。
アーサーが何に苦悩して何を考えて、その結果、ジョーカーという最高にクレージなキャラに至るのか、こと細かく演出してくれる。
最後に、やはりホアキンの演技。
笑いの演技といい、躊躇なく引き金引くところ等、文句なしにジョーカーというキャラを演じてくれたと個人的には思う。
ただ、ポストクレジットのシーンは解釈の分かれ目かもしれない。どちらとも取れるが、信じたい方でいいんじゃないかな。
特に、DCのファンに皆様にはぜひ見て欲しい1本です👍
平凡な人間の心を蝕む悪はあまりに複雑でどこか寂しい。
喜劇の王
前半はやや冗長な滑り出し。
JOKERの全面の見出しがインパクトあり、刺さる。
クレイジーな母親、クラウンとしての仕事、それぞれアーサーをじっくり描いていた所が若干たいくつに私は感じる。
後半それぞれの因縁を殺した後、怒涛の流れで面白かった。TVショーに出ている間も殺人を繰り返し、暴動と相まってまさにピエロに。
🤡 中国の情勢にも似てて、社会風刺ではあったと思うが、過激。
怪演。
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