「甘美なる映画」ジョーカー green128a001さんの映画レビュー(感想・評価)
甘美なる映画
画が地味だとか、犯罪を助長するだとか賛否両論ありますが自分は美しさすら感じた。
この映画には現実に起きている問題が詰め込まれている。
格差社会、親子愛とは何か、介護問題、いじめ問題、仕事が上手くいかないことへの苦悩、貧困、福祉カット、シングルマザー、児童虐待、精神病...
まさに今、世界中でヘイトが溜まっており、香港ではこの映画のように暴動が起きており、覆面禁止法も話題に新しい。
序盤ではアーサーが病気を懸命に治そうとしたり、真面目に仕事に取り組んだり、コメディアンを夢焦がれ、絶望に打ちひしがれながらも上に上にあがろうする心情を階段を上るシーンで表現している。
懸命に生きるものの、全く報われず狂っていき、「ジョーカー」として解き放たれた後は、解放感満載に、楽しそうな顔で晴れやかに階段を下りながらダンスする。
しかしこれは、階段を下ってることから人として堕ちていく様を表現しており、その皮肉さは観てるこちらは何とも言えない感情を揺さぶられてしまう。
自分自身、少年期ずっといじめを受けてたり、病気に苦しんだり、詐欺にもあい、人間関係も仕事もうまくいかず現実問題クビのような状況になり、転々としたり、ニートになったり、貧困に苦しみ、社会や人を恨んだりとジョーカーに非常に感情移入してしまう。
これはどんな人でもちょっと道を間違えると起こりうることで、全く人ごとではない。誰しもが、ジョーカーになり得るのかもしれない。
しかし、決して犯罪を助長するわけではなく、改めて自分の人生を考え直し、日々や環境に感謝しなければいけない、と思い直させてくれるような、逆にポジティブな映画だと思う。
犯罪者になり得る人はこの映画が着火点になるとは限らず、どんな時にどんなタイミングでスイッチが入ってしまうか分からないため、ジョーカーはそういった批判の対象ではないように感じる。
確かに映画としては派手さも無く単調だったり、ある程度観てる中で予想できるありきたりな展開の部分もあった。
でも、ここまで色々なことを考えさせられる映画という時点で、傑作だと思う。