劇場公開日 2019年10月4日

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「狂気の街ゴッサム」ジョーカー kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0狂気の街ゴッサム

2019年10月17日
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鑑賞方法:映画館

映画が終わって席を立つ人達の間には、なんだか重い空気が漂っていたような気がした。

歴代ジョーカーを演じた役者たちはそれぞれに見事な怪演を見せたが、ホアキン・フェニックスこそ異常者を演じるのに違和感がない役者だと思う。
それは、以前からホアキンに対して抱いていた個人的な印象。
果たして、殺人鬼ジョーカーの出自となる自閉的なコメディアンという矛盾の男アーサーを、ホアキンは贅肉を削ぎ落とした肉体で鬼気迫るまでに圧倒的な説得力で演じている。

そして、精神に病を抱える弱者アーサーを追い込んでいく状況設定が、非情極まりない。
監督兼共同脚本のトッド・フィリップスという人、酔っぱらいコメディ映画しか知らなかったが、なかなかに侮れない。
ゴッサム・シティは、同じDCユニバースのメトロポリスとは対照的な、荒んだ都会の暗部の象徴。
メトロポリスは外側から悪が襲ってくるが、ゴッサム・シティは内側で悪を産み出す。
このイメージは「バットマン」コミックスの初期にはそれほど強烈ではなく、ティム・バートンの映画とフランク・ミラーのコミックによって1980年代後半に定着したものだと思う。
そして、本作でアーサーに襲いかかる災難の元凶はこの荒んだ都会の病巣だけではなく、母親の秘密にもあったという残酷な設定が、カタルシスとは縁遠い重苦しい後味を残させたと思う。

コミックのスーパーヒーローを暗いシリアスな映画にする流行は、実はあまり戴けないと思っている。
そこに持ってきて、悪役をフィーチャーしてここまで悲惨な映画を作る必要があるのだろうか、とも思う。
(もっとも、フランク・ミラーやアラン・ムーアが先にコミックにそういう空気を吹き込んだのだが)
しかし、これがコミックのキャラクターだからこそ、現実の世界に存在する狂気の沙汰が人間に作用する危険性を訴える物語を率直に受け止められる。
理不尽な暴力行為や、虐待とネグレクトなど、日常茶飯事のように報道されているではないか。
殺人鬼ジョーカーは誇張の世界だとしても、被害を受けた人の中に何が残って、それが人間形成にどのように影響していくのかを想像すると、戦慄を覚える。

本作の唯一の良心はザジー・ビーツが演じた隣人のシングルマザーだが、彼女の安否が心配だ…😟

kazz
活動写真愛好家さんのコメント
2023年7月23日

kazzさん、共感&コメントありがとうございます。
kazzさんのおっしゃる通り、あんな事件を起こすこと自体、この「ジョーカー」という作品を汚す事であり、しいては映画全体への冒涜だと思います‼️

活動写真愛好家
アキ爺さんのコメント
2021年1月24日

「メトロポリスは外側から悪が襲ってくるが、ゴッサム・シティは内側で悪を産み出す。」おお!言われてみれば確かにそうですね。何だか目から鱗でした。

アメコミ映画ではグラフィックノベルと言われてた時代の作品が元となって映画が作られるのもここ10年ぐらいの話ですし、今後ますます多種多様化していくのが楽しみです。

アキ爺