「資本主義へのアンチテーゼ」ジョーカー takaさんの映画レビュー(感想・評価)
資本主義へのアンチテーゼ
舞台となるゴッサムシティでは労働者のストが起こり
ゴミ収集もままならず、鼠が街を徘徊するようになっている。
主人公アーサーはコメディアンを目指すも
経済難の波は彼の元にも歩み寄っていた。
先天性の病により突如笑い出すという奇妙な神経病を持っており、
周囲から気味悪がられ、程なくして職を失ってしまう。
行政にも予算が行き渡らず、街は混沌と転落の道を
猛スピードで走り抜けようとする最中
アーサーの出生が徐々に判明していく。
引き合いに出される映画に「キングオブコメディ」
「タクシードライバー」などが挙げられているも、
コメディ番組の司会者にデ・ニーロが出ていることからも
その影響は決してないとは言えないだろう。
またアーサーは今の世で言う負け組であり、
先進国であればあるほど、貧富の格差は生まれ
今の世においても富裕層と政治への反発は確実に生まれている。
そういった資本主義社会への批判的メッセージも
この映画においては語られているとも言える。
この映画の一つに象徴となるシーンに家に向かう長い階段がある。
普段の彼は長い階段を生気なくトボトボ登るのに対し、
彼が最も生気を得た状態においてその階段を心地よく降りていく。
彼は上昇ではなく下降することで生気を得たのである。
アーサーは人の持つ承認欲求を親からも誰からも貰うことが出来ず
育ってきたが、唯一彼自身がもっとも輝き認めてもらえる部分が
堕ちた世界であったとは何とも皮肉である。
近年、アメコミ映画がマーベルを筆頭にたくさん排出されているが
こういった社会性のテーマをきっちり収めて娯楽作以上の
作品として世に出すところにハリウッドの底力を感じる。
(こういう部分を邦画のコミック原作映画は模倣すべきだと思う。)