劇場公開日 2019年10月4日

「純心」ジョーカー Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5純心

2019年10月11日
iPhoneアプリから投稿

痩せこけた背中。ホアキンフェニックスの圧倒的な演技がストーリーを引っ張っていく。ひとつひとつ安全装置を解除されていくようなスリルあるシナリオ。剥ぎ取られ、ジョーカーへと変貌する。
しかし、ジョーカーの行動原理を理解するには至らなかったというのが率直な感想。心象に寄り添うような描写であるが、客観的に見てしまう。微細な仕草や発言に傷つくのではなく、明らかに虐げられる。こちらが共感するには、事象が振りきれていたからかもしれない。
描き方として特徴的だったのは、アウトローが現れない点である。社会から虐げられた結果、法外の受け皿としてアウトローに保護と連帯を求めるのが定石かと思う。彼の心から芽生えた悪と、それに惹きつけられる群衆の流れは、ジョーカーの純粋さを引き立てるものであった。他方、踊らされる群衆の姿は、アウトローな連帯すら持ちえない現在社会の断絶を象徴しているように思えた。

Kj