「絶対的な狂喜への変貌を悲しくも魅せる人間ドラマです。」ジョーカー マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
絶対的な狂喜への変貌を悲しくも魅せる人間ドラマです。
今年の秋の大本命でアカデミー賞確実と言われる作品ですが、DCコミックス系の作品は肩すかしされた事も多く、個人的にも合わないなぁと思える事も多いので腰が重かったのですが、先日リニューアルオープンしました丸の内ピカデリーのドルビーシネマのオープニング作品とあって、丸の内ピカデリーで観賞しました。
で、感想はと言うと、いや~凄い!凄いわw
ジョーカーとしての誕生を描いていますが、ブレる事なく、2時間と言う時間に圧倒的な熱量と有無を言わさぬ情念を重く静かに観る側に叩き込んできます。
稀代の悪役キャラでバットマン最大のライバル。
本来ならバットマンのスピンオフに位置するのですが、この作品はスピンオフが完全に独立と言うか本家を食ってます。
なので、バットマンのスピンオフと言うよりもバットマンがジョーカーのスピンオフの様な変な逆転現象を感じます。
ストーリーは完全オリジナルで今までのジョーカーになる過程とは別物なので、以前のイメージに引っ張られると違和感を覚えるかなと思いましたが、違和感を覚える隙間を与えないぐらいにこれでもかと叩き込んでくる。
それも迫力や力技と言うのではなく、じわりじわりと狂気に導き、ジョーカーとしてなる辺りから狂喜に変わるのが圧巻的。
アーサー・フレックは病気を抱え、コメディアンとして大成する事を夢見る母親思いの心優しき青年。
仕事先の解雇をきっかけに様々な苦難がアーサーの行く先々にのし掛かる。
それは思いがけない物ばかりでいろんな物が信じられなくなり、いろんな物に裏切られ、次第にジョーカーとして変貌していくのが上手い。
本筋がブレる事もなく、ジョーカーへの変貌を描きつつも、小さな起伏と言うか、取っ掛かりとなる傷的なのが至るところに散りばめられていて、それが上手く昇華していく。
なので、ジョーカーとしての変貌していく事に待望感を寄せつつも、混沌の中のカリスマの誕生に喜んでしまう。
完全にゴッサムシティの住人の気持ちが分かりますw
観ていて、何処までが現実で何処までが空想かが分かり難いかったりしますが仮に現実であったとしても空想であったとしても、その過程を経た結末は悲しい。アーサーの思いや切なさ、悲しみは観る側にキリキリとナイフを突き立ててきます。
ジョーカーと言うと、ジャック・ニコルソンのイメージが個人的に大きいですが、観賞後はジョーカー = ホアキン・フェニックスのイメージに塗り替えられました。
とにかくホアキン・フェニックスが凄い。
今までジョーカーのイメージとはかなり違い、ジャック・ニコルソンやジャレッド・レトとは程遠く、どちらかと言うとヒース・レジャーのジョーカーに近いですが、完全に新しい解釈でのジョーカーを作り上げました。
役への作り込みも鬼気迫るものがあります。
ジャック・ニコルソンのジョーカーとは別物のアプローチではありますが、ジャック・ニコルソンが主演の「シャイニング」のジャック・トランスに通じる狂気を感じる。全身でアーサーの悲哀を演じてます。
アーサーが憧れるマレー・フランクリン役のロバート・デ・ニーロも当たり前ですが流石に良いです。
良い感じでアーサーの変貌を手助けしてますw
また、明暗の色彩も見事で、いろんな感情を表現しています。
DCコミックス系の作品はマーベル作品に比べると明暗の暗の部分が多すぎて、必要以上に暗さを描き過ぎで見辛い感じがしましたが、今作のジョーカーではバッチリハマってます♪
その辺りを凄く感じたのはドルビーシネマで観賞した事も多分にあると思います。
ドルビーシネマの圧倒的な映像表現は凄かったです。上映前のデモ映像で本当に黒色を見せられた時にはビックリしました。
なので、ドルビーシネマで観た事で少なくともプラス0.5点は付いてますw
IMAXで初めて観賞した時も凄いと感じましたが、今回のドルビーシネマはそれ以上。場内は黒を基調としていて、色彩がより鮮明。勿論音も良い。
映画を観ると言うよりもアトラクションの様に映画を体感すると言った感じでプラス600円が全然高くないです。
3D作品には殆ど魅力を感じませんが(映画を観る際はメガネを掛けるので、メガネ オン メガネになるからw)、IMAXも今回のドルビーシネマも作品によるかも知れませんが、映像表現に力を入れた大作には絶対良いです。
作品に難点を言うとすれば…少しアカデミー賞とか賞狙いの所が見え隠れして、賞取り作品として意識し過ぎてるかな?と思えなくはないかなと。
世界が狂気を受け入れる体制がある事自体、それはコメディであり、コメディなら民衆を笑わせ導かせるコメディアンとしてアーサーがジョーカーになったのは必然。
でもその必然は悲哀であり悲劇であるけど、圧倒的な悲劇の悪のカリスマに魅了されます。
触れ込みに「絶対に観ないといけない作品」とありますが、絶対に観ないといけないは言い過ぎでも観る価値は絶対にあります。
その際はドルビーシネマかIMAXで観賞を強くお薦めします!